貸倒損失など不良債権処理に苦手意識がある方必見!<読んでみました!税理士の読書感想文>

そろそろ令和元年も終わりを迎えようとしていますが、今年も日本は災害に見舞われた年となりました。被災してしまった取引先から売掛金の回収は無理そうだけれど、税務上の処理はどうなるんだろう......?

『ケーススタディでみる 貸倒損失の税務』

鈴木博 著
¥ 3,520(税込)

不良債権にお悩みの方は必見です。

不良債権を処理する場合、できる限り損金で落としたい。でも、難しくて貸倒損失に対して苦手意識のある方は多いのではないでしょうか。もれなく私もそのうちの一人でしたが、こちらの本はそんな私にも優しい本でした。

貸倒損失を考える時の基準は法人税基本通達の9-6-1~9-6-3ですが、通達番号を言われてすぐに思い出せなくても、巻末に参考資料として関係法令が収録されているので自分でいちいち調べる必要がありません。第1部Ⅰでこれら3つの通達の解説があり、さらに通達には触れられていない破産手続における貸倒処理についても解説がありますのでありがたいです。

法律上の貸倒れではないものを帳簿上の貸倒れにしたい場合、取引先の「債務者の資産状況、支払能力等(法基通9-6-2)」を知ることは資本関係などがない限りほとんど不可能でしょうから、私としては今まで、通達はなんでこんな無理なことを要求しているのかと疑問だったのですが、著者は平成16年12月24日最高裁判決に対する私見という形で通達が無理難題を突き付けざるを得ない理由を述べていて、なるほど、と思った次第です。

不良債権を貸倒損失として処理ができなくとも貸倒引当金を計上することが考えられますが、第1部Ⅱでは、税務上の貸倒引当金が、平成23年の税制改正により適用可能な法人が限定されていることをはじめとする現行制度や貸倒引当金を計上するにあたっての注意点を改めて確認できます。

回収可能性が残されている段階での債権放棄は寄附金課税の対象となるものの、第1部Ⅲでは業績不振の子会社等の債権放棄等や、冒頭でも述べた取引先の災害復旧の支援を目的とする売掛金の免除などの場合は、別の取扱いが用意されていることの説明があります。最近の異常気象のせいで、今現在、このような事案を抱えている会社もあるのではないでしょうか。回収可能性が残されている金銭債権を債権放棄する前に、必ず読んでおきたい部分となっています。

第2部はお待ちかねのケーススタディであり、100件近くのケースを取り上げ解説されていますので、おそらく今お悩みの案件に類似したケースが見つかると思われます。法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れはもとより、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金、子会社がらみにも多くのページが割かれていて参考になりますし、備忘価額残高をどう処理すべきか、という大勢に影響はないものの誰もが一度は気になったことがあると思われるケースもあります。ゴルフ会員権の預託金の一部返還に伴う処理は一見簡単そうですが、思わぬ落とし穴でビックリしました。

貸倒れに苦手意識のある方、不良債権でお悩みの方にお勧めの一冊です。ぜひ読んでみてください!


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税理士 高山 弥生

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