税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

特別な場合の計上時期

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1 変動対価

 資産の販売等に係る契約の対価について、値引き、値増し、割戻しその他一定の事実により変動する可能性がある部分の金額(以下「変動対価」という。)がある場合(当該値引き等の事実が損金不算入費用等に該当しないものである場合に限る。)において、次に掲げる要件の全てを満たすときは、(2)により算定される変動対価につき法第22条の2第1項又は第2項に規定する事業年度(以下「引渡し等事業年度」という。)の確定した決算において収益の額を減額し、又は増額して経理した金額は、引渡し等事業年度の引渡し時の価額等の算定に反映するものとする(基通2-1-1の11)。

  • (1) 値引き等の事実の内容及び当該値引き等の事実が生ずることにより契約の対価の額から減額若しくは増額をする可能性のある金額又はその金額の算定基準が、当該契約等により相手方に明らかにされていること又は当該事業年度終了の日において内部的に決定されていること。
  • (2) 過去における実績を基礎とする等合理的な方法のうち法人が継続して適用している方法により(1)の減額若しくは増額をする可能性又は算定基準の基礎数値が見積もられ、その見積りに基づき収益の額を減額し、又は増額することとなる変動対価が算定されていること。
  • (3) (1)を明らかにする書類及び(2)の算定の根拠となる書類が保存されていること。

備考

引渡し等事業年度における資産の販売等に係る収益の額につき、その引渡し等事業年度の収益の額として経理していない場合において、その後の事業年度の確定した決算において行う受入れの経理は、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って行う修正の経理には該当しない(基通2-1-1の11(注)2)。

(売上割戻しの計上時期)

 販売した棚卸資産に係る売上割戻しについて上記変動対価の取扱いを適用しない場合には、当該売上割戻しの金額をその通知又は支払をした日の属する事業年度の収益の額から減額する(基通2-1-1の12)。

(一定期間支払わない売上割戻しの計上時期)

 法人が売上割戻しについて上記変動対価の取扱いを適用しない場合において、当該売上割戻しの金額につき相手方との契約等により特約店契約の解約、災害の発生等特別な事実が生ずる時まで又は5年を超える一定の期間が経過するまで相手方名義の保証金等として預かることとしているため、相手方がその利益の全部又は一部を実質的に享受することができないと認められる場合には、その売上割戻しの金額については、上記売上割戻しの計上時期にかかわらず、これを現実に支払った日(その日前に実質的に相手方にその利益を享受させることとした場合には、その享受させることとした日)の属する事業年度の売上割戻しとして取り扱う(基通2-1-1の13)。

2 返品等の計上時期

 商品等の返品の金額は、返品の発送があった旨の通知を受けた日(返品について承諾を必要とする場合には、承諾をした日)を含む事業年度の総売上高から控除する。ただし、継続して商品等の返品の金額を、商品等を返品として受け取った日を含む事業年度の総売上高から控除している場合には、その経理が認められる。

(注) 上記の返品には、当初の販売商品等に物的なかし等があるという理由で、他の商品等と取り替える場合の返品を含まない(返品予想額についての返品調整引当金勘定の損金算入は554頁参照)。

3 委託販売に係る損益の計上時期

 委託販売に係る収益の額は、その委託品について受託者が販売した日を含む事業年度の益金に計上する。ただし、受託者からその委託品についての売上計算書が売上げのつど作成され送付されている場合には、継続してその収益をその売上計算書の到達した日において収益計上を行っているときは、当該到達した日は、その引渡しの日に近接する日に該当するものとして、この方法が認められる(基通2-1-3)。

備考

受託者が週、旬、月を単位として一括して売上計算書を作成している場合でも、それが継続して行われている場合には、左のただし書によることができる(基通2-1-3(注))。

4 割賦販売等による損益の計上時期

 割賦販売等に係る商品の販売収益等についても通常の商品の販売と同様、商品の販売等を行った事業年度の益金及び損金に算入される。ただし、契約により販売代価と賦払期間中の利息に相当する金額とが明確、かつ、合理的に区分されているときは、その利息相当額をその割賦販売に係る収益の額に含めないことができる(旧基通2-4-11)。

備考

左記の規定は平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売(リース譲渡を除く。)を行った法人について、令和5年3月31日までに開始する各事業年度について適用される(平成30年改正法附則28)。

