税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者又は恒久的施設を有する非居住者(居住者等)が非課税上場株式管理契約に基づきその非課税口座に係る振替口座簿に記載若しくは記録がされ、若しくはその非課税口座に保管委託がされている一定の株式等(非課税口座内上場株式等)のうち次に掲げる譲渡をした場合には、その譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、所得税(及び住民税)を課さない。また、非課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額がその非課税口座内上場株式等の取得費及び必要経費に満たない場合におけるその損失額は、所得税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす(措法37の14①②)。

  • ① 非課税上場株式等管理契約に基づく譲渡
      非課税管理口座に非課税管理勘定を設けた年の1月1日以後5年を経過する日までの間に、非課税上場株式等管理契約に基づいて行われる、その非課税口座管理勘定に係る次の上場株式等の譲渡
    • イ 株式、特別の法律により設立された法人等の出資者の持分、共同組織金融機関等の優先出資、投資信託の受益権(公社債投資信託以外の証券投資信託の受益権及び証券投資信託以外の投資信託で公社債等運用投資信託に該当しないものの受益権に限る。)若しくは特定受益証券発行信託の受益権又は新株予約権付社債のうち、金融商品取引所に上場されているものその他これに準ずるもの
    • ロ 公社債投資信託以外の証券投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたものの受益権
    • ハ 特定投資法人の投資信託及び投資口
  • ② 非課税累積投資契約に基づく譲渡
      非課税口座に累積投資勘定を設けた年の1月1日以後20年を経過する日までの間に、累積投資契約に基づいて行われる、その累積投資勘定に係る次の上場株式等の譲渡
    • イ 公社債投資信託以外の証券投資信託の受益権のうち、金融商品取引所に上場されているものその他これに準ずるもの
    • ロ 公社債投資信託以外の証券投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたものの受益権
  • 〇 令和5年12月31日に上記①の非課税管理勘定の設定期間が終了することに伴い、令和6年1月1日以降は、上記①に代わり特定非課税累積投資契約に基づく次の譲渡が非課税の対象とされる。
    • イ 非課税口座に特定累積投資勘定を設けた年の1月1日以後5年を経過する日までの間に、特定非課税累積投資契約に基づいて行われる、その特定累積投資勘定に係る上記②イロの上場株式等の譲渡
    • ロ 非課税口座に特定非課税管理勘定を設けた年の1月1日以後5年を経過する日までの間に、特定非課税累積投資契約に基づいて行われる、その特定非課税管理勘定に係る上記①イ~ハの上場株式等の譲渡

備考

②の譲渡を除き、平成26年1月1日以後に設定される非課税口座に係る同日以後の非課税口座内上場株式等の譲渡及び払出事由による非課税口座内上場株式等の払出しについて適用される。

1 非課税口座内上場株式等の譲渡による所得の区分計算

 この特例を適用する場合において、居住者等の有する同一銘柄の上場株式等のうちにその非課税口座内上場株式等とその非課税口座内上場株式等以外の上場株式等とがある場合には、これらの上場株式等については、それぞれその銘柄が異なるものとして、その者のその年分の上場株式等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費に算入する金額の計算をする(措法37の14③措令25の13②)。

