公認会計士試験のバランス調整の概要について

―受験者の能力のより的確な判定に向けた試験運営の枠組みや出題内容等の見直し―

公認会計士・監査審査会 常勤委員 蟹江 章

1.はじめに

金融庁においては、投資による企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる「成長と分配の好循環」を実現していくため、資産運用立国などの取組を進めています。こうした施策を進めるにあたっては、インベストメントチェーンの好循環を支える基盤として、資本市場の規律が十全に機能し、市場の信頼性が確保されることが必要です。そのためには、投資先の企業が開示する財務情報の信頼性を確保する監査業務が適切に機能し続けることが重要であり、監査業務を担う公認会計士の資質や能力の確保は重要な課題となっています。

公認会計士の資質や能力の確保については、公認会計士の選考・育成過程全体で対応していく必要があり、公認会計士試験に合格した後、実務補習や実務経験を経て、公認会計士として登録した後も継続的専門能力開発(CPD:Continuing Professional Development)等において能力開発を行っていくこととなります。公認会計士試験はこうした選考・育成過程のスタート段階の試験として、平成18年に現在の形式の試験になってから約20年が経過しました。その間、公認会計士の登...