会計基準の長い日々 第22回 IASB 純利益廃止への執念~辻山栄子委員の出陣
公認会計士 西川 郁生
「純利益の廃止」という暫定合意
IASBが2001年の設立直後に立ち上げた大がかりなプロジェクトに、業績報告プロジェクトがあった。プロジェクト立上げ早々に、業績報告においてのボトムラインとして「包括利益」を表示し、「純利益」 ① の表示を廃止するという暫定合意をリリースした。この暫定合意は、全世界の市場関係者に驚きを以て迎えられた。ASBJからすると信じがたい方向性といえた。暫定合意は、IASBがこれまでにない新しい業績報告を作るという宣言として受け止められた。それにしても、長きに亘って業績報告のボトムラインであり続けた純利益の表示を廃止することの意義がどこにあるのか?
包括利益は、それまでの業績報告(P/Lあるいはそれを拡大したもの)に表示されてこなかった。その一方で、包括利益という名称は広く知られるものとなっていた。米国では、時価会計などによって資産や負債が増減する際に、純利益に含めないもの(評価差額や換算差額の一部)が生じていた。純利益に含まれない項目を、純利益に増減させた結果を包括利益と呼び始めた。決まっていなかったのは、純利益に増減する項目(その他の包括利益)と包括利益の表示場所であ...
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