- (1) 更生手続開始の決定があった場合
更生手続開始の決定があった場合において、更生債権を有する者からその債権につき債務免除等を受け、役員等から金銭その他の資産の贈与を受け、又は法人税法第25条第2項(会社更生法等の規定に従って行う評価換えに係る部分に限る。)により評価換えをしたときは、その受けることとなった日又は評価換えをした日を含む事業年度前の事業年度において生じた欠損金のうち一定の金額は、その受けることとなった日又は評価換えをした日を含む事業年度の損金に算入する。この損金に算入する一定の金額とは、次の金額のうちいずれか少ない金額である(法59①、令116の3、116の4)。 - ① 債務免除を受けた金額、贈与を受けた金銭その他の資産の価額及び所得の金額の計算上益金の額に算入した資産の評価益の純額の合計額
- ② 債務免除若しくは贈与を受けることとなった日又は評価換えをした日を含む事業年度の終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金の合計額(令116の3)。
- (2) 再生手続開始の決定等があった場合
再生手続開始の決定があった場合、特別清算開始の命令があった場合、破産手続開始の決定があった場合、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実があった場合又はこれらの事実に準ずる事実があった場合において、これらの事実があった時において債権者からその債権につき債務免除等を受け、これらの事実に伴いその役員等から金銭その他の資産の贈与を受け、又は民事再生等評価換え(法人税法第25条第3項若しくは第33条第4項の規定の適用を受けることをいう。)をしたときは、その受けることとなった日又は民事再生等評価換えをした日を含む事業年度前の事業年度において生じた欠損金のうち一定の金額は、その該当することとなった日を含む事業年度の損金に算入する。この損金に算入する一定の金額とは、次の金額のうちいずれか少ない金額である(法59②、令117、117の2)。 - ① 債務免除を受けた金額及び贈与を受けた金銭の額その他の資産の価額並びに法人税法第25条第3項の規定により益金の額に算入される金額から同法第33条第4項の規定により損金の額に算入される金額を減算した金額の合計額
- ② 債務免除若しくは贈与を受け、又は民事再生等評価換えをした日を含む事業年度の終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金の合計額から青色申告法人の繰越欠損金として所得の計算上損金に算入される金額又は青色申告法人でない法人の災害の場合の欠損金として所得の計算上損金に算入される金額を控除した金額(民事再生等評価換えをしたときは、民事再生等評価換えをした日を含む事業年度の終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金の合計額)(令117の2)。
- ③ 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入の規定を適用しないで計算した場合の所得金額
なお、民事再生等評価換えをした場合における上記③は、会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入の規定、青色欠損金額の控除の規定、災害損失欠損金の控除の規定及び最後事業年度の事業税の損金算入の規定を適用しないで計算した場合の所得金額となる。つまり、民事再生等評価換えをした場合には、いわゆる期限切れ欠損金額を優先して控除することができる。
会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入は、その損金算入の明細を記載した書類及びその事実を証する書類等を確定申告書等に添付しなければならない(法59④)。
債務免除等には、債務免除以外の事由により債権が消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずる場合を含む。
債務免除を受けた金額には、債務免除以外の事由により消滅した債務に係る利益の額を含む。
債務免除等には、債務免除以外の事由により債権が消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずる場合を含む。
債務免除を受けた金額には、債務免除以外の事由により消滅した債務に係る利益の額を含む。
被災法人について債務免除等があった場合の欠損金の損金算入の特例
株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法の規定による支援決定の対象となった法人又は同法に規定する産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人について再生計画認可の決定に準ずる一定の事実が生じた場合には、再生手続開始の決定等の事実による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度の適用を受けることができる(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律17)。
- (3) 法人が解散した場合
法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、清算中に終了する事業年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額から法第57条第1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)又は第58条第1項(青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により清算中に終了する事業年度において損金算入される欠損金額を控除した金額(事業年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、その控除した金額からその資本金等の額を減算した金額)をその事業年度の損金に算入する(法59③、令118)。 - (4) 欠損金額からないものとする金額
(1)、民事再生等評価換えをする場合の(2)、(3)までの制度により所得の金額の計算上損金の額に算入される金額がある事業年度(以下「適用事業年度」という。)以後の各事業年度((3)の制度を適用する場合には、適用事業年度後の各事業年度)においては、適用事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額のうちその損金の額に算入される金額から成る部分の金額は、青色欠損金額及び災害損失欠損金額からないものとされる(法57⑤、58③)。
この「損金の額に算入される金額から成る部分の金額」とは、適用事業年度の損金算入額が未使用欠損金額のうち最も古い事業年度において生じたものから順次成るものとした場合にその損金算入額に相当する金額を構成するものとされた未使用欠損金額があることとなる事業年度ごとにその事業年度の未使用欠損金額のうちその損金算入額に相当する金額を構成するものとされた部分に相当する金額をいう(法令112⑫、116の2④)。
(注)1 上記の「損金算入額」とは、次の①又は②の金額をいう。
- ① 適用事業年度において上記(1)の制度又は民事再生等評価換えを行う場合の(2)の制度の適用を受ける場合には、これらの制度によりその適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額が、設立当初からの欠損金額の合計額から青色欠損金額と災害損失欠損金額との合計額を控除した金額を超える場合の、その超える部分の金額
- ② 適用事業年度において(3)の制度の適用を受ける場合には、この制度によりその適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額
2 上記の「未使用欠損金額」とは、次の①又は②の金額をいう。
- ① 適用事業年度において上記(1)の制度又は民事再生等評価換えを行う場合の(2)の制度の適用を受ける場合には、青色欠損金額と災害損失欠損金額との合計額
- ② 適用事業年度において(3)の制度の適用を受ける場合には、青色欠損金額と災害損失欠損金額との合計額から、法人税法第57条第1項又は第58条第1項の規定によりその適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額を控除した金額