Q&Aコーナー 気になる論点(403) 貸倒引当金の改正案(3)-一般事業会社への適用-

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

 企業会計基準委員会(ASBJ)が2025年10月29日に公表した企業会計基準公開草案第89号(企業会計基準第10号の改正案)「金融商品に関する会計基準(案)」(以下「会計基準」という)及び企業会計基準適用指針公開草案第88号「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いに関する適用指針(案)」(以下「予想信用損失適用指針案」という)では、相対的アプローチ(当初認識以降に信用リスクが著しく増大した場合に全期間の予想信用損失を認識する方法)による貸倒引当金を設定することを提案しています。一般事業会社においても、同様の方法を提案しているのでしょうか。

A 会計基準案では、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という)の範囲に含まれる取引から生じた重要な金融要素を含まない受取手形、売掛金等については、IFRS第9号「金融商品」と同様に、予想信用損失を全期間の予想信用損失に等しい金額により算定することを提案しています。これは「単純化したアプローチ」と呼ばれていますが、重要な金融要素を含まない受取手形、売掛金等の信用リスクは、一定期間にわたる金利収益によってでは...