独立公認会計士インタビュー『わたしの働き方』H&Hホールディングス代表取締役 檜垣慎司氏

わたしの働き方
【編集部より】

監査法人以外の場で活躍する公認会計士の方々に,これまでのキャリアや今の働き方などについて聞く本コーナー。今回は,精神科に特化した訪問看護サービスなどの医療・福祉の分野で起業し,成長を続けるH&Hホールディングスの檜垣慎司氏に話を聞いた。

──公認会計士を目指したきっかけを教えてください。
大学3年生になるときに,自分は将来どのような人生を歩むのかと考え,何か専門的なスキルが欲しいと思いました。周囲に公認会計士を目指す人が多かったことが資格取得を目指すきっかけになりました。

──これまでの経歴について教えてください。
公認会計士の資格を取得した後は監査法人に所属し,国内企業の法定監査をしていました。業務を行っていく中でさらにもうひとつ上を目指したいと考え,いろいろな本を読んでいるとMBAという学位を知り,ロンドンにある大学院に通ってMBAを取得しました。卒業した後は帰国して金融の世界に入り,アナリストやファンドマネージャーといった資産運用の仕事に16年間携わり,投資先の社長からお声がけをいただいたことをきっかけに退職して,精神科の訪問看護に特化した上場企業に常務執行役員(後に専務取締役)として入社しました。いろいろ仕事をしていく中でさらに学ぶ必要を感じて東京大学EMPに入学し,現在は医療・福祉の分野で起業し,経営者をしています。

──「学び」とは好奇心を表すのでしょうか?
私にとって「学び」とは,好奇心よりも「専門性を高めるために学ばなければいけないことがある」という気持ちの方が強いです。今,私は東京福祉大学の通信課程で学んでいますが,まだまだ学ばなければいけないことがたくさんあるように感じます。会社を経営していくうえでも学びが必要だと思う機会は多いですね。また,私の周りには,学びたいと考える向上心のある方々もいて,とても恵まれていると感じています。

──起業を決意されたきっかけは何ですか?
今,私がいる「医療・福祉」という世界は,従業員の責任感に過度に依存する印象があります。一方,従業員もそれぞれの生活があります。例えば,残業してでも目の前の人に尽くしたいという人と,これから子供の迎えのために帰らなければいけないという人が混在するのが現実です。18時までの約束で働いているなら18時に退社できる環境をつくりたいと思いました。会計や金融の世界にいた異色で新しい考え方を持った私が入ることで,少しでも業界を良くできればと思ったことが起業した理由です。今の私の課題は,どうしたら会社を大きくして,従業員の労働条件を改善できるか,ワークライフバランスを向上でき,より多くの人が入社したいと思う会社を作ることができるかですね。

──会計・監査とは異なる業界で起業されて,公認会計士の知識や経験は役立ちましたか?
私は,公認会計士という仕事をしてよかったと思っています。金融の世界でも今の仕事でもそうですが,会計の知識や経験があって今があると思っています。例えば,福祉や医療の現場に,「熱い思い」で入ってこられる方がいます。けれども経営者である以上,働いている従業員に給料を支払わないといけませんから,会計を知らないと会社が回らなくなってしまう。お金の流れを知らないために撤退を余儀なくされる方もいます。そう意味でいうと,会計というのは,どんな事業においても基本的な素養と言え,持っていなければいけないものだと思います。お金の流れや,利益が出るのか,出ないのかといった,基本的な知識があるからこそ,今の私に経営ができているのだと思います。監査法人という,会計実務の世界を離れてからずいぶん経ちますが,会計のお世話にならなかったことはありません。

──監査以外の場で活躍を考える公認会計士の方々へアドバイスをお願いします。
転職の相談をよく受けますが,最初の答えは「転職はやめた方がいい」です。もちろん,その人の転職を考える理由や立場などによります。監査という業務独占を行う公認会計士が,法定監査ではない仕事をする場合,その分野で既に専門に仕事をしてきた方と競争をしなければいけないということになります。だから,「普通の人」では負けてしまう。一番大事なのは,どんな産業に属して,どういうことをしたいのか,ということがしっかりしていることではないかと思います。

──お仕事をされるうえで大切にしていることは何ですか?
ご縁を大事にすることでしょうか。私自身,投資先からお声がけをいただいたことがきっかけで,紆余曲折あって起業して経営者になりましたし,今まで,いろいろな方と巡り会って仕事をさせていただいていますので,謙虚に,ご縁を大切にすることではないかと考えます。

──若手の公認会計士の方々にメッセージをお願いいたします。
会社経営をしている今,「売上」が計上されるために,人の想いや情熱,努力を含めた様々なプロセスを経ていること痛感しています。この「売上」は,最終的には数字になり,ルールに則って計上されるものですが,このためには,汗をかいて働いている人がいるのだということは忘れてはならないと思います。目に見える数字だけでなく,視野の広い,世の中に求められ続ける会計プロフェッショナルになっていただきたいですね。


略歴:
檜垣 慎司(ひがき しんじ)氏

公認会計士。1969年生まれ,愛媛県今治市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後,London BusinessSchoolでMBAを取得。帰国後は,約16年にわたって外資系金融機関にてアナリストやファンドマネージャーを務める。現在は,精神科に特化した訪問看護ステーションデライトを運営する(株)H&Hホールディングスおよび障害者雇用のサテライトオフィスを運営する(株)H&G代表取締役。

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