税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

償却限度額

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1 一般原則

 一般の償却限度額は、各減価償却資産(各事業年度終了の時における確定した決算に基づく貸借対照表に計上されているもの及びその償却費として損金経理した金額があるものに限る。)につきその定められている耐用年数に応じ、減価償却資産の種類、構造、用途、細目又は設備の区分ごとに、かつ、耐用年数の異なるものについてはその異なるものごとに次の算式により計算した金額である(令4848の25861規19、耐用年数省令)。

 平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産

  • (1) 旧定額法の場合
     〔取得価額-法定残存価額〕×償却率=償却限度額
  • (2) 旧定率法の場合
     〔取得価額-累積償却額〕×償却率=償却限度額
  • (3) 旧生産高比例法の場合
     〔取得価額-法定残存価額〕×〔採掘数量/採掘予定総数量〕=償却限度額
  • (4) 旧国外リース期間定額法の場合
     〔取得価額-累積残存価額〕×〔当期におけるリース期間の月数/リース期間の月数〕

 なお、平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産のうち、建物、有形減価償却資産及び生物については、償却額の累計額が取得価額の95%相当額(生物については、財務省令に定める残存価額)に達した場合、その達した事業年度の翌事業年度以後において、次の算式による償却限度額の計算を行い、1円まで償却することができる(令61①②)。

 償却限度額=(取得価額-(取得価額×95%)-1)÷60×事業年度の月数

 平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産

  • (1) 定額法の場合
     取得価額×償却率=償却限度額
  • (2) 定率法の場合
    • ・調整前償却額(注)≧償却保証額 の場合
         (取得価額-累積償却額)×定率法の償却率=償却限度額
    • ・調整前償却額<償却保証額 の場合
         改定取得価額×改定償却率=償却限度額

    (注)
     償却保証額…減価償却資産の取得価額に耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額をいう(令48の2⑤)。
     調整前償却額…減価償却資産の取得価額に、耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額をいう(令48の2⑤)。
     改定取得価額…次の区分に応じて、それぞれに定める金額をいう(令48の2⑤)。
    • ① 減価償却資産の取得価額に、耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額が、償却保証額に満たない場合(前事業年度における調整前償却額が償却保証額以上である場合に限る。)…当該減価償却資産の取得価額
    • ② 連続する二以上の事業年度において減価償却資産の調整前償却額がいずれも償却保証額に満たない場合…連続する二以上の事業年度のうち最も古い事業年度等における取得価額
  • (3) 生産高比例法の場合
     取得価額×〔採掘数量/採掘予定総数量〕=償却限度額
  • (4) リース期間定額法の場合
     〔取得価額-残価保証額〕×〔当期におけるリース期間の月数/リース期間の月数〕

備考

償却限度額の計算は、平成20年改正前の旧耐用年数表の設備の種類の区分ごとに計算できることとされている(規19②)。

適格分割等(適格分割、適格現物出資又は適格現物分配をいう。)により減価償却資産を移転する場合には、その資産の期中損金経理額のうち、適格分割等の日の前日を事業年度終了の日とした場合に計算される償却限度額に相当する金額に達するまでの金額は、損金の額に算入する(法31②)。

償却費として損金経理した金額(リース資産につき、賃借人が賃借料として経理した金額を除く。)がある場合にはその償却限度額の明細(別表十六)を申告書に添付しなければならない(令63①)。この場合、各資産の種類ごとに、かつ、償却方法の異なるものごとに区分し、その区分ごとの合計額を記載したものによってすることができるが、計算、各資産別の明細を保存していなければならない(令63②)。

平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産で耐用年数の短縮特例を受けた資産の償却額の累計額が取得価額の95%相当額に達しているかどうかの判定をする場合の取得価額は、耐用年数の短縮特例の適用がないものとした場合に減価償却資産の償却限度額の基礎となる取得価額となる金額とされている(令61①一)。

特別償却額を損金経理の方法又は剰余金の処分による積立金として積み立てる方法によった特別償却準備金は、償却額の累計額に含めない。

無形減価償却資産のうち、漁業権及び工業所有権については、その存続期間の経過により償却すべきものであるから、その取得の日から事業の用に供したものとする(基通7-1-6)。

増加償却をする場合は所轄税務署長に所定の事項を記載した届出書を提出し、かつ、平均的使用時間を超えて使用したことを証する書類を備え付けておかなければならない(令60)。

