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1 有価証券の譲渡による損益
有価証券の譲渡による損益の額は、法第62条から第62条の5まで(合併等による資産の譲渡)の適用がある場合を除き、その譲渡契約をした日の属する事業年度の益金又は損金の額とする(法61の2①)。
備考
剰余金の配当等の事由により譲渡した場合における計上時期については、規27の3参照。
2 譲渡損益の計算
有価証券の譲渡による損益の額の計算は次による。
譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額-譲渡原価の額=譲渡損益の額
(注) 譲渡原価の額=有価証券一単位当たりの帳簿価額×譲渡した有価証券の数
備考
譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額は、みなし配当がある場合は、そのみなし配当を除いた金額となる。
3 取得価額
有価証券の取得価額は次による(令119)。
備考
この有価証券からは、繰延ヘッジ処理の規定の適用を受けないデリバティブ取引、信用取引又は発行日取引によって取得したものは除かれる。
株主等無償交付には、株式無償割当て、新株予約権無償割当て及び株式分割が該当する。
前期期末時とは、当該株式交換完全子法人の当該適格株式交換等の日の属する事業年度の前事業年度終了の時等をいう。
前期期末時とは、当該株式移転完全子法人の当該適格株式交換の日の属する事業年度の前事業年度終了の時等をいう。
取得請求権付株式とは、法61の2⑭一に規定するものをいう。
取得条項付株式とは、法61の2⑭二に規定するものをいう。
全部取得条項付種類株式とは、法61の2⑭三に規定するものをいう。
株式以外の資産からは、取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除く。
これら以外の資産からは、取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除く。
新株予約権付社債とは、法61の2⑭四に規定するものをいう。
取得条項付新株予約権とは、法61の2⑭五に規定するものをいう。
取得事由とは、法61の2⑭五に規定するものをいう。
分割信託及び承継信託とは、法61の2⑯に規定するものをいう。
一定の割合については、令119の8の4①参照。
4 一単位当たりの帳簿価額の算出の方法
有価証券を売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券又はその他有価証券に区分した後のそれぞれの銘柄ごとに次に掲げる方法により行う(令119の2)。
上記の満期保有目的等有価証券とは、次の有価証券をいい、その他有価証券とは、売買目的有価証券(
備考
保険会社、農業協同組合連合会又は共済水産業協同組合連合会の有する有価証券の区分については、令119の2③参照。
有価証券の評価替えをした場合等、移動平均法又は総平均法によっては平均単価の算出が困難な場合については、令119の3、119の4参照。
特殊関係株主等とは、その法人の株主等(株主又は持分会社の社員その他法人の出資者)及びその株主等と特殊の関係(法人税法施行令第4条の特殊の関係)その他これに準ずる関係にある者をいう。
〔算出の方法の選定及びその手続〕
移動平均法、総平均法の選定は、有価証券の区分ごとに、かつ、有価証券の種類ごとに行い、新しい区分又は新しい種類の有価証券を取得した場合には、申告期限(仮決算をして中間申告をする場合には、中間申告書の提出期限)までに届出を行わなければならない(令119の5)。
備考
算出方法の変更の手続については、令119の6参照。
(法定算出方法)
有価証券一単位当たりの帳簿価額の算出方法を選定しなかった場合又は選定した方法により算出しなかった場合には移動平均法とされる(令119の7①)。
5 合併の場合の譲渡対価の額
被合併法人の株式等(旧株)を保有していた法人株主が合併により旧株の対価として新株の交付を受けた場合(合併法人又は合併法人との間に合併法人の発行済株式若しくは出資の全部を直接若しくは間接に保有する一定の関係がある法人(親法人)のうちいずれかの法人の株式以外の資産の交付がない場合に限る。)又は旧株を発行した法人の特定無対価合併(その法人の株主等に合併法人の株式その他の資産が交付されなかった合併で、その法人の株主等に対する合併法人の株式の交付が省略されたと認められる合併をいう。)によりその旧株を有しないこととなった場合には、旧株の譲渡損益の額の計算における譲渡対価の額は、その旧株の合併又は特定無対価合併の直前の帳簿価額に相当する金額とする(法61の2②、令119の7の2①②)。
