福岡高裁 譲渡損失の損益通算廃止の適用巡る争いで初の高裁判決~不利益遡及でも合理性等あれば違憲無効とはいえず

 平成16年度税制改正による土地建物等の譲渡損失の損益通算廃止を巡っては、これまでにあった地裁判決の3件のうち、福岡地方裁判所だけが、本件納税者に適用される限りとして、原告納税者の主張を認める判決を行っていたところだが、福岡高等裁判所(第5民事部 山口幸雄裁判長)は10月21日、その原判決を取り消し納税者の請求を棄却する判決を行った(20年(行コ)5号)。

 同高裁では、租税法規不遡及の原則で問題とされる遡及適用は、すでに成立した納税義務の内容を不利益に変更するものには限られないとして、一部国側の主張を採用しなかったが、不利益の遡及適用に合理性があって憲法84条の趣旨に反しないかどうかは、(1)遡及の程度、(2)遡及適用の必要性、(3)予測可能性の有無と程度、(4)実体的不利益の程度、(5)代償的措置の有無・内容等を総合的に勘案すべきものとしたうえで、(4)については、譲渡損失は多額になることもあって、損益通算等を認めないことによる経済的損失は少なくないと指摘したものの、それ以外の点からは、ほぼ国側の行ってきた主張を認める判断となった。

 納税者は上告等しなかったため、判決は確定した。