<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第156回 失われた40年(8)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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我が社は絶対に潰れない

1981年に新人として会社に入社した頃、上司や先輩から「我が社は絶対に潰れない」とよく聞かされた。こちらもそのつもりで入社しているので、そんな話しを聞かされても、そうだろうなとしか思わなかった。ただそれは、当時の大手企業における共通した認識だった。うちの会社は潰れない、それが当たり前だった。

高度経済成長の軌道に乗った日本企業にとって、企業とは本質的に「持続するもの」であった。市場は拡大し続け、需要は供給を上回る。制約は常に不足する側、すなわち、設備や資金、そして人であった。問題はそれらをいかに調達し、いかに前倒しで投入するかに集約されていた。

そしてその時に機能していたのが、メインバンクを中心とした強固な系列システムだった。メインバンクは常に資金を供給してくれる。系列企業はお互いに支え合う。企業は単独で完結する存在ではなく、制度的・関係的な網の中に位置づけられていた。この構造のもとでは、「倒産」は理論上の可能性としては認識されつつも、実務的な意思決定の射程には入っていなかった。

この当時の経営者の関心は、下方リスクの管理というよりも、むしろ上方機会の取り込みであった。...