備考
合併法人の株式の交付が省略されたと認められる合併とは、法人税法施行令第4条の3第2項第2号ロに掲げる関係がある合併をいう(令119の7の2②)。
6 合併法人の抱合株式に係る譲渡対価
合併法人の抱合株式に係る譲渡損益の計算については、その譲渡対価は、その抱合株式の合併の直前の帳簿価額に相当する金額とする(法61の2③)。
備考
抱合株式とは、合併法人が合併の直前に有していた被合併法人の株式等をいう(法24②)。
7 分割型分割により新株等の交付を受けた場合の譲渡対価及び譲渡原価の額の計算
分割型分割により分割法人の株主等である法人が新株等の交付を受けた場合には、その法人が有する株式(所有株式)のうち分割型分割により分割承継法人に移転した資産及び負債に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして、その譲渡損益の計算をする(法61の2④、令119の7の2③、令119の8①)。この場合において、その分割型分割が金銭等不交付分割型分割(分割対価資産として分割承継法人又は分割承継法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する一定の関係のある法人(親法人)のうちいずれかの法人の株式以外の資産が交付されないもの)でないときは、分割法人の株主等の所有株式の譲渡原価は、所有株式の簿価に分割移転割合を乗じた金額(分割純資産対応帳簿価額)となり、金銭等不交付分割型分割のときは、分割法人の株主等の所有株式の譲渡対価と譲渡原価はいずれも分割純資産対応帳簿価額となる。
8 株式分配の場合の譲渡対価の額及び譲渡原価の額の計算
法人が所有株式を発行した法人の行った株式分配により完全子法人の株式その他の資産の交付を受けた場合には、当該所有株式のうち当該完全子法人の株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして、その譲渡損益の計算をする。この場合において、その株式分配(完全子法人の株式以外の資産が交付されなかったもの(金銭等不交付株式分配)を除く。)により完全子法人の株式その他の資産の交付を受けたときにおける譲渡損益の計算については、譲渡原価は完全子法人株式対応帳簿価額とし、その株式分配(金銭等不交付株式分配に限る。)により完全子法人の株式の交付を受けたときにおける譲渡損益の計算については、譲渡対価と譲渡原価はいずれもその所有株式の当該株式分配の直前の完全子法人株式対応帳簿価額とする(法61の2⑧、令119の8の2)。
9 組織再編成における新株予約権の譲渡対価
法人が、その有する新株予約権(新株予約権付社債を含む。以下「旧新株予約権等」という。)を発行した法人を被合併法人、分割法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人とする合併、分割、株式交換又は株式移転によりその旧新株予約権等に代えてその合併等に係る合併法人、分割承継法人、株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人の新株予約権(新株予約権付社債を含む。)のみの交付を受けた場合における譲渡対価は、その旧新株予約権等のその合併等の直前の帳簿価額に相当する金額とする(法61の2⑫)。
10 組織変更における株式等の譲渡対価
法人が旧株を発行した法人の行った組織変更に際してその法人の株式又は出資の交付を受けた場合における旧株の譲渡対価は、旧株の組織変更の直前の帳簿価額に相当する金額とする(法61の2⑬)。
備考
組織変更法人の株式又は出資以外の資産が交付されない場合には組織変更法人の資本金等の額及び利益積立金額の変動はないこととされ(令8①一ト)、組織変更法人の株式又は出資以外の資産が交付される場合にはみなし配当課税の対象となる(法24①七)。
11 取得請求権付株式等の請求権の行使等による株式の譲渡対価
