税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

給与所得の年末調整の仕方

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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 以上の方法により毎月の源泉徴収事務を続け、その年最後に給与等の支払をする際、その年中の給与所得(通常の給与等、賞与)について源泉徴収をした所得税の精算を行うことになる。

 この年末調整は「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している者について、主たる給与の支払者が行う。

 ただし、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円を超える者については年末調整をしない(法190)。

備考

平成25年から令和19年までの間、所得税の年末調整と併せて、復興特別所得税についても年末調整を行わなければならない(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法30、詳細は「復興特別所得税」の項(310頁)を参照)。

1 準備

  • (1) 配偶者控除又は配偶者特別控除を受けようとする場合は「配偶者控除申告書」を、基礎控除を受けようとする場合は「基礎控除申告書」を、また「扶養控除等(異動)申告書」の記載事項に異動がある場合は「扶養控除等(異動)申告書」を提出する。
  • (2) 生命保険契約や地震保険料控除の対象となる保険契約等に加入している者は、「給与所得者の保険料控除申告書」を提出する。
  • (3) 2年目以降の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除を受けようとする者は、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書」を提出する(措法41の2の2①)。なお、この申告書は、その者のその年の合計所得金額の見積額が3,000万円を超えるときは提出することができない(措法41の2の2②)。
      (1)~(3)の申告書の提出の際に経由すべき給与等の支払者が電磁的方法によるこれらの申告書に記載すべき事項の提供を適正に受けることができる措置を講じていること等の要件を満たす場合には、これらの申告書の提出に代えて、これらの申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる(法198②、措法41の2の2④)。
  • (4) 調整控除を受けようとする場合は「所得金額調整控除申告書」を提出する(措法41の3の4①)。
      また、この申告書の提出の際に経由すべき給与等の支払者が電磁的方法によるこの申告書に記載すべき事項の提供を適正に受けることができる措置を講じていること等の要件を満たす場合には、この申告書の提出に代えて、この申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる(措法41の3の4④)。
  • (5) 1人別徴収簿によりその年中の給与等の収入金額と徴収税額を集計する。

備考

異動申告書は、異動があったつど提出することとされている(法194②、195②③)。

その年中に払い込んだ旧生命保険料(1口9千円を超えるもの)、社会保険料のうち、国民年金保険料及び国民年金基金の掛金、小規模企業共済等掛金、新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料、旧個人年金保険料及び地震保険料については、証明書又は電磁的記録印刷書面の添付又は提示を要する(証明書は、生命保険会社等が発行する。)(法196②、令319)。

左記の要件を満たす給与等の支払者に対し、「給与所得者の扶養控除等申告書」等に記載すべき事項を電磁的方法により提出する場合には、新生命保険料、旧生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料、旧個人年金保険料又は地震保険料の支払を証する書類の提出又は提示に代えて、電磁的方法により提供することができる(法198②⑤)。

各種学校の生徒で勤労学生に該当する者は、その該当することの証明書を提出し又は提示することを要する(法194③)。

給与所得者の扶養控除等申告書に国外居住親族に関する事項を記載した居住者は、国外居住親族がその居住者と生計を一にする事実(注)等を記載した当該申告書を提出し、国外居住親族がその居住者と生計を一にすることを明らかにする書類(注)を各人別に添付し、又は提示することを要する(法194⑤⑥、令316の2③)。

(注) 令和5年1月1日以後において、その国外居住親族がその年に38万円以上の送金等を受けている者に該当するものとして扶養控除の額に相当する金額の控除を受けようとする場合には、その国外居住親族がその年に38万円以上の送金等を受けている者に該当する事実及び該当することを明らかにする書類

(2)の合計所得金額とは、純損失及び雑損失の繰越控除を適用しないで計算したその年の総所得金額、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得の金額、土地等に係る事業所得等の金額、長期譲渡所得の金額、短期譲渡所得の金額、一般株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいう(措法41①、法2①三十、措法8の4③一、28の4⑤一、31③一、32④、37の10⑥一、37の11⑥、41の14②一)。

