Q&Aコーナー 気になる論点(336) デリバティブに対する保証

‐IFRSの適用における議論‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 IFRS解釈指針委員会は、2023年3月23日に、IFRS第9号「金融商品」を適用する際にデリバティブに対する保証を、金融保証契約として又はデリバティブとして会計処理するかどうかについて、暫定的なアジェンダ決定を公表しています(コメント締切は2023年5月22日)。当該保証を保険契約として会計処理するかどうかという質問がされていないのは、なぜでしょうか。

IFRSにおいて、金融保証契約は、移転されるリスクが重大である場合、IFRS第17号「保険契約」で定義する保険契約に該当するものの、契約発行者はIFRS第9号を適用するとしています。このため、当該保証を保険契約として会計処理することは質問されていないと考えられます。

〈解説〉

要望書の概要(1)‐事実パターンと質問

2023年3月開催のIFRS解釈指針委員会におけるアジェンダペーパー(AP)3「デリバティブに対する保証」によれば、要望書における事実パターンは、以下とされています(5項‐7項)。

(1)企業Cが、企業Aと企業Bとの間のデリバティブ に対して保証を提供している。

(2)当該デリバティブは、いずれかの当事者が債務不履行になった場合...