2 用語の意義

  • ① 非課税口座
      居住者等(その年1月1日において20歳以上(令和5年1月1日以後に開設される口座については、18歳以上)である者に限る。)が、この特例の適用を受けるため、金融商品取引業者等の営業所の長に所定の事項を記載した非課税口座開設届出書の提出をして、その金融商品取引業者等との間で締結した非課税上場株式等管理契約に基づき平成26年から令和5年までの各年(非課税累積投資契約にあっては平成30年から令和24年までの各年)に開設された上場株式等の振替口座簿への記載若しくは記録又は保管の委託(以下「振替記載等」という。)に係る口座(その口座において非課税上場株式等管理契約、非課税累積投資契約及び特定非課税累積投資契約に基づく取引以外の取引に関する事項を扱わないものに限る。)をいう(措法37の14⑤一)。
  • ② 非課税上場株式等管理契約
      この非課税の特例の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した上場株式等の振替記載等に係る契約で、その契約書において次の事項などが記載されているものをいう(措法37の14⑤二)。
    • イ 上場株式等の振替記載等は、その振替記載等に係る口座に設けられた非課税管理勘定において行うこと
    • ロ その非課税管理勘定においてはその居住者等の一定の上場株式等(ストック・オプション税制(措法29の2)の適用を受けて取得をした上場株式等を除く。)のみを受け入れること
  • ③ 非課税管理勘定
      非課税上場株式等管理契約に基づきその口座に記載若しくは記録又は保管の委託がされる上場株式等につき、その記載若しくは記録又は保管の委託に関する記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、次の要件を満たすものをいう(措法37の14⑤三)。
    • イ その勘定が、平成26年1月1日から令和5年12月31日までの期間内の各年(累積投資勘定が設けられる年を除く。)においてのみ設けられること
    • ロ その勘定が、勘定設定期間内の各年の1月1日(年の中途において一定の非課税口座開設届出書等が提出された場合等にあっては、提出等の日)において設けられること
  • ④ 非課税累積投資契約
      この非課税の特例の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した累積投資契約(その居住者等が、一定額の公募株式投資信託の受益権につき、定期的に継続して、その金融商品取引業者等に買付けの委託等をすることを約する契約で、あらかじめその買付けの委託等をする受益権の銘柄が定められているものをいう。)により取得した公募等株式投資信託の受益権の振替口座簿への記載等に係る契約で、その契約書において次の事項等が記載されているものをいう(措法37の14⑤四)。
    • イ 公募等株式投資信託の受益権の振替口座簿への記載等は、累積投資勘定において行うこと。
    • ロ その累積投資勘定においては、その居住者等の公募等株式投資信託の受益権(その受益権を定期的に継続して取得することにより個人の財産形成が促進されるものとして一定の要件を満たすものに限る。)のうち、累積投資勘定が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの期間(受入期間)内にその金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得をしたその受益権(その受入期間内の取得対価の額の合計額が40万円を超えないものに限る。)及び一定の公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
    • ハ その金融商品取引業者等は、初めて累積投資勘定を設けた日から10年を経過した日及び同日の翌日以後5年を経過した日ごとの日におけるその居住者等の住所その他の一定の事項を確認することとされていること。
  • ⑤ 累積投資勘定
      非課税累積投資契約に基づき振替口座簿への記載若しくは記録又は保管の委託がされる上場株式等につき.その記載若しくは記録又は保管の委託に関する記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、次の要件を満たすものをいう(措法37の14⑤五)。
    • イ その勘定が、平成30年1月1日から令和24年12月31日までの期間(勘定設定期間)内の各年(非課税管理勘定が設けられる年を除く。)においてのみ設けられること
    • ロ その勘定が、勘定設定期間内の各年の1月1日(年の中途において一定の非課税口座開設届出書等が提出された場合等にあっては、提出等の日)においても受けられること
  • 〇 令和6年1月1日以降には、特定非課税累積投資契約に係る非課税措置が創設されることに伴い、次の用語が追加される。
    • イ 特定非課税累積投資契約
        この非課税の特例の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した累積投資契約(上記④の累積投資契約をいう。)により取得した公募等株式投資信託の受益権の振替口座簿への記載等に係る契約で、その契約書において、次の事項等が記載されているものをいう(措法37の14⑤六)。
      • (イ) 上場株式等の振替口座簿への記載等は、特定累積投資勘定又は特定非課税管理勘定において行うこと。
      • (ロ) その特定累積投資勘定には、現行の累積投資勘定に受け入れることができる公募等株式投資信託の受益権のうち、特定累積投資勘定が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に受け入れた受益権(その期間内に取得対価の額の合計が20万円(下記(ハ)bの移管される上場株式等のその移管の時における価額が102万円を超える場合には、その超える金額を控除した金額)を超えないものに限る。)及び一定の公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
      • (ハ) その特定非課税管理勘定には、次の上場株式等のみを受け入れること。
        • a 特定非課税管理勘定が設けられた日から同年の属する年の12月31日までの間に受け入れた上場株式等で、その期間内の取得対価の合計額が102万円(下記bの移管される上場株式がある場合には、その移管の時におけるその上場株式等の価額を控除した金額)を超えないもの
        • b その居住者等の非課税口座に係る他の年分の非課税管理勘定、特定非課税管理勘定又はその者の未成年者口座の非課税管理勘定若しくは継続管理勘定から移管される上場株式等
        • c その他一定の上場株式等
    • ロ 特定累積投資勘定
        特定非課税累積投資契約に基づき振替口座簿への記載等がされる公募等株式投資信託の受益権の振替口座簿への記載等に関する記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、次の要件を満たすものをいう(措法37の14⑤七)。
      • (イ) その勘定が、令和6年1月1日から令和10年12月31日までの期間内の各年(累積投資勘定が設けられている年を除く。)においてのみ設けられること。
      • (ロ) その勘定が、勘定設定期間内の各年の1月1日(年の中途において、非課税口座開設届出書が提出された場合等にあっては、提出等の日)において設けられていること。
    • ハ 特定非課税管理勘定
        特定非課税累積投資契約に基づき振替口座簿への記載等がされる上場株式等の振替口座簿への記載等に関する記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、特定累積投資勘定と同時に設けられるものをいう(措法37の14⑤八)。

