小説 会計士日記 episode 9

  中岡早雄

( 50頁)

20X1年4月24日 PM 2:00コーヒーを飲みながら仕事再開

コーヒーを飲みながら午後の仕事を始めた。最初は貸付金と借入金の検証作業だ。親会社を頂点とした企業グループ内では親会社が子会社に貸付をしていることが多い。連結財務諸表は親会社だけでなく子会社や持分法適用会社も含めた企業グループを一体として捉えて数字を作るので、親会社と子会社の取引は内部取引として相殺消去される。例えて言うなら、父親が息子に10万円を貸したとしても、家族全体でみれば父親の息子への貸付10万円と息子の父親からの借入10万円は相殺されて貸し借りはないような感じだろうか。つまり連結財務諸表では親会社から子会社への貸付や子会社から子会社への貸付は借手の子会社の借入金と相殺消去され、残るのは外部及び持分法適用会社への貸付と借入のみとなる。

まずは親会社の貸付金のうち子会社に対するものが消去されているかと親会社の貸付金明細まで遡って確認する。決算が始まる前に資料依頼は行っており、親会社の貸付金の明細はクラウド上の共有フォルダに保存してくれていた。共有フォルダにアクセスし貸付金明細をダウンロード、元のファイル名の後ろに“_検証...