税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例

一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例

 居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、平成28年1月1日以後に一般株式等の譲渡をした場合には、その一般株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、他の所得と区分して、その年中の事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額に対し、15%(他に地方税5%)の税率により課税される(措法37の10)。

備考

ゴルフ会員権の譲渡による所得は、総合課税の対象とされる(措法37の10①②、措令25の8②)。

譲渡所得の計算に当たっては、50万円の特別控除や長期譲渡所得の2分の1課税の適用はない(措法37の10⑥三)。

株式等の譲渡に係る事業所得又は雑所得の必要経費としては、その収入金額に係る株式等の取得価額のほか株式等を取得するために要した借入金の利子、譲渡のために要した委託手数料、管理費等がある(法27②、35②二、37①)。
 株式等の譲渡に係る譲渡所得について、総収入金額から控除されるものは、その所得の基因となった株式等の取得費のほか、株式等の譲渡に要した費用として委託手数料等がある(法33③)。さらに、譲渡所得の場合についても事業所得及び雑所得の場合と同様、その年中に支払うべきその株式等を取得するために要した負債の利子についても収入金額から控除することができることとされている(措法37の10⑥三)。

対象となる者

 この特例が適用される者は、居住者及び恒久的施設を有する非居住者である(措法37の10①)。恒久的施設を有しない非居住者については、一般株式等の譲渡による一定の国内源泉所得について、別途、申告分離課税が適用される(措法37の12①)。

対象となる株式等

 この特例の対象となる「一般株式等」とは、次に掲げる株式等(外国法人に係るものを含む。)のうち、上場株式等以外のものをいう(措法37の10①②)。

  • ① 株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。)
  • ② 特別の法律により設立された法人の出資者の持分、合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分(出資者、社員、組合員又は会員となる権利及び出資の割当てを受ける権利を含む。)
  • ③ 協同組織金融機関の優先出資に関する法律の優先出資(優先出資者となる権利及び優先出資の割当てを受ける権利を含む。)及び資産流動化法の優先出資(優先出資社員となる権利及び引受権を含む。)
  • ④ 投資信託の受益権
  • ⑤ 特定受益証券発行信託の受益権
  • ⑥ 社債的受益権
  • ⑦ 公社債(長期信用銀行債等及び償還差益につき発行時に源泉徴収がされた割引債を除く。)

収入金額

 「一般株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額」は、その株式等の譲渡の対価としてその年において収入すべき金額をいうが、次に掲げる金額(所得税法第25条により配当とみなされる部分の金額を除く。)は、一般株式等の譲渡所得等に係る収入金額とみなされる(措法37の10③④、措令25の8④~⑦⑨~⑪)。

  • ① 法人の株主等がその法人の合併(その法人の株主等に合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産が交付されなかったものを除く。)により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ② 法人の株主等がその法人の分割(分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産が交付されなかったもので、その株式若しくは出資が分割法人の発行済株式等の総額又は総数のうちに占めるその分割法人の各株主等の有するその分割法人の株式の数又は金額の割合に応じて交付されたものを除く。)により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ③ 法人の株主等がその法人の株式分配(その法人の株主等に対して、完全子法人の株式又は出資のみが、現物分配法人の各株主等の有するその現物分配法人の発行済株式等の数又は金額の割合に応じて交付されたものを除く。)により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ④ 法人の株主等がその法人の資本の払戻しにより、又はその法人の解散による残余財産の分配として交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑤ 法人の株主等がその法人の自己の株式又は出資の取得により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑥ 法人の株主等がその法人の出資の消却、その法人の出資の払戻し、その法人からの退社若しくは脱退による持分の払戻し又はその法人の株式若しくは出資をその法人が取得することなく消滅させることにより交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑦ 法人の株主等がその法人の組織変更により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑧ 法人の合併によりその合併に係る被合併法人の新株予約権者がその合併によりその新株予約権者が有していたその被合併法人の新株予約権に代えて金銭その他の資産の交付を受ける場合における金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑨ 法人の組織変更によりその組織変更をした法人の新株予約権者がその組織変更によりその新株予約権者が有していたその法人の新株予約権に代えて交付を受ける金銭の額
  • ⑩ 公社債の元本の償還により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑪ 分離利子公社債に係る利子として交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
  • ⑫ 投資信託若しくは特定受益証券発行信託(以下「投資信託等」という。)の受益権で一般株式等に該当するもの又は社債的受益権で一般株式等に該当するものを有する居住者又は恒久的施設を有する非居住者が交付を受ける次のイからハまでの金額
    • イ その上場廃止特定受益証券発行信託の終了又は一部の解約により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額
    • ロ その投資信託等(上場廃止特定受益証券発行信託を除く。)の終了又は一部の解約により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうち当該投資信託等について信託されている金額投資信託等の受益権に係る部分に達するまでの金額
    • ハ その特定受益証券発行信託に係る信託の分割により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちその特定受益証券発行信託について信託されている金額に達するまでの金額
    • ニ 社債的受益権の元本の償還により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額

