株主総会3週間以上前の有報開示の実現に向けて~一体開示と株主総会の後倒しのポイント(前編)~

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 高平 圭

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1.はじめに

近年、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の観点から、様々なコーポレートガバナンス改革が進められている。その中で、重要な企業情報や財務情報が多く記載されている有価証券報告書(以下「有報」という。)が、ほとんどの上場会社において株主総会後に開示されている状況について、一部の機関投資家等から不満の声が聞かれていた。これを受けて、2024年12月に金融庁に「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」(以下「協議会」という。)が設置され、株主総会前の有報開示(以下「総会前開示」という。)が広く実現することを目的とした検討が行われた。また、2025年3月には金融担当大臣から上場会社の代表者宛に「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」①(以下「大臣要請」という。)が発出され、これにより、足元では総会前開示の実務が大きく前進した。しかしながら、総会前開示の取組みの最終目的は、有報を株主総会の数日前に開示することではなく、株主総会の議案を検討するに十分な期間(株主総会の3週間以上前)を確保するタイミングでの開示が行われることにある。本稿では、株主総...