会計基準の長い日々 第6回 勇み足、会計基準を踏み越えた!(その1)

~JICPA金融商品実務指針

 公認会計士 西川 郁生

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膨大な実務指針

企業会計審議会が金融商品会計基準を公表したのは1999年1月のことであった。基準の適用時期は2000年4月1日以降である。時価評価についてだけは、1年遅れでの適用となるが、1年前倒しの適用も認められていた。つまり2000年4月に向けてわずかでも周知期間があるように実務指針を世に出さなければならない。1年以内の完成というのは、膨大な作業が予想される中で時間の余裕など全くなかった。

JICPAの委員は全員ボランティアである。多くの人材を投入するために会計制度委員会の下に、金融商品専門委員会を3つに分けて組成することとなった。第1専門委員長に監査法人トーマツの伊藤眞氏 、第2専門委員長に監査法人太田昭和センチュリーの花田重典氏、第3専門委員長に中央青山監査法人の荻原正佳氏が就いた。第1専門委では金融商品の定義、金融資産負債の認識及び消滅、複合金融商品、第2専門委は有価証券の分類、減損、第3専門委ではヘッジ会計を取り扱うという分担となった。

会計基準の公表を以て議論の山を越えたと思う人は会計実務家の間ではほとんどいなかった。それは退職給付のときとは違う意味合いである。個々の論点の重み...