会計知識録 第29回 PBR1倍割れは何が問題なのか?~東証によるPBR改善要請の内容と背景~
公認会計士 溝口 聖規
はじめに
東京証券取引所(東証)は、2023年3月31日、プライム及びスタンダード市場に上場する約3,300社を対象として、PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)などの改善計画の策定、開示などを要請しました。これは、企業価値向上に向け、経営者の資本コストや株価に対する意識改革を行うことが目的とされます。東証が公表した資料「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」によれば、現在、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場企業がROE8%未満、PBR1倍割れとなっており、資本収益性や成長性に課題があるとされます。特に問題視されているのが、PBRが1倍を割り込んでいる企業です。
今回は、PBRの意義と、PBR1倍割れが企業経営に与える影響、東証によるPBR改善に向けた取組みの概要などについて解説します。
PBRとは?
(1)PBRの定義
PBR(Price Book‐value Ratio)は株価を1株当たり純資産で割ったもので、株価が割安か割高かを判断する指標の1つです。株価が1株当たり純資産の何倍かを表し、PBRが1倍であれば、株価がその企業の解散価値と等し...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします