<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第90回 概念フレームワーク(6)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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所信表明演説

所信表明演説は時の内閣総理大臣が国会で自身の所信を述べる演説で、国会の冒頭や、あるいは内閣総理大臣が指名された際に行われるものである。ただ、内閣総理大臣に限らず、一般の組織においても、責任者が新たな決意を組織の内外の関係者に対して示す行為を所信表明という。そもそも「所信」とは、自分の信じるところという意味であり、組織の責任者が自分の信じるところを関係者と共有することは非常に大事である。

2011年の初頭、初代IASB議長ディビッド・トゥイーディー卿の後を継ぐ2代目の議長にオランダの財務大臣を務めた経験のあるハンス・フーガーホースト氏が内定した。ハンス・フーガーホースト氏の元々の職業は政治家である。IASB議長の職は5年であるが、再任される公算が高いので10年の長い仕事である。また、当時のIFRS会計基準を巡る国際情勢はまだまだ流動的であった。国際資本市場は2009年に起こったリーマンショックによる混乱が収まりきっておらず、米国会計基準とIFRS会計基準を統合していこうという計画について急ブレーキがかかりつつあった。このため、IASBの新議長への就任は、これから先、IFRS会計...