増加償却の特例は、旧耐用年数省令に定める設備の種類(細目の定めのあるものは細目)ごとに適用する。ただし、二以上の工場がある場合には、各工場ごとに適用することができる(基通7-4-5)。

増加償却の特例は、中間事業年度において適用を受けている場合であっても、確定事業年度においては、改めて増加償却割合を計算し、増加償却の特例の適用を受けるものとする(基通7-4-6)。

機械及び装置の1日当たりの超過使用時間を計算する場合に、一の設備を構成する機械及び装置の中に他から貸与を受けている資産が含まれているときは、その資産の使用時間を除いたところで計算する(基通7-4-7)。

鉱業用減価償却資産に係る旧生産高比例法又は生産高比例法による償却限度額は、鉱業権については1鉱区ごと、坑道についてはその坑道ごと、その他の鉱業用減価償却資産については1鉱業所ごとに計算する(基通7-6-4)。

2 事業年度の中途で事業の用に供した場合

 事業年度の中途で事業の用に供した減価償却資産の償却限度額は、上記の償却限度額を基礎として、次の算式によって計算した金額による(令59①)。

  • (1) 旧生産高比例法又は生産高比例法以外の方法の場合
     償却限度額×(事業の用に供した日からその事業年度終了の日までの月数/その事業年度の月数)=改定償却限度額
     (月数は暦に従い1月未満の端数は1月とする。)
  • (2) 旧生産高比例法又は生産高比例法の場合
     償却限度額×(事業の用に供した後における採掘数量/その事業年度の採掘数量)=改定償却限度額

3 増加償却の場合

 機械及び装置(旧定額法、旧定率法、定額法又は定率法を採用しているものに限る。)の使用時間が、その事業の通常の経済事情における平均的な使用時間を超える場合には、使用時間の超過による損耗の程度に応じて算出される増加償却割合により、次のように計算される金額が償却限度額とされる(令60)。

 通常の計算による償却限度額×〔1+増加償却割合〕=改定償却限度額

 増加償却割合は、次の算式によって計算する(規20)。

 (35/1,000)×機械及び装置の1日当たりの超過使用時間=増加償却割合

  • (1) 増加償却割合について、小数点以下2位未満の端数があるときは、その端数を切り上げる。
  • (2) 増加償却割合が10%に満たない場合には、増加償却はできない(令60ただし書)。
  • (3) 「機械及び装置の1日当たりの超過使用時間」は、次の算式のいずれかによって計算した時間のうち法人の選択したものによる(規20②)。
      {個々の機械及び装置のその事業年度における平均超過使用時間×個々の機械及び装置の取得価額機械及び装置の取得価額の合計額}の合計時間
      個々の機械及び装置のその事業年度における平均超過使用時間の合計時間÷その事業年度終了の日における個々の機械及び装置の総数
     (注) 個々の機械及び装置のその事業年度における平均超過使用時間は、次の算式によって計算する。
       個々の機械及び装置の通常の経済事情における1日当たりの平均的な使用時間を超えてその事業年度に使用された時間の合計時間÷個々の機械及び装置のその事業年度において通常使用されるべき日数

4 堅牢な建物等の償却限度額の特例

 平成19年3月31日以前に取得をされた鉄骨鉄筋コンクリート造等、堅牢な建物又は構築物を有している場合において、当該資産の償却累積額が取得価額の95%に達しているときは、所轄税務署長の認定を受けて、次の金額を償却限度額とすることができる(令61の2)。

 {取得価額×(95/100)-1}×当期の月数残存使用可能期間の月数

5 特殊な減価償却資産の償却

 次の特殊な減価償却資産については、それぞれ特殊な方法によって減価償却をすることができる。

  • (1) 石炭鉱業におけるぼた山用の土地のように鉱業経営上直接必要な土地で鉱業の廃止により著しくその価値が減少するもの(基通7-6-2
  • (2) 土石又は砂利を採取する目的で取得した土地(基通7-6-3
  • (3) 牛馬果樹等の生物(基通7-6-13

6 償却累積額による償却限度額の特例の償却を行う資産の資本的支出

 令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定の適用を受けた減価償却資産について資本的支出をし、令第55条第2項《資本的支出の取得価額の特例》の規定を適用した場合には、当該資本的支出の金額を加算した後の取得価額及び帳簿価額を基礎として減価償却を行う(基通7-4-8)。