備考

「上場廃止特定受益証券発行信託」とは、その受益権が金融商品取引所に上場されていたことその他一定の要件を満たす特定受益証券発行信託をいう(措法37の10④一)。

取得価額等

 株式等の取得価額については次のとおりとなっている(法48令109118)。

  • ① 金銭の払込みにより取得した有価証券(③に該当するものを除く。) その払込みをした金銭の額
  • ② 特定譲渡制限付株式及び承継譲渡制限付株式 その特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限が解除された日(同日前に交付された個人が死亡した場合において、その個人の死亡の時発行法人等が無償で取得することとなる事由に該当しないことが確定している特定譲渡制度付株式又は承継譲渡制度付株式については、その個人の死亡の日)における価額
  • ③ 発行法人から与えられた株式等を取得する権利につき所得税法施行令第84条第2項各号(株式等を所得する権利の価額)に掲げる権利の行使により取得した有価証券 その有価証券のその権利の行使の日(同項第3号に掲げる権利の行使により取得した有価証券にあっては、その権利に基づく払込み又は給付の期日(払込み又は給付の期間の定めがある場合には、その払込み又は給付をした日))における価額
  • ④ 発行法人に対し新たな払込み又は給付を要しないで取得したその発行法人の株式(出資及び投資口を含む。)又は新株予約権若しくは新投資口予約権のうち、その発行法人の株主等として与えられる場合(その発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)のその株式又は新株予約権若しくは新投資口予約権 零
  • ⑤ 購入した有価証券(上記③に該当するものを除く。) その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
  • ⑥ ①から⑤までの方法以外の方法により取得した有価証券その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額

 なお、居住者が2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式等の取得価額については、総平均法(譲渡所得又は雑所得については総平均法に準ずる方法)により評価することとされている(法48令105118措令25の8⑧)。

 事業所得に係る総平均法とは、株式等をその種類及び銘柄の異なるごとに区別し、その種類及び銘柄の同じものについて、○イその年の1月1日において有していた種類及び銘柄を同じくする株式等の取得価額の総額と、○ロその年中に取得した種類及び銘柄を同じくする株式等の取得価額の総額との合計額をこれらの株式等の総数で除して計算した価額をその1単位当たりの取得価額とする評価方法をいう(令105①一)。

 また、株式等に係る譲渡所得又は雑所得の場合には、2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式等を最初に取得した時(その後既にその株式等の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時とされる。以下同じ。)からその譲渡の時までの期間を基礎として、最初に取得した時において有していたその株式等及びその期間内に取得した株式等について総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額が取得価額とされる(令118)。

損失の金額の取扱い

 一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、それぞれ他の一般株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額から控除することとされている(措法37の10①、措令25の8①)。

 損益通算に当たっては、一般株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額はないものとして計算することとされ、その損失の金額は他の所得の金額から控除することはできず、また、一般株式等の譲渡に係る所得以外の所得の金額の計算上生じた損失を一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することもできないこととされている(措法37の10①⑥)。

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