法人がその有する次の株式のそれぞれの事由により譲渡をし、その譲渡により取得をする法人の株式又は新株予約権の交付を受けた場合の譲渡対価は、譲渡直前の旧株の帳簿価額に相当する金額とされる(法61の2⑭一~三)。
備考
みなし配当課税の適用も除外されており、発行法人側では資本金等の額及び利益積立金額は変動しない(法24①五、令8①一チ)。
取得請求権付株式の請求権の行使に伴い1株に満たない端数が生じる場合のその1株に満たない端数に相当する部分は、法61の2⑭一に規定する取得をする法人の株式に含まれる(令119の8の3)。
12 新株予約権付社債に付された新株予約権の行使等による社債の譲渡対価
法人が新株予約権付社債についての社債をその新株予約権付社債に付された新株予約権の行使により譲渡し、発行法人の株式の交付を受けた場合のその譲渡対価は、その新株予約権付社債の譲渡直前の帳簿価額に相当する金額とされる(法61の2⑭四)。
取得条項付新株予約権又は取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債に係る一定の事由の発生によりその取得の対価としてその取得をされる新株予約権者に発行法人の株式のみが交付される場合には、その取得条項付新株予約権又は新株予約権付社債の譲渡対価は、その取得条項付新株予約権又は新株予約権付社債の譲渡直前の帳簿価額に相当する金額とされる。(法61の2⑭五)。
備考
新株予約権の行使に伴い1株に満たない端数が生じる場合のその1株に満たない端数に相当する部分は、法61の2⑭四に規定する取得をする法人の株式に含まれる(令119の8の3)。
13 完全支配関係がある法人にみなし配当事由が生じた場合の譲渡対価
内国法人が、その有する株式を発行した他の内国法人でその内国法人との間に完全支配関係があるものからみなし配当の額が生ずる基因となる事由(法24①各号)により金銭その他の資産の交付を受けた場合等には、その譲渡対価となる金額は、その譲渡原価に相当する金額とする(法61の2⑰)。
14 資本の払戻し等の場合の譲渡原価の額
法人株主が資本の払戻し又は解散による残余財産の一部の分配として金銭等を取得し、保有株式の譲渡損益の額を計算する場合における譲渡原価の額は、その所有株式の払戻し等の直前の帳簿価額に法人税法施行令第23条第1項第4号に規定する割合(減少資本剰余金の額又は交付金銭等の額を払戻法人の前期期末時の簿価純資産価額で除して計算した割合(小数第三位未満の端数切上げ))を乗じて計算した金額とする(法61の2⑱、令119の9①)。なお、その払戻し等が出資等減少分配である場合には、その直前の帳簿価額に同項第5号に規定する割合(その出資等減少分配による出資総額等の減少額を投資法人のその出資等減少分配の日の属する事業年度の前々期末時の簿価純資産価額で除して計算した割合(小数第三位未満の端数切上げ))を乗じて計算した金額とする(令119の9①、措令39の32の3⑫)。
備考
資本の払戻しについては、法24①四を参照。
15 出資の払戻しの場合の譲渡原価の額
口数の定めがない出資に係る出資者である法人が、出資の払戻しにより金銭等を取得し、出資の譲渡損益の額を計算する場合における譲渡原価の額は、その払戻しの直前の出資の帳簿価額に、その払戻しの直前の出資の金額のうちにその払戻しに係る出資の金額の占める割合を乗じて計算した金額とする(法61の2⑲)。
16 有価証券の空売りに係る譲渡損益の額の計算
有価証券の空売りに係る譲渡損益は、売付けの対価の額から買戻しの対価の額を控除した額である。この場合の売付けの対価の額は、有価証券を空売りの方法により売付けをした有価証券(空売有価証券)を銘柄の異なるごとに区分し、銘柄の同じ空売有価証券について、売付けの直前の帳簿価額と売付けの時におけるその売付けにより通常得べき対価の額との合計額を空売有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その平均単価に買い戻した空売有価証券の数を乗じた額とする(法61の2⑳、令119の10①)。
この譲渡損益の額は、買戻しの契約をした日の属する事業年度に計上する(法61の2⑳)。
備考
有価証券の空売りとは、有価証券を有しないでその売付けをし、その後に銘柄を同じくする有価証券の買戻しをして決済する取引及び一定の取引をいう。この一定の取引については、規27の4参照。
17 信用取引及び発行日取引に係る譲渡損益の額の計算
