1円未満消費税に対する計算特例の根拠はすでに廃止されている!?

 本年10月からの消費税率引き上げについては、いまだに若干の不透明感はあるものの多くの事業者は引き上げを前提とした対応に追われています。ところで、スーパーやコンビニのレジ段階で発生した消費税額については1円未満の端数が切り捨てられていることはよく知られていますが、その根拠となるべき法令そのものはこの世界には既に存在しないことまではあまり知られていないようです。今回はそのあたりの謎を探ってみます。

そもそもの特例名称は「課税標準額に対する消費税額の計算の特例」

 消費税は売り上げに係る税額から仕入れに係る税額を差し引いた分を納税することとされています。従って、スーパーやコンビニなど数多くの売り上げ回数がある場所では、たとえ1円未満とはいえ一度の売り上げごとに端数分を切り捨てたものを売り上げに係る消費税として認めてしまうと、日本中1年間に切捨てられてしまう税額は相当な額になってしまいます。

 にもかかわらずこうした端数切捨ての特例が認められたのは、取りも直さず事業者の納税事務負担に考慮したためです。端数処理の特例自体は、今となっては遠くなってしまった平成元年の消費税導入時に設けられた、歴史のある特例なのです。

特例の正式名称は「課税標準額に対する消費税額の計算の特例」とされ、制定時の消費税法施行規則第22条第1項に規定が置かれていました。

平成16年に廃止されてしまったが経過措置として「当分の間」適用とされ令和に至る

 しかし、この特例は平成16年に消費税の総額表示制度が義務化される際に廃止されてしまいました。その理由は、当初主流だった税抜き表示では端数の発生が避けられないが、総額表示であればその問題はなくなるということだったようです。

 とはいえ総額表示制度は、モノの価格が高く表示される等の理由で小売業などではなかなか浸透しませんでした。

 こうした事情があったため、端数処理の特例である消費税法施行規則第22条第1項は消費税法そのものからは廃止・削除されてしまったものの、改正法の経過措置という形で「当分の間」は引き続き適用できることとなり、現在に至っているのです(最終段の「参考」に示すように、最終消費者向けの特例適用期間については8年ほどの間がありますのでこの点ご留意ください)。

当分の間とはいつまでか?

 今回の消費税率引き上げでは、将来的にいわゆるインボイス制度が導入されることも決まっています。インボイス制度では、そこに記された消費税額がそのまま仕入控除税額となりますので、端数処理の問題はなお重要なものとなってきます。

 ところが、今まで紹介してきたように、端数処理の特例適用期間は、依然として「当分の間」となっているままです。

 専門家の間ではインボイス導入後も端数処理の特例は今のまま継続するとの見方があるようですが、その一方では、再び総額表示制度が全面的に採用されれば「当分」が終わる可能性もなしとはしません。

 「当分」とはいつまでなのでしょうか...?

(参考)経過措置適用一覧表

「税抜価格」を前提とした代金決済

「税込価格」を前提とした代金決済

事業者間取引等

経過措置1(当分の間)

経過措置2(当分の間)

対消費者取引(総額表示義務対象取引)

経過措置3(平成26年4月1日から当分の間)

経過措置2(当分の間)