<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第147回 リース(26)
国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継
ここだけの話ですよ
「ここだけの話ですよ」と言われたら、大抵は良くない話である。コンプライアンスの厳しい昨今では、君子たるものこういう話に近寄ってはいけない。
このような話し方は秘密の共有を装うもので「特別にあなたにだけ教える」というニュアンスがあり、他の人は知らないという価値を演出している。さらに「あなたを信頼している」というサインを出して、心理的距離を縮める効果を狙っている。そのことによって聞き手に「自分は特別な立場にある」という優越感を感じさせる効果がある。聞き手は、話し手から秘密を共有されることによって、一種の「共犯意識」を持たされることになる。結果的に聞き手には一定のリスクが転嫁されてしまう。「この話を聞いた以上、あなたももう"内輪の人間"だ」という奇妙な仲間意識を持たされてしまい、ずるずると引きずり込まれてしまう。
「ここだけの話」という前置きが必要な情報は、裏を返せば「公にはできない」情報である可能性が高いもので、聞くだけでリスクのある情報である。ただ実際に「ここだけの話ですよ」と言われたら聞かずにいられるだろうか。話し手は、聞き手の注意と心理的優越感を引き出し、同時に「共犯意...
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