監査等委員会設置会社の現状と監査等委員である社外取締役が考えるべきこと

法政大学兼任講師/マネックス・アセットマネジメント株式会社 監査役 田名網 尚

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1.はじめに

監査等委員会設置会社制度は、2014年改正会社法で新たに誕生した機関設計である。改正会社法の施行は2015年5月1日であるので、監査等委員会設置会社制度は誕生後8年が経過したが、2014年改正会社法施行以来、監査等委員会設置会社を選択する会社は年々増加しており、現在、東京証券取引所(以下、「東証」という。)の3市場(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場をいう、以下、「東証3市場」という。)に上場する会社で、監査等委員会設置会社を選択している会社の比率は3市場上場会社の38%に達している。

本稿では、監査等委員会設置会社制度が何故多くの会社で採用されたのか、その理由を検討するとともに、監査等委員会設置会社の現状を分析することで、監査等委員会設置会社制度のコーポレートガバナンス上の課題を明らかにしていきたい。

なお、筆者は、これまで、監査役会設置会社において取締役、常勤監査役を、指名委員会等設置会社において執行役を務めた経験があり、また、現在も監査等委員会設置会社の監査等委員である社外取締役を務めているが、本稿における意見の部分については、筆者の個人的見解であり、筆者が過去...