役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<215> 会計限定監査役解任の正当理由(2)

 弁護士 小林公明

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前回( 本誌No.3618参照 )に続き、質問に対する回答として、令和3年最判、監査役の職務、士業監査役及び会社側の対応等につき述べる。

4 令和3年最判

令和3年最判も、以下のように、原審の前記判断を是認することができないとした。

(1)会計監査の意義

まず会計監査の意義につき以下のように述べる。

監査役設置会社(会計限定監査役を置く株式会社を含む。)において,監査役は,計算書類等につき,これに表示された情報と表示すべき情報との合致の程度を確かめるなどして監査を行い,会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等を内容とする監査報告を作成しなければならないとされている(会社法436条1項,会社計算規則121条2項(平成21年法務省令第7号による改正前は149条2項),122条1項2号(同改正前は150条1項2号))。この監査は,取締役等から独立した地位にある監査役に担わせることによって,会社の財産及び損益の状況に関する情報を提供する役割を果たす計算書類等につき(会社法437条,440条,442条参照),上記情報が適正に表示されていることを一定の範囲で担保...