税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

上場株式等に係る配当所得等の課税の特例

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上場株式等に係る配当所得等の申告分離課税

 居住者又は恒久的施設を有する非居住者(居住者等)が、平成21年1月1日以後(利子所得に係るものについては、平成28年1月1日以後)に支払を受けるべき上場株式等の配当等を有する場合において、その上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得につきこの特例の適用を受けようとする旨の記載のある確定申告書を提出したときは、その上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得については、他の所得と区分して、その年中のその上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額(以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」という。)に対し、上場株式等に係る課税配当所得等の金額(所得控除を適用した後の上場株式等に係る配当所得等の金額をいう。)の15%(他に地方税5%)の税率により課税される(措法8の4①)。

1 上場株式等の配当等の範囲

 この特例の対象となる「上場株式等の配当等」とは、利子等(一般利子等、国外一般公社債等の利子等その他一定の利子等を除く。)又は配当等(源泉分離課税とされている私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等及び国外私募公社債等運用投資信託等の配当等を除く。)のうち次に掲げるものをいう(措法8の4①各号)。

  • ① 金融商品取引所に上場されている株式等その他これに類するものの利子等又は配当等で、内国法人から支払がされるその配当等の支払に係る基準日においてその内国法人の発行済株式(投資法人にあっては、発行済みの投資口)又は出資の総数又は総額の100分の3以上に相当する数又は金額の株式(投資口を含む。)又は出資を有する者(いわゆる大口株主等)がその内国法人から支払を受ける配当等以外のもの
  • ② 投資信託でその設定に係る受益権の募集が一定の公募により行われたもの(特定株式投資信託を除く。)の収益の分配
  • ③ 特定投資法人の投資口の配当等
  • ④ 特定受益証券発行信託(信託契約の締結時において委託者が取得する受益権の募集が公募により行われたものに限る。)の収益の分配
  • ⑤ 特定目的信託(その信託契約の締結時において原委託者が有する社債的受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。)の社債的受益権の剰余金の配当
  • ⑥ 特定公社債の利子

備考

「金融商品取引所に上場されている株式等その他これに類するもの」の範囲は、配当所得等の確定申告不要制度の対象となっている上場株式等と同様である(詳細は129頁参照)。

「特定公社債」とは、「上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」(242頁参照)の対象となる上場株式等のうち、①又は⑥から⑮に該当する公社債をいう(措法3①一)。

「特定投資法人」とは、投資信託及び投資法人に関する法律の投資法人のうち、次に掲げる要件を満たすもの(公募・オープンエンド型)をいう(措法8の4①三、措令4の2③)。

  • イ その規約に投資主の請求により投資口の払戻しをする旨が定められていること
  • ロ その設立の際の投資口の募集に係る勧誘が金融商品取引法第2条第3項第1号に掲げる場合に該当し、かつ、申込みをしようとする者に対しその取得勧誘が同号に掲げる場合に該当するものである旨の通知がなされて行われるものであること

2 配当控除の不適用

 申告分離課税の適用を受けた上場株式等の配当等に係る配当所得については、配当控除(法92①)は適用されない(措法8の4①後段)。

3 総合課税との選択適用

 居住者等がその年中に支払を受けるべき特定上場株式等の配当等に係る配当所得について総合課税の適用を受けた場合には、その居住者等がその同一の年中に支払を受けるべき他の特定上場株式等の配当等に係る配当所得については、申告分離課税を選択することはできない(措法8の4②)。

4 上場株式等に係る配当所得等の金額の計算等

  • ① 申告分離課税の対象とされる上場株式等に係る配当所得の金額は、上場株式等の配当等に係る収入金額がその上場株式等に係る配当所得の金額となる(法24②)。ただし、いわゆる負債利子控除の適用がある場合には、その適用後の金額となる(法24②ただし書)。
  • ② 所得税法上の控除対象配偶者、同一生計配偶者、源泉控除対象配偶者、扶養親族、寡婦(寡夫)、勤労学生等の所得要件に該当するかどうかの判定に当たっては、上場株式等に係る配当所得等の金額を含めて行う(措法8の4③一)。
  • ③ 総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、これを他の各種所得の金額から控除(損益通算)することができるが(法69)、この損益通算を行う場合には、この各種所得の金額から上場株式等に係る配当所得等の金額を除外して計算する(措法8の4③二)。

5 上場株式等に係る配当所得等の金額に対して課される所得税額の計算

  • ① 上場株式等に係る課税配当所得等の金額
      上場株式等に係る配当所得等の金額に対して課される所得税額の計算の基礎となる「上場株式等に係る課税配当所得等の金額」は、通常の場合、上場株式等に係る配当所得等の金額であるが、他の所得がない場合や基礎控除、配偶者控除、扶養控除等の所得控除の金額のうち他の所得から控除してもなお控除しきれない金額がある場合には、上場株式等に係る配当所得等の金額からこれらの所得控除の額を控除した後の額が上場株式等に係る課税配当所得等の金額となる(措法8の4①、③三)。
  • ② 上場株式等に係る配当所得等の金額に対する所得税額の計算
      上場株式等に係る配当所得等の金額に対して課される所得税額は、上場株式等に係る課税配当所得等の金額の15%相当額とされている(措法8の4①)。

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