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損益通算の結果残った赤字、すなわち純損失の金額は、青色申告をしている年分の純損失に限り、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けることができる(法70①)。
また、青色申告をしていない年分の純損失の金額であっても、そのうちの変動所得の金額の計算上の損失及び被災事業用資産の損失の金額は、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けることができる(法70②)。
さらに、青色申告をしている年分のものであるかどうかにかかわらず、その年の所得から控除できなかった雑損失の金額は、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けることができる(法71)。
したがって、その年の総所得金額、山林所得金額又は退職所得金額を計算する場合には、前年以前3年内に生じた純損失の金額又は雑損失の金額のうち、前年以前に繰越控除を受けなかった金額を差し引いて計算する。
項目 | 損失の内容 | 繰越控除を受けるための手続 | ||
損失の区分 | ||||
純損失 | 普通所得の損失 | 被災事業用資産の損失以外の損失 | 普通所得の損失のうち、被災事業用資産の損失以外の損失の金額(青色申告をしている年分のものに限る。) | 純損失の生じた年に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していること。 |
被災事業用資産の損失 | 普通所得の損失のうち、事業用資産が震災、風水害、火災などの災害で被害を受けたことによる損失の金額(保険金などで補填された金額を除く。) | 純損失又は雑損失の生じた年にその損失の金額に関する事項を記載した確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していること。 | ||
変動所得の損失 | 漁獲若しくはのりの採取若しくははまち等の養殖による所得、原稿若しくは作曲の報酬又は著作権の使用料による所得の計算上の損失の金額 | |||
雑損失 | その年の所得から雑損控除できなかった雑損失の金額 |
備考
確定申告書を提出している居住者の前年以前3年内に生じた純損失(青色申告をしている年分の純損失に限る。)の繰越控除は、左記のように繰越控除の対象となるが、純損失を生じた年に純損失の繰戻しによる還付を受けているときは、繰り戻した損失の金額を除いたところによる(法70①)。
各年分の不動産所得の損失の金額のうち、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額についてはなかったものとされるので、繰越控除の対象とされる純損失の金額とはならない(措法41の4)。
各年分の土地建物等に係る長期譲渡所得の損失の金額及び短期譲渡所得の損失の金額は、繰越控除の対象とされる純損失の金額とはならない(措法31①③、32①④)。
一般株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の損失の金額は、一定の上場株式等の場合を除き、繰越控除の対象とされる純損失の金額とはならない(措法37の10①⑥、37の11①⑥)。
先物取引に係る雑所得等の損失の金額は、繰越控除の対象とされる純損失の金額とはならない(措法41の14①②)。
被災事業用資産の損失
被災事業用資産の損失とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、消耗品などの棚卸資産、事業用の土地、減価償却資産(建物、機械、牛、馬、果樹等)などの固定資産、繰延資産及び山林が、震災、風水害、冷害、雪害、干害その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による災害、害虫その他の生物による異常な災害によって損害を受けた場合の損失をいう。
なお、これらの資産についての損失額であっても、その損失額が変動所得計算上の損失となるものは、被災事業用資産の損失とならないで変動所得の損失となる(法70②③、令202、203)。