2 年税額の計算

その年中の給与等の収入金額

給与所得控除後の給与等の金額の表を適用

給与所得控除後の給与等の金額

社会保険料控除

小規模企業共済等掛金控除

生命保険料控除

地震保険料控除

障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除

配偶者控除、配偶者特別控除

扶養控除

住宅借入金等を有する場合の特別控除

年税額

毎月徴収してきた税額を控除

+徴収

-還付充当

 年税額は次により求める。

(一) 1人別徴収簿を集計して、その年中に支払った給与等の収入金額の合計額から、次の給与所得控除を行う(法28③)。

  • ① 給与等の収入金額が180万円以下の場合
      給与等の収入金額×40%-10万円(この残額が55万円に満たない場合には、55万円)
  • ② 給与等の収入金額が180万円を超え360万円以下の場合
      62万円+(給与等の収入金額-180万円)×30%
  • ③ 給与等の収入金額が360万円を超え660万円以下の場合
      116万円+(給与等の収入金額-360万円)×20%
  • ④ 給与等の収入金額が660万円を超え850万円以下の場合
      176万円+(給与等の収入金額-660万円)×10%
  • ⑤ 給与等の収入金額が850万円を超える場合
      一律195万円

(二) (一)で求めた「給与所得控除後の給与等の金額」から、次の金額を控除する。

  • ① 社会保険料控除……「保険料控除申告書」に記載された金額及び給与等から控除された社会保険料の金額
  • ② 小規模企業共済等掛金控除……「保険料控除申告書」に記載された金額
  • ③ 生命保険料控除……「保険料控除申告書」に記載された金額
  • ④ 地震保険料控除……「保険料控除申告書」に記載された金額

備考

③と④については、それぞれ限度額が設けられている(「所得控除」の項(174176頁)参照)。

(三) (二)の金額から、「給与所得者の扶養控除等申告書」の記載に従って次の金額を控除する(法798486)。

  • ① 障害者控除……1人につき27万円(特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)
  • ② 寡婦、勤労学生控除……それぞれ27万円
  • ③ ひとり親控除……35万円
  • ④ 配偶者控除……最大38万円(老人控除対象配偶者に該当する者は最大48万円)
  • ⑤ 配偶者特別控除……最大38万円
  • ⑥ 扶養控除……控除対象扶養親族1人につき38万円特定扶養親族に該当する者は63万円、老人扶養親族に該当する者は48万円。ただし、同居老人扶養親族は58万円
      2人以上の納税者の扶養親族に該当する者がある場合は、これらの納税者のいずれか1人の納税者の扶養親族とみなされる。
  • ⑦ 基礎控除(合計所得金額が2,500万円以下である居住者に限る。)……最大48万円

備考

①の同居特別障害者とは、年末調整を受ける居住者の控除対象配偶者又は扶養親族で、特別障害者に該当し、かつ、その居住者又は配偶者等のいずれかとの同居を常況としている者をいう(法79③)。

②③の寡婦、勤労学生、ひとり親の場合の控除は、給与所得者自身がこれらに該当するときにのみ認められる。

④の配偶者控除については、居住者の合計所得金額に応じた控除額が定められている(「所得控除」の項(181頁)参照)。

⑤の配偶者特別控除については、配偶者に所得がある場合、一定の金額を減額することとされている(「所得控除」の項参照)。

⑤の配偶者特別控除については居住者の合計所得金額及び配偶者の合計所得金額に応じた控除額が定められている(「所得控除」の項参照)。

⑥の同居老人扶養親族とは、年末調整を受ける居住者又はその配偶者の直系尊属で、両者のいずれかとの同居を常況としている老人扶養親族をいう(措法41の16①)。

納付方法は、平常月と同様である。

3 過不足額の精算

 以上により求めた年税額から、すでに毎月徴収してきた税額の合計額を控除する。その結果、

  • ① 年税額が毎月徴収した額より多い場合は、その年最後に支払う給与から徴収(法192)し、
  • ② 逆に毎月徴収した額の方が多い場合は、その差額(未徴収税額があるときは、これを差し引いた額)を還付する(法191)。

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