備考

「一定の上場株式等」等とは、次に掲げるものをいう(措法37の14⑤二イ~ハ)。

  • ① 次に掲げる上場株式等で、非課税管理勘定が設けられた日からその日の属する年の12月31日までの間に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が120万円(②の上場株式等がある場合には、その上場株式等の移管に係る払出しの時の金額を控除した金額。平成26・27年分については100万円)を超えないもの
    • イ その期間内に金融商品取引業者等への買付けの委託により取得をした上場株式等、金融商品取引業者等から取得をした上場株式等又は金融商品取引業者が行う上場株式等の募集により取得をした上場株式等で、その取得後直ちにその口座に受け入れられるもの
    • ロ 非課税管理勘定を設けた口座に係る他の年分の非課税管理勘定から移管がされる上場株式等(②の上場株式等を除く。)
  • ② 非課税管理勘定を設けた口座に係る他の年分の非課税管理勘定から、その非課税管理勘定が設けられた年の1月1日から5年を経過した日に設けられる非課税管理勘定に、同日に移管がされる上場株式等
  • ③ 租税特別措置法施行令第25条の13第12項に定める上場株式等

3 出国時における継続適用措置

 平成31年4月1日以後に出国をする居住者等については、給与等の支払をする者からの転任の命令などのやむを得ない事由に基因した一時的な出国により居住者等に該当しないこととなる場合において、その居住者等がその出国の日の前日までにその非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に、継続適用届出書を提出したときは、その出国の時から、その者がその金融商品取引業者等の営業所の長に、帰国届出書の提出をする日とその継続適用届出書の提出をした日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日とのいずれか早い日までの間は、この非課税措置を引き続き適用できる(措法37の14○22○23)。

 なお、その継続適用届出書の提出をした者が出国をした日からその者に係る帰国届出書を提出する日までの間に取得した上場株式等は、非課税口座に設けられた非課税管理勘定、累積投資勘定、特定累積投資勘定及び特定非課税管理勘定に受け入れることができない(措法37の14⑤二、四、措令25の13⑥⑯○25)。

4 非課税口座年間取引報告書の提出

 金融商品取引業者等は、その年においてその金融商品取引業者等の営業所に開設されていた非課税口座で、非課税管理勘定、累積投資勘定、特定累積投資勘定又は特定非課税管理勘定が設けられていたものがある場合には、その非課税口座を開設した居住者等の各人別に、その非課税口座を開設した居住者等の氏名、住所及び個人番号、その年中にその非課税口座において処理された上場株式等の譲渡の対価の額、その非課税口座に係る非課税口座内上場株式等の配当等の額その他所定の事項を記載した非課税口座年間取引報告書を非課税口座ごとに作成し、その年の翌年1月31日までに、その金融商品取引業者等のその非課税口座が開設されていた営業所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない(措法37の14○31、措規18の15の9①)。

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