税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

退職所得の課税の特例

 退職所得についての個人住民税は、他の所得と区分して退職者の退職した年の1月1日現在における住所地の道府県及び市町村が所得割(以下「分離課税に係る所得割」という。)を課することとしている(法50の2328)。

 この現年分離課税が行われる退職所得は、所得税法第199条の規定により退職所得について所得税の源泉徴収が行われるものに限られる(法50の2328)。

課税標準

 分離課税に係る所得割の課税標準は、所得税法第30条第2項に規定する退職所得の金額の計算の例により算定されるその年中の退職所得の金額である(法50の3328の2)。

 〔退職手当等の収入金額-退職所得控除額〕×(1/2)=退職所得の金額

税率

 分離課税に係る所得割の税率は、現行の所得割の標準税率を一定税率として適用する。したがって、地方団体の特殊事情によって超過税率を適用することはできない(法50の4328の3)。

徴収方法

 退職所得に係る所得割の徴収方法は、特別徴収によることとされており、所得税の退職所得に係る源泉徴収と同様の方法によって行われる。

 この場合に退職手当等の支払者を特別徴収義務者として指定し、その特別徴収義務者は退職手当等の支払の際、分離課税に係る所得割を計算してこれを徴収し、翌月10日までに納入申告書を提出するとともに納入金を関係市町村に納入する(法50の5328の4328の5)。

特別徴収税額

  • (1) 退職所得申告書を提出している場合
    • ① 退職手当等を1か所から受給している場合
       {退職手当等の収入金額-退職所得控除額}×(1/2)×税率= 特別徴収税額
    • ② その年中に他の退職手当を受給している場合
       {退職手当等の収入金額+他の退職所得手当等の収入金額-退職所得控除額}×(1/2)×税率-他の退職手当に係る税額=特別徴収税額(法50の6①、328の6①)
  • (2) 退職所得申告書を提出していない場合
      前記(1)の①と同じである(法50の6②、328の6②)。
      ただし、不足額があるときは普通徴収となる(法50の8328の13)。

備考

個人住民税は前年所得課税が建前であるが退職所得については、その翌年の収入が通常激減するため納税しにくくなること等を考慮して、退職手当等の支払の際に徴収することとしたものである。

退職所得控除額は、

  • ① 勤続年数が20年以下のとき…40万円×勤続年数
  • ② 20年超のとき…800万円+70万円×(勤続年数―20年)

 上の算式で計算した金額が80万円未満のときは80万円となる。

 また、障害者になったことに直接基因して退職した場合は、上の算式で計算した金額に100万円を加算する(所得税法30③⑤)。

(注) 令和4年1月1日以後においては、勤続年数5年以下の一定の退職手当等については、その退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分について、2分の1とする措置は適用されない。

退職手当等の支払を受ける者は、その支払を受ける時までに、退職所得申告書を特別徴収義務者を経由して住所所在地の市町村長に提出しなければならない(特別徴収義務者が受理すれば市町村長に提出があったものとみなされる。)。

給与の支払を受ける者が常時10人未満の事務所、事業所等の場合は、市町村長の承認を受けて、6月から11月及び12月から翌年5月までの各期間に徴収した分離課税に係る所得割を12月10日及び翌年6月10日までに申告納入することができる(法328の5③)。

「退職所得申告書」とは他からの支払済の退職手当等の有無、勤続年数等の事項を記載した申告書をいう(法50の7328の7)。

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