人事部のための国際税務【第2回】何で人事が国際税務?②

はい、パリのお土産。
エッフェル塔のキーホルダー。
あらすてきー!
春木さん一時帰国ですよね。
しばらく日本勤務ですか?
そう言われてるんだけど...
その間の給料から日本の税金が
引かれるかどうかなんて、知ってる?
それはちょっと調べないと...
前にWebセミナーで、「居住者と非居住者の違い」っていう
訳のわからないことを聞いたような気が...

人事部の皆さん、毎日の業務お疲れさまです。このシリーズでは、給与計算を担当する方々向けに、国際税務の一環としての源泉徴収の基礎的な考え方や取扱いをテーマにして、簡潔に説明していきます。今回は、「全体としてこういうことなんだな」というイメージをつかんで頂ければと思います。

1. 給与チームの国際税務、ここは必ず確認して!

その1
給与を支払う社員が「日本に住んでいるかいないか」
その2
日本に住んでいない社員が「日本国内で何日間働いたか」

もし、皆さんの会社で「今は外国に住んでいる社員が、一時的に日本に戻って勤務する場面」が想定できるなら......ここが人事部の国際税務の出番です。例えば、親会社の社員の身分を持ったまま海外子会社に出向している社員が、その途中でしばらく日本に戻って勤務するような場面です。

なぜかというと、日本の税法では、「今日本に住んでいない社員に払った給与のうち、日本で働いた日数に対応する金額は、日本の課税対象になる」からです。それは、次のように課税されます。

日本勤務に対応する給与があるとき...
→ 日本で払うもの:
源泉徴収が必要(これは給与チームの仕事です!)
→ 外国で払うもの:
普通は日本で源泉徴収できないので、社員本人が日本で所得税の確定申告をする(何と厳しい!)

後で触れますが、この日本税法による課税は、租税条約があれば多くの場合に免除になります。国際税務の重要な点です。

2. 重要事項その1: 日本に住んでいるかいないかの判定

ここで専門用語を紹介します。国際税務の最重要単語です。

日本に住んでいる人
居住者
(一般的な源泉徴収や年末調整をする人)
日本に住んでいない人
非居住者
(居住者ではない人)

社員が居住者か非居住者かによって、給与に対する日本の課税がまったく違ってきます。ですから、社員が居住者か非居住者かを明確にすることが重要事項その1です。

もし社員が全員居住者ならば、このシリーズの話はただの知識なのですが、海外駐在員がいれば必ず関係してきます。

<二つの区分をもう少し詳しく>

居住者
「日本に住んでいる」ことを、税法では「国内に住所を有する」といいます。この住所とは、「葉書に書いて出せばそこに届く」という意味ではなく、「その人の生活の本拠地」のことです。
これに加えて、生活の本拠地とまではいえなくとも、国内のホテルや借家などに1年以上継続して滞在している場合も、居住者になります。
非居住者
居住者の裏返しで、「外国に住所を有する」または「外国に1年以上継続して滞在している」場合です。
例えば、会社から1年以上の海外駐在を命じられて、家族全員で外国に住む場合は「国外に住所を有する」ので非居住者。
家族を残して単身赴任する場合でも「国外に1年以上継続して滞在する」ので、これも非居住者です。
このとき、出向辞令や契約などで「国外滞在があらかじめ1年未満であることが明らかな場合」以外は、海外に行ったと同時に非居住者と推定されます。
もともと海外に住所を有する外国人を社員として採用すれば、その人は最初は非居住者ですが、もし1年以上日本に継続して滞在すれば居住者となります。そして、日本滞在があらかじめ1年未満であることが明らかな場合以外は、日本に来た時から居住者と推定されます。

居住者
日本国内に住所を有する、又は1年以上継続して国内に滞在している
非居住者(税法では「居住者以外の個人」)
国外に住所を有する、又は1年以上継続して国外に滞在している

3. 重要事項その2: 非居住者が日本国内で何日勤務したかの確認

どの社員が非居住者であるかがわかったら、次は「非居住者の社員が一時的に日本で働いていないか?」の確認です。

給与収入のある非居住者が国内で勤務したら、その給与の支払いをどの国の会社がしようと、日本で働いた日数に対応する給与が日本で課税されます。

これは、居住者は単純に「世界中で得たすべての種類の収入」が課税になるのに対して、非居住者は「国内源泉所得」と呼ばれる日本で生じた収入だけが課税になるからです。馴染みのない専門用語ですが、これも国際税務の最重要単語です。

国内源泉所得は税法に列挙されていて、その中に「国内で行う勤務に対応する給与」が入っています。したがって、給与の場合の国内源泉所得とは、「その社員に払ったすべての給与のうち、日本で勤務した日数に対応する金額」をいいます。国内源泉所得については、次回にもう少し説明します。

居住者の課税範囲
世界中で稼いだ全ての種類の収入
非居住者の課税範囲
税法に定められている「国内源泉所得」だけ

ここで、日本の親会社から海外子会社へ出向した社員(非居住者とします)のケースを考えてみます。

次の給与は二つとも、国内源泉所得の部分が日本で課税になります。

  • (1) 国外で支払われるもの(海外子会社が現地で支払う給与など)
  • (2) 日本で支払われるもの(親会社が国内で支払う留守宅手当や格差補填金など)

課税方法の原則は、(1)は社員本人による申告納税、(2)は親会社(支払者)による源泉徴収です。

国内源泉所得となる給与の金額は、基本的に日数按分で計算しますので、手間ではありますが、給与担当者は非居住者の社員が日本国内で勤務した日数を把握しておかなければなりません。

短期間の会議のために日本に出張してきたり、休暇で帰国して会社には挨拶に来ただけ、などの場合には、その日数を日本での勤務日数にカウントする必要がない場合もありますが、個別の検討が必要です。

4. 租税条約があれば課税が免除になることが多い! 

ここまでの説明は、あくまでも「日本の税法」に基づいています。もし、その社員が住んでいる外国と日本との間に租税条約があれば、多くの場合、源泉徴収や社員自身の確定申告をしなくて済みます。租税条約が日本の税法による課税を免除するのです。

ということは、給与チームは日本の税法と租税条約の両方を知っていなければいけません。

このありがたい租税条約と日本の税法の関係は、次回以降で整理していきます。


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