備考

令第61条の2第1項の備忘価額適用資産についても左の基通7-4-8のような取扱いが示されている(基通7-4-10)。

7 償却方法変更の場合の償却計算

  • (1) 償却方法について、旧定額法を旧定率法に変更した場合又は定額法を定率法に変更した場合には、その後の償却限度額(令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定による償却限度額を除く。)は、その変更した事業年度開始の日における帳簿価額又は当該減価償却資産に係る改定取得価額を基礎とし、当該減価償却資産について定められている耐用年数に応ずる償却率、改定償却率又は保証率により計算する(基通7-4-3)。
      この場合において、その減価償却資産について繰越控除される償却不足額があるときは、その償却不足額は、変更をした事業年度開始の日における帳簿価額から控除する(基通7-4-3(注))。
  • (2) 減価償却資産の償却方法について、旧定率法を旧定額法に変更した場合又は定率法を定額法に変更した場合には、その後の償却限度額(令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定による償却限度額を除く。)は、次の①に定める取得価額又は残存価額を基礎とし、次の②に定める年数に応ずるそれぞれの償却方法に係る償却率により計算する(基通7-4-4)。
    • ① 取得価額又は残存価額は、当該減価償却資産の取得の時期に応じて次のイ又はロに定める価額による。
      • イ 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、実際の取得価額の10%相当額を残存価額とする。
      • ロ 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなす。
    • ② 耐用年数は、減価償却資産の種類の異なるごとに、法人の選択により、次のイ又はロに定める年数による。
      • イ その減価償却資産について定められている耐用年数
      • ロ その減価償却資産について定められている耐用年数から採用していた償却方法に応じた経過年数(その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を実際の取得価額をもって除して得た割合に応ずる耐用年数に係る未償却残額割合に対応する経過年数)を控除した年数(その年数が2年に満たない場合には、2年)
  • (3) 鉱業用減価償却資産の償却方法について、旧生産高比例法を旧定額法に変更した場合又は生産高比例法を定額法に変更した場合には、その後の償却限度額(令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定による償却限度額を除く。)は、次の①に定める取得価額又は残存価額を基礎とし、次の②に定める年数に応ずるそれぞれの償却方法に係る償却率により計算する(基通7-6-5)。
    • ① 取得価額又は残存価額は、当該減価償却資産の取得の時期に応じて次のイ又はロに定める価額による。
      • イ 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、実際の取得価額の10%相当額(鉱業権及び坑道については、零)を残存価額とする。
      • ロ 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなす。
    • ② 耐用年数は、次の資産の区分に応じ、次に定める年数による。
      • イ 鉱業権(試掘権を除く。)及び坑道 その変更をした事業年度開始の日以後における採掘予定数量を基礎として耐用年数省令第1条第2項第1号、第3号又は第4号の規定により、税務署長が認定した年数
      • ロ イ以外の鉱業用減価償却資産 その資産について定められている耐用年数又は次の算式により計算した年数(その年数が2年に満たない場合には、2年)
          法定耐用年数×(その変更をした事業年度開始の日におけるその資産の帳簿価額/その資産の実際の取得価額)
  • (4) 鉱業用減価償却資産の償却方法について、旧定額法若しくは旧定率法を旧生産高比例法に変更した場合又は定額法若しくは定率法を生産高比例法に変更した場合には、その後の償却限度額(令第61条第2項《減価償却資産の償却累積額による償却限度額の特例》の規定による償却限度額を除く。)は、当該減価償却資産の取得の時期に応じて次に定める取得価額、残存価額又は残存耐用年数を基礎として計算する(基通7-6-7)。
    • ① 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、実際の取得価額の10%相当額(鉱業権及び坑道については、零)を残存価額として当該減価償却資産の残存耐用年数(当該減価償却資産の属する鉱区の当該変更をした事業年度開始の日以後における採掘予定年数がその残存耐用年数より短い場合には、当該鉱区の当該採掘予定年数。)を基礎とする。
    • ② 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産 その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、当該減価償却資産の残存耐用年数を基礎とする。

備考

旧生産高比例法を旧定率法に変更した場合又は生産高比例法を定率法に変更した場合は、その後の償却限度額は左の6(1)に準ずる(基通7-6-6)。

左記②ロに定める経過年数の計算は、規則第19条の規定により一の償却計算単位として償却限度額を計算する減価償却資産ごとに行う。また、その減価償却資産について償却不足額があるときは、その償却不足額は、変更をした事業年度開始の日における帳簿価額から控除する(基通7-4-4(注))。

左の場合の残存耐用年数は、(2)の②のロ及び基通7-4-4の2に準じて計算する(基通7-6-7(注))。

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