- (1) 居住者又は総合課税の適用を受ける非居住者である納税義務者はその年中の合計所得金額が雑損控除などの各種所得控除の合計額を超え、かつ、その超える金額について求められる所得税額が配当控除額を超える場合は、確定損失申告書を提出する場合を除き、確定所得申告の義務があり、その翌年2月16日から3月15日までに税務署長に対し確定申告書を提出しなければならない(法120)。
(注) 令和3年分以降の所得税については、所得税額が配当控除額を超える場合であっても、控除しきれなかった外国税額控除の額、源泉徴収税額又は予納税額があるときは、確定申告書を提出することを要しない。
ただし、次に掲げる場合に該当するときは、(イ)又は(ロ)に該当する場合には課税総所得金額、申告分離課税を選択した上場株式等に係る課税配当所得の金額、課税長期譲渡所得金額、課税短期譲渡所得金額、一般株式等に係る課税譲渡所得等の金額、上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額、先物取引に係る課税雑所得等の金額及び課税山林所得金額に対する所得税について、(ハ)又は(ニ)に該当する場合には課税退職所得金額について、確定申告書を提出することを要しない(法121)。 - (イ) 1か所から給与所得の支払を受ける場合であって、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき
- (ロ) 2か所以上から給与所得の支払を受ける場合であって、①従たる給与等の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であること、又は②給与等の収入金額が社会保険料控除額、小規模企業共済等掛金控除額、生命保険料控除額、地震保険料控除、障害者控除額、寡婦控除額、ひとり親控除額、勤労学生控除額、配偶者控除額、配偶者特別控除額及び扶養控除額の合計額に150万円を加えた金額以下で、かつ、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき
- (ハ) その年中の退職所得の全てについて退職所得の受給申告書を提出し、退職所得に対する所得税の源泉徴収を受けた場合又は受ける場合
- (ニ) その年分の課税退職所得金額について計算した所得税額が、退職所得につき源泉徴収された又はされるべき所得税額以下である場合
- (ホ) その年中の公的年金等に係る収入金額が400万円以下であるものが、その公的年金等の全部(源泉徴収を要しない公的年金等を除く。)について所得税の源泉徴収を受けた場合又は受ける場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるとき
- (2) (1)の(イ)又は(ロ)に該当する者でも次のいずれかに該当するときは、総所得金額等及び退職所得金額について確定所得申告の義務がある(法121、令262の2)。
- ① その年中の給与等の金額が2,000万円を超えている者
- ② 同族会社の役員若しくはその親族、内縁の配偶者等である者又はあった者が、その法人から貸付金の利子、資産の賃貸料等を給与等のほかに受けている場合
- ③ 給与所得について災害減免法により源泉徴収を猶予され、又は徴収された税金の還付を受けた場合(災免法3⑥)
- ④ 家事使用人などで、給与所得の源泉徴収をされなかった場合(基通121-5)
所得税の確定申告をする者は、税務署長に対し、基準所得税額、復興特別所得税額等一定の事項を記載した復興特別所得税申告書を併せて提出しなければならない(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法17。詳細は「復興特別所得税」の項(310頁)参照)。
左の合計所得金額とは総所得金額、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得の金額、長期譲渡所得金額及び短期譲渡所得金額、一般株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額並びに山林所得金額の合計額をいう。
各種所得控除とは次の所得控除をいう。
- (1) 雑損控除
- (2) 医療費控除
- (3) 社会保険料控除
- (4) 小規模企業共済等掛金控除
- (5) 生命保険料控除
- (6) 地震保険料控除
- (7) 寄附金控除
- (8) 障害者控除
- (9) 寡婦控除
- (10) ひとり親控除
- (11) 勤労学生控除
- (12) 配偶者控除
- (13) 配偶者特別控除
- (14) 扶養控除
- (15) 基礎控除
確定申告書の提出に際し、上記(1)、(3)~(7)の適用((3)については社会保険料控除のうち、国民年金保険料又は国民年金基金の掛金に係るものに限る。)を受ける者は、これらの事項を証する書類を、添付しなければならない。
確定申告書の提出に際して上記(2)の適用を受ける者は、①医療費の明細書又は②保険者の医療費通知(令和3年分以後の確定申告については、審査支払機関の医療費通知でも可)を添付しなければならない(法120④)。
なお、上記①の医療費の明細書を提出した場合において、法定申告期限等から5年間、税務署長が医療費の領収書等の提示又は提出を求めたときは、これらの提示又は提出をしなければならない(法120⑤)。
なお、令和元年分までの確定申告については、納税者の選択により、医療費の領収書等の添付でもよいこととされている(平成29年改正法附則7②)。
非居住者である親族に係る上記(8)、(12)~(14)の適用を受ける者は、①納税者の親族であることを確認できる書類、②納税者が親族の生活費等に充てるための支払を行ったことを確認できる書類を添付しなければならない(法120③二)。
(注) 令和5年分以後の確定申告書の提出に際しては、非居住者である親族に係る上記(14)の適用を受ける者は、当該非居住者である親族が30歳以上70歳未満である場合には、上記①②に加え、当該非居住者である親族が留学により非居住者となった者であることを証明する書類又は送金関係書類でその送金額が38万円以上であることを明らかにする書類を添付しなければならない(法120③三)。