5 リース譲渡による損益の計上時期

 賃貸借期間中に途中解除することができない等所定の要件を満たすリース取引の目的となる資産の引渡し(以下「リース譲渡」という。)を行った場合には、延払基準により収益及び費用を計算する特例を適用することができる。

 また、リース譲渡を行った場合には、その対価の額を利息に相当する部分(対価の額から原価の額を控除した金額の20%相当額)とそれ以外の部分とに区分した場合におけるリース譲渡の日の属する事業年度以後の各事業年度の収益の額及び費用の額として計算される一定の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、益金及び損金に算入される(法63②)。なお、リース譲渡については679頁以降参照。

備考

法人が関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律の規定による国土交通大臣の承認を受けて特定空港運営事業に係る公共施設等運営権を設定した場合には、その設定は、リース譲渡とみなして左記の延払基準により収益及び費用を計算する特例を適用することとされている(措法67の5の268の102の2)。

6 長期割賦販売等による損益の計上時期

 平成30年度税制改正により、本特例の対象となる資産の販売等がリース譲渡に限定されたことに伴い、リース譲渡を除き、平成30年4月1日以後に終了する事業年度について、原則として長期割賦販売等に該当する資産の販売等をした場合は、その引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度において、益金の額及び損金の額に算入する(平成30年改正法附則19)。

 ただし、平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等(リース譲渡を除く。)を行った法人等について、令和5年3月31日までに開始する各事業年度について改正前の規定により収益の額及び費用の額を計算することができることとするとともに、平成30年4月1日以後に終了する事業年度においてその計算をやめた場合の未計上収益額及び未計上費用額を10年均等で計上する等の経過措置が講じられている(平成30年改正法附則28、33)。

〔長期割賦販売等の意義〕

 長期割賦販売等とは、資産の販売等で次の要件の全てに適合する条件を定めた契約に基づき行われるもの及びリース譲渡をいう(旧法63⑥、旧令127)。

  • (1) 月賦、年賦その他の賦払いの方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること
  • (2) その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が2年以上であること
  • (3) その契約において定められているその資産の販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の合計額が、その資産の販売等の対価の額の3分の2以下となっていること

備考

月賦、年賦その他の賦払いの方法とは、支払を受けるべき金額の支払期日(いわゆる履行期日)が頭金の履行期日を除き、月、年等年以下の期間を単位としておおむね規則的に到来し、かつ、それぞれの履行期日に支払を受けるべき金額が相手方との当初の契約において具体的に確定している場合のその賦払いの方法をいう(旧基通2-4-1)。

長期割賦販売等には、次に掲げる金額の受領に係る取引で長期割賦販売等の要件に該当するものが含まれる(旧基通2-4-2)。

  • ① 借地権又は地役権の設定の対価として支払を受ける権利金その他の一時金の額で令第138条第1項(借地権の設定等により地価が著しく低下する場合の土地等の帳簿価額の一部の損金算入)の規定の適用があるもの
  • ② 建物の賃貸借契約に際して支払を受ける権利金その他の一時金の額
  • ③ ノウハウの設定契約に際して支払を受ける一時金又は頭金の額

〔延払基準の意義〕

 延払基準とは、リース譲渡について、その対価の額とそれに対応する部分の原価の額を対価の収入に応じて各事業年度に計上する方法をいう(令124①一)。

 具体的には、次の算式により計算した金額を当期の収益の額及び費用の額とする方法が延払基準である。

{リース譲渡の対価の額及びリース譲渡の原価(手数料を含む)の額}×{(賦払金割合)分母の金額に係る賦払金であって当期中に支払期日の到来するものの額*/リース譲渡の対価の額}

*当期中に支払期日の到来するものの額=当期中に支払期日の到来したものの合計額-左のうち前期末までに支払を受けた金額+当期中に支払を受けた金額で翌期以後に支払期日の到来するもの

 なお、次のイ及びロに掲げる金額の合計額を当該事業年度の収益の額とし、ハに掲げる金額を当該事業年度の費用の額とする方法も、延払基準の方法とされる(令124①二)。

  • イ そのリース譲渡の対価の額から利息相当額(そのリース譲渡の対価の額のうちに含まれる利息に相当する金額をいう。)を控除した金額(ロにおいて「元本相当額」という。)をリース資産のリース期間の月数で除し、これに当該事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額
  • ロ そのリース譲渡の利息相当額がその元本相当額のうちその支払の期日が到来していないものの金額に応じて生ずるものとした場合に当該事業年度におけるリース期間に帰せられる利息相当額
  • ハ そのリース譲渡の原価の額をリース期間の月数で除し、これに当該事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額

