改正された租税特別措置法が、その施行前に遡って適用されたことの是非をめぐり争われた訴訟の判決が福岡地裁と東京地裁で相次いで出された。これらの訴訟は、平成16年度税制改正により、土地・建物等の損益通算を廃止した改正措置法が施行された平成16年4月1日より前に行った土地・建物等の売却による譲渡損失について、他の所得との損益通算が認められるべきとして、譲渡損失を認めなかった国税当局の処分の取消しを求めていたもの。
1月29日の福岡地裁判決では、改正が国民に対し周知されている状況ではなかったと指摘し、憲法に規定される租税不遡及の原則に違反しており、改正は違憲無効との判断が示された。これに対し、2月14日の東京地裁は、改正は納税者の納税義務を不利益に変更するものではなく、遡及適用に合理的な必要性が認められ、適用を予測できる可能性がなかったとまでは言えないとして、納税者の請求を棄却する判決を行った。
福岡の事案は既に国側が控訴しており、東京の事案も納税者側の控訴が予想されるが、判決が確定した時の内容によっては、税制改正における遡及適用に影響が及ぶことも考えられるだけに、動向が注目されている。