ハーフタイム 金融危機と企業会計の関係

  

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会計は、個人や企業には意思決定のための情報提供手段であり、金融危機の予報手段ではないが、会計ルールが金融危機や不祥事を招きかねない事例が日米で相次いでいる。

まず今年のバークシャー・ハザウェイの株主総会におけるバフェットCEOの発言。「米銀危機の核心は売却目的債券を値下がりしても簿価で表示できる満期保有に変更していた会計処理にある」、「投資家は含み損に気がつかず、銀行株を売って警告する機会を逃した」と報告し、お粗末な情報開示で金融市場を揺るがせた銀行経営者を“クレージー”と批判した(5月20日付け日本経済新聞の梶原誠コメンテーター論説記事)。会計ルールが危機の原因だとこれほど露骨に批判するのは珍しい。だがこれは決して対岸の火事ではない。

日本基準にも保有目的を変更して含み損計上を回避できる選択肢がある。満期保有目的債券だけではなく、業務上の関係を保有する「その他有価証券」もそうだ。後者には時価評価規定もあるが、翌期首には一旦戻した上で期末には洗い替え、取得時の株価が50%以下になれば減損処理が強制される。この洗い替え方式を採用すると、毎期首新たに評価差額がB/Sに計上される。井上良二編『新...