会計知識録 第44回 のれんよ、何処へ向かうのか?

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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日本における「のれん非償却」をめぐる議論は、この1~2年で急速に活発化し、学術論争を超えて制度改正の検討段階に入っています。2025年の「知的財産推進計画2025」を契機に見直し機運が高まり、現行の日本基準(最長20年の償却)を、国際財務報告基準(IFRS)に近い非償却モデルへ転換する可能性が議論されています。背景には、のれん償却がM&A、とりわけスタートアップ買収の阻害要因になっているとの問題意識があるとされます。実際、規制改革推進会議や経済界からも制度見直しや非償却の選択適用を求める提言が相次いでいます。今後は、M&A促進や国際競争力の観点から議論がさらに進展すると見られます。

本稿では、こうした最近の動向を踏まえ、のれんに関する会計制度の変遷、IFRSとの違いを確認しつつ、我が国ののれんに関する会計制度の在り方を会計実務だけでなく、企業ガバナンスなどの観点から考えてみたいと思います。

1.のれんとは何か

のれんとは、企業買収において取得価額が被買収企業の純資産の公正価値を上回る部分を指します。この差額は、ブランド力、顧客基盤、技術力、組織力など、個別に識別できない無形の価値、すなわち将...