備考

延払基準の適用は資産の販売等ごとに行うのを原則とするが、差益率の同じものごとなどの一括計算も認められる(基通2-4-5)。

履行期日前に受領した手形の金額は、令第124条第2項に規定する「支払を受けた金額」には含まれない(基通2-4-7)。

相手方の代金の支払遅延等の理由により契約を解除して賦払期間(リース取引にあっては、リース期間)の中途においてその販売した資産を取り戻した場合には、原則として、その取り戻した事業年度において、まだ支払の行われていない賦払金の額の合計額からその金額のうちに含まれる延払損益を除外した金額(リース取引にあっては、まだ支払の行われていないリース料の額の合計額からその金額のうちに含まれる利息に相当する金額を控除した金額)をもって資産に計上する。ただし、その合計額(リース取引にあっては、まだ支払の行われていないリース料の額の合計額)又は取り戻した時における処分見込価額をもって資産に計上することができる(基通2-4-8)。

〔延払基準の適用方法等〕

 延払基準の適用については、次による。

  • (1) 延払損益の計算においては、次による。
    • ① 手数料(役務の提供に要した手数料を含む。)には、外部に支払う販売手数料のほか使用人である外交員等に対して支払う歩合給、手数料等で所得税法第204条の報酬等に該当するものも含まれるが、支払うべき手数料の額が賦払金の回収のつどその回収高に応じて確定することとなっている場合(頭金又は一定回数までの賦払金の回収を条件として手数料の額が確定することとなっている場合を除く。)の手数料を含まないものとする(基通2-4-3)。
        この取扱いにより延払損益の計算の基礎となる手数料に含めないものは、その額が確定するつど損金の額に算入することになる(基通2-4-3(注))。
    • ② 頭金等として相手方の有する中古品を下取りした場合に、その中古品についてその取得の時における価額を超える価額を取得価額としているときは、その超える部分は取得価額に含めないこととし、その超える部分の金額は、値引販売等したものとする(基通2-4-6)。

〔契約の変更等があった場合の取扱い〕

  • (2) 契約の変更があり、賦払金の支払期日又は各支払期日ごとの賦払金の額が異動した場合には、その変更後の支払期日又は各支払期日ごとの賦払金の額により延払基準の計算を行う。ただし、その変更前に既に支払期日が到来した賦払金の額についてはこの限りではない(基通2-4-9)。
  • (3) 対価の額又は原価の額につきその後値増し、値引き等があったためリース譲渡に係る対価の額又は原価の額に異動を生じた場合には、異動事業年度以後の各事業年度における対価の額又は原価の額に係る延払基準の方法の適用については、異動後の対価の額又は原価の額(異動事業年度前の各事業年度において計上した部分の金額を除く。)及び異動事業年度開始の日以後に受けるべき賦払金の額の合計額を基礎としてその計算を行う。ただし、その値増し、値引き等に係る金額をこれらの事実の生じた日の属する事業年度の益金又は損金に算入するとともに、延払基準の方法についてはその異動前の契約に基づいてその計算を行うこととしているときは、この方法が認められる(基通2-4-10)。

7 商品等の試用販売による売上高の計上の時期

 商品等の試用販売による売上金額は、相手方が購入の意思を表示した日を含む事業年度の総売上高に算入する。

 積送し、又は配置した商品等について、相手方が一定期間内に返品又は拒絶の意思を表示しない限り、契約又は商慣習によりその販売が確定することとなっている場合においては、その商品等の試用販売による売上金額は、その一定期間の満了の日を含む事業年度の総売上高に算入する。

 配置売薬のように、配置員が多数の得意先を巡回して一定量の商品等を配置し、その後配置員が各得意先を巡回した際に、直前の巡回の時からその巡回の時までの間における得意先の購入の意思を一括して確認し、その確認できた商品等に係る代金を請求するような商品等の試用販売による売上金額については配置員が得意先の購入の意思を確認した日を含む事業年度の総売上高に算入する。

8 予約販売等による売上高の計上時期

 商品の予約販売による売上金額については、商品等を相手方に引き渡した日を含む事業年度において、その引き渡した商品等に係る部分の金額を総売上高に算入する。

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