税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

源泉徴収の手続

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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 退職する社員等に退職手当等を支給する場合には、次の順序によって退職所得に対する所得税額を計算し、その支給の際に源泉徴収しなければならない(法199201)。

1 退職所得の受給申告書の受理

 退職者から、まず「退職所得の受給に関する申告書」を提出させる。この申告書を退職手当等の支払者が受理して保存しておかなければならない(法203規77⑦)。

備考

退職した者が同一年中に他の退職手当等の支払を受けたことがある場合には、その退職手当等に係る源泉徴収票をこの受給申告書に添付させる(法203)。

2 税額の計算

 <税額の計算は次による>

(1) 「退職所得の受給に関する申告書」が提出されている場合

(イ) 退職手当等を1か所のみから受けている場合

 〔 退職手当等の収入金額 ― 退職所得控除額 〕×(1/2(注))× 税率 = 徴収税額

(注) 特定役員退職手当等にあっては、この2分の1課税の適用はない。
  また、令和4年1月1日以後に支払を受けるものにあっては、短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分についても、この2分の1課税の適用はない。

備考

確定給付企業年金に係る規約又は適格退職年金契約に基づく退職一時金の支給を受けた場合に、その退職一時金のうちにその加入者又は退職者が負担した掛金等が含まれているときは、その負担した掛金等の金額を控除した額が退職手当等の金額となる(法202令319の3の2)。

退職所得控除額の計算

 <退職所得控除額の計算は次による(法30③⑥)>

  • ① 勤続年数が20年以下である場合
      40万円×勤続年数=退職所得控除額
      この算式で計算した金額が80万円以下のときは80万円
  • ② 勤続年数が20年を超える場合
      (勤続年数-20年)×70万円+800万円=退職所得控除額
  • ③ 障害者になったことに直接基因して退職した場合は、①、②の算式で計算した金額に100万円を加算する(最低控除額180万円)。

(注) 退職所得の源泉徴収額を計算する際の退職所得控除額を実際に求めるときは、退職手当等を支払うべきことが確定した時における勤続年数及び障害者になったことに直接基因して退職したかどうかの別に応じて別表第6に掲げる退職所得控除額により求める(法201②)。

備考

退職手当等の支払者がその支払に当たって前職の勤続年数を通算して退職金の支給を行った場合で、前職で退職手当等の支給を受けているときには、退職所得控除額の計算も同様に前職の勤続年数を通算して求めた控除額から前職の控除額を控除した金額が、支払われた退職手当等の退職所得控除額となる(法30⑥一、令70)。また、その年の前年以前4年内(その年に確定拠出年金に係る老齢給付金としての一時金の支払を受ける場合には、14年内)に退職手当等の支給を受けている場合も重複期間に相当する控除額が控除される。
 なお、詳細は「退職所得」の項(157頁)を参照。

左の期間に1年未満の端数が生じたときは、これを1年として計算する(令69②69の2④)。

勤続年数の計算

 <勤続年数の計算は次による>

 退職手当等の受給者が退職手当等の支払者のもとにおいて引き続き勤務した期間(勤続期間という。以下同じ。)により勤続年数を計算する。ただし、次に掲げる場合はその期間による(令6969の2)。

  • ① 就職の日から退職の日までの間に一時勤務しなかった期間がある場合は、その期間前の勤続期間と勤務に復した後の勤続期間を合計した期間
  • ② 退職手当等の支払者のもとにおいて勤務しなかった期間に他の者のもとで勤務した場合で、その支払者が退職手当等の支払金額の計算期間に当該他の者のもとで勤務した期間を含めたときは、その期間を勤続期間に加算した期間
  • ③ 同一の支払者から前に退職手当等の支給を受けていたことがある場合には、前の退職手当等の計算期間は除かれる。ただし、その支払者が前の退職手当等の計算期間を含めて今回の退職手当等の計算期間を計算しているときは、前の退職手当等の計算期間も含めて勤続期間を求める。
  • ④ 社会保険制度等に基づいて支給される一時金で退職手当等とみなされるもの(法31)については、その組合員等であった期間(確定拠出年金に係る老齢給付金としての一時金に該当する場合には、企業型年金規約に基づいて事業主掛金を納付した期間等及び個人型年金規約に基づいて個人型年金加入者掛金を納付した期間等を合算した期間)
  • ⑤ その年に二以上の退職手当等の支給を受ける場合は、それぞれの退職手当等について上記①~③により計算した期間のうち最も長い期間となるが、他の期間に、その最も長い期間と重複していない期間があるときは、その重複していない期間を加算する。

