Q&Aコーナー 気になる論点(344) IASBの適用後レビューにおける情報要請(1)

―金融資産の減損―

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は、2023年5月に、情報要請「適用後レビュー:IFRS第9号「金融商品」減損」(コメント期限:2023年9月27日)を公表しました。IFRS第9号では、当初から12ヶ月の予想信用損失を計上しますが、それは減損損失なのでしょうか。

IFRS第9号における予想信用損失の認識に関する一般的なアプローチでは、予想信用損失の当初の予想は、約定金利に反映されているため、本来、利回りの一部(受取利息のマイナス)として期間にわたって配分すべきところ、これに代えて実務上、12ヶ月の予想信用損失を計上し、便宜的に「減損損失」として一纏めにしていると思われます。

〈解説〉

適用後レビュー

「IFRS財団デュー・プロセス・ハンドブック」では、新規のIFRS又は大きな改正があった際に、IASBは、通常、2年間適用された後に、適用後レビューを開始するとし(6.48項)、第1フェーズ(検討すべき事項の識別)では、情報要請の形でIASBの公開協議の対象となるとしています(6.50項) 。現在のIASBの適用後レビューの状況は[図表1]の通りです。

[図表1]現在の適用後レビューの状況

状況対...