信用取引及び発行日取引に係る譲渡損益は個別法により、売付けの対価の額から買付けの対価の額を控除した額とする(法61の2○21)。
この譲渡損益の額は、売付け又は買付けによる手仕舞の契約をした日の属する事業年度に計上する(法61の2○21)。
備考
発行日取引とは、有価証券が発行される前にその有価証券の売買を行う取引で、「金融商品取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」第1条第2項(定義)に規定する発行日取引をいう(規27の4②)。
18 信託の併合の場合の譲渡対価の額
法人が有していた集団投資信託の受益権(以下「旧受益権」という。)に係る信託の併合(当該集団投資信託の受益者に当該信託の併合に係る新たな信託の受益権以外の資産が交付されなかったものに限る。)により当該受益権の交付を受けた場合における譲渡の対価は当該旧受益権の当該信託の併合の直前の帳簿価額に相当する金額とする(法61の2⑮)。
19 信託の分割により受益権等の交付を受けた場合の譲渡原価の額の計算
法人が有していた集団投資信託の受益権(以下「旧受益権」という。)に係る信託の分割により承継信託(信託の分割により受託者を同一とする他の信託からその信託財産の一部の移転を受ける信託をいう。)の受益権等の交付を受けた場合には、当該旧受益権のうち当該信託の分割により当該承継信託に移転した資産及び負債に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして、その譲渡損益の計算をする(法61の2⑯、令119の8の4①)。この場合において、その信託の分割が金銭等交付分割(分割信託の受益者に承継信託の受益権以外の資産が交付されたもの)であるときは、分割信託の受益者の旧受益権の譲渡原価は、旧受益権の簿価に分割移転割合を乗じた金額(分割純資産対応帳簿価額)となり、金銭等交付分割以外のときは、分割信託の受益者の旧受益権の譲渡対価と譲渡原価はいずれも分割純資産対応帳簿価額となる。
20 有価証券の区分変更によるみなし譲渡
法人の所有する有価証券の所有区分の変更は、次の表の場合に限定されている。その区分変更が行われた場合には、その事実が生じた時において、その時における価額により、その有価証券は譲渡したものとみなされる。
ただし、次の表の②及び③イについては帳簿価額により譲渡したものとみなされる(法61の2○22、令119の11①②)。
〔区分変更の態様〕
変更前の区分 | 変更事由 | 変更後の区分 |
① 売買目的有価証券 | イ株式等保有割合が20%以上(令119の2②二に規定する場合)となったこと | 満期保有目的等有価証券 |
ロ短期売買業務(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で有価証券の売買を行う業務)の全部を廃止したこと | 変更事由が生じた時に取得するものとした場合に満期保有目的等有価証券に該当するものについては満期保有目的等有価証券、その他についてはその他有価証券 | |
② 満期保有目的等有価証券(株式等保有割合が20%以上の有価証券に限る。) | 株式等保有割合が20%未満となったこと | 変更事由が生じた時に取得するものとした場合に売買目的有価証券に該当するものについては売買目的有価証券、その他についてはその他有価証券 |
③ その他有価証券 | イ株式等保有割合が20%以上となったこと | 満期保有目的等有価証券 |
ロ法令の規定に従って新たに短期売買業務を行うこととなったことに伴い、当該その他有価証券を短期売買業務に使用することとなったこと | 売買目的有価証券 |
21 合併法人等が有する親法人株式のみなし譲渡
内国法人が、自己を合併法人等とする合併等の対価として親法人株式を交付しようとする場合において、その合併等に係る契約をする日(以下「契約日」という。)にその親法人株式を保有するとき、又は契約日後に一定の事由により移転を受けたときは、その契約日又は移転を受けた日において、当該親法人株式をその日の価額で譲渡し、かつ、その価額で取得したものとみなされる(法61の2○23)。
備考
親法人株式とは、合併等の直前に法人との間にその法人の発行済株式等(自己が有する自己の株式を除く。)の全部を直接又は間接に保有する関係がある法人に該当することが契約日において見込まれる法人の株式をいう。
一定の事由については、令119の11の2②参照。