(ロ) その年中に他の退職手当等を受けている場合

  • ① その年中の退職手当等の全てが「特定役員退職手当等」又は「一般退職手当等」のいずれか一方のみ(令和4年1月1日以後に支払を受けるものにあっては、「短期退職手当等」、「特定役員退職手当等」又は「一般退職手当等」のいずれかのみ)である場合
     〔 退職手当等の収入金額 + 他の退職手当等の収入金額 ― 退職所得控除額 〕×(1/2(注))× 税率 → 税額 ― 他の退職手当等に係る税額 = 徴収税額
    (注) 特定役員退職手当等にあっては、この2分の1課税の適用はない。
       また、令和4年1月1日以後に支払を受けるものにあっては、短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分についても、この2分の1課税の適用はない。
  • ② その年中に「特定役員退職手当等」及び「一般退職手当等」のいずれも受けている場合
     〔 特定役員退職手当等の収入金額 ― 特定役員退職所得控除額 〕+ 〔 一般退職手当等の収入金額 ― 一般退職所得控除額 〕×(1/2) →× 税率 → 税額 ― 6他の退職手当等に係る税額 = 徴収税額
    (注) 令和4年1月1日以後に支払を受けるものにあっては、その年中の退職所得の全てが、○イ「一般退職手当等」及び「短期退職手当等」である場合、○ロ「一般退職手当等」及び「特定役員退職手当等」である場合、○ハ「短期退職手当等」及び「特定役員退職手当等」である場合又は○ニ「一般退職手当等」、「短期退職手当等」及び「特定役員退職手当等」である場合の区分に応じ、それぞれの退職所得の金額の計算に準じて計算した金額となる。なお、詳細は「退職所得」の項を参照。

備考

この場合の退職所得控除額の計算の基礎となる期間は上記⑤による。

「一般退職手当等」とは、特定役員退職手当等以外(令和4年1月1日以後に支払を受けるものにあっては、短期退職手当等及び特定役員退職手当等以外)の退職手当等をいう(法201①一イ)。

「特定役員退職所得控除額」は、「20万円×重複勤続年数+40万円×重複しない特定役員勤続年数」により、「一般退職所得控除額」は、「退職所得控除額全体-特定役員退職所得控除額」により、それぞれ求める(法201①二ハ、令319の3)。なお、詳細は「退職所得」の項(157頁)を参照。
(注) 令和4年1月1日以後に支払を受けるものについて、左記○イ~○ニの区分に応じ、それぞれの退職所得の金額の計算に準じて計算する場合の「短期退職所得控除額」、「一般退職所得控除額」及び「特定役員退職所得控除額」は、所得税を徴収すべき退職手当等を支払うべきことが確定した時の状況におけるこれらの控除額による。

この場合は、確定申告によって精算する。

(2) 「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていない場合

  退職手当等の収入金額 ×20%= 徴収税額

3 税額の徴収と源泉徴収票の交付

 上記の計算によって算出した税額を支給する退職手当等の金額から徴収し、徴収した日の属する月の翌月10日までに納付する。

 なお、源泉徴収義務者が退職手当等の支払に係る所得税を納付しなかった場合において、税務署長がその源泉徴収義務者からその退職手当等の支払に係る所得税を徴収するときは、その退職手当等の支払を受けた者の労務に従事した期間、労務の性質、その提供の程度その他の事項により、その退職手当等の支払を受けた者ごとの支払金額及びその支払の日の推計等をして、これをすることができる(青色申告書を提出した個人の事業所得の金額等に係る支払及び青色申告書を提出した法人の支払に係るものを除く。)(法221②~⑦、令334の2)。

 税額を徴収した場合には、一定の書式に基づいた源泉徴収票を2通作成し、1通は受給者に交付し、他の1通は所轄税務署長に退職後1月以内に提出しなければならない(法226②)。

 なお、退職手当等の支払者は、退職手当等の支払を受ける者の承諾を得て、書面による源泉徴収票の交付に代えて、退職手当等の源泉徴収票に記載すべき事項を電磁的記録により提供することができる。ただし、退職手当等の支払を受ける者の請求があるときは、源泉徴収票を交付しなければならない(法226④)。

備考

法人がその役員に支払う退職手当等以外の退職手当等の源泉徴収票は、税務署長への提出は要しない(規94②)。

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