概要
居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、平成28年1月1日以後に上場株式等の譲渡をした場合には、その上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、他の所得と区分して、その年中の上場株式等の譲渡に係る事業所得、譲渡所得及び雑所得の金額に対し、15%(他に地方税5%)の税率により課税される(措法37の11)。
譲渡所得の計算に当たっては、50万円の特別控除や長期譲渡所得の2分の1課税の適用はない(措法37の11⑥)。
対象となる者
この特例が適用される者は、居住者及び恒久的施設を有する非居住者である(措法37の11①)。恒久的施設を有しない非居住者については、上場株式等の譲渡による一定の国内源泉所得について、別途、申告分離課税が適用される(措法37の12③)。
対象となる上場株式等
この特例の対象となる「上場株式等」とは、株式等のうち次に掲げるものをいう(措法37の11②)。
- ① 株式等で金融商品取引所に上場されているものその他これに類するもの
- ② 投資信託でその設定に係る募集が一定の公募により行われたもの(特定株式投資信託を除く。)
- ③ 特定投資法人の投資口
- ④ 特定受益証券発行信託(信託契約の締結時において委託者が取得する受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。)の受益権
- ⑤ 特定目的信託(その信託契約の締結時において原委託者が取得する社債的受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。)の社債的受益権
- ⑥ 国債、地方債
- ⑦ 外国又はその地方公共団体が発行し、又は保証する債券
- ⑧ 会社以外の法人が特別の法律により発行する債券(外国法人に係るもの並びに投資信託及び投資法人に関する法律の投資法人債、同法の投資法人債、資産の流動化に関する法律の特定社債及び同法の特定短期社債を除く。)
- ⑨ 公社債でその発行の際の有価証券の募集が一定の公募により行われたもの
- ⑩ 社債のうち、その発行の日前9月以内(外国法人にあっては、12月以内)に金融商品取引法に規定する有価証券届出書、有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出している法人が発行するもの
- ⑪ 金融商品取引所(これに類するもので外国の法令に基づき設立されたものを含む。)においてその金融商品取引所の規則に基づき公表された公社債情報に基づき発行する公社債で、その発行の際に作成される目論見書に、その公社債がその公社債情報に基づき発行されるものである旨の記載のあるもの
- ⑫ 国外において発行された公社債で、次に掲げるもの
- イ 多数の者を相手方として行われた有価証券の売出しに応じて取得した公社債で、その取得の時から引き続きその売出しをした金融商品取引業者等の営業所において保管の委託がされているもの
- ロ 金融商品取引法第2条第4項に規定する売付け勧誘等に応じて取得した公社債(上記イの公社債を除く。)で、その取得の日前9月以内(外国法人にあっては、12月以内)に有価証券届出書、有価証券報告書等を提出している会社が発行したもの(その取得の時から引き続きその売付け勧誘等をした金融商品取引業者等の営業所において保管の委託がされているものに限る。)
- ⑬ 外国法人が発行し、又は保証する債券のうち、次のもの
- イ 次に掲げる外国法人が発行し、又は保証する債券
- (イ) その出資金額又は拠出をされた金額の合計額の2分の1以上が外国の政府により出資又は拠出をされている外国法人
- (ロ) 外国の特別の法令の規定に基づき設立された外国法人で、その業務がその外国の政府の管理の下に運営されているもの
- ロ 国際間の取極に基づき設立された国際機関が発行し、又は保証する債券
- ⑭ 銀行業若しくは第1種金融商品取引業を行う者(第一種少額電子募集取扱業者を除く。)若しくは外国の法令に準拠してその国において銀行業若しくは金融商品取引業を行う法人(以下「銀行等」という。)又は次に掲げる者が発行した社債(その取得をした者が実質的に多数でないものとして一定のものを除く。)
- イ 銀行等がその発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有する関係にある法人
- ロ 親法人(銀行等の発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有する関係のある法人をいう。)がその発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有する関係にあるその銀行等以外の法人
- ⑮ 平成27年12月31日以前に発行された公社債(その発行の時において法人税法第2条第10号に規定する同族会社に該当する会社が発行したものを除く。)
「公社債情報」とは、一定の期間内に発行する公社債の上限額、発行者の財務状況等その他その公社債に関する基本的な情報をいう。
損失の金額の取扱い
上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、それぞれ他の上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額から控除することとされている(措法37の11①、措令25の9①)。
損益通算に当たっては、上場株式等に係る譲渡所得等はないものとして計算することとされ、上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は他の所得の金額から控除することはできず、また、上場株式等の譲渡に係る所得以外の所得の金額の計算上生じた損失を上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することもできないこととされている(措法37の11①⑥)。
上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等の金額については、特例として損益通算をすることができる(措法37の12の2。236頁参照)。
その他
収入金額、取得価額等の扱いについては、基本的に、一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例と同様である(措法37の11③④)。