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所有する固定資産が滅失(損壊を含む。)したことにより保険金等を受けた場合に、その保険金等によって滅失等した資産と同種類の資産(代替資産)の取得(所有権移転外リース取引による取得を除く。)をしたときは、その代替資産の帳簿価額を滅失した資産の帳簿価額まで圧縮することができる。これを保険差益の圧縮記帳という(法47①、令84の2)。
保険金等というのは、固定資産の滅失又は損壊により、その滅失があった日から3年以内に支払の確定したもので、次のものをいい、その滅失等により支出した経費があるときは、その経費を控除した残額をいう(令84①)。
備考
保険に付している資産について保険事故又は共済事故が発生した場合のその資産の滅失に係る損失の額は、保険金等(損害賠償金のみである場合を除く。)の額が確定するまで仮勘定として損金に算入しない(基通10-5-2)。
損壊した固定資産若しくは代替資産となるべき資産の改良も、代替資産の取得に含むこととされている。
滅失した固定資産に帳簿価額がない場合でも、保険金等の支払を受けたときは圧縮記帳の適用がある。この場合代替資産の帳簿価額は0円となるが備忘価額の1円を付することとなる(令93)。
1 保険金を受け取った年度に代替資産を取得した場合
滅失した資産について保険金等を受け取った日を含む事業年度において、その保険金等の全部又は一部により滅失等した資産と同一種類の固定資産(代替資産)を取得した場合に、その固定資産について次の算式によって計算した金額の範囲内でその帳簿価額を損金経理(積立金を積み立てる方法を含む。)で減額したときは、その減額した金額は、損金に算入する。すなわち、取得した資産について差益相当額について圧縮記帳をすることができる(法47①、令85)。
損金経理できる金額=保険差益の額×(保険金等の額のうち代替資産の取得又は改良に充てた金額/保険金等の額(A))
保険金等の額(A)=支払われた保険金等の額-固定資産の滅失又は損壊により支出した経費の額
保険差益の額=保険金等の額(A)-滅失又は損壊した固定資産のその滅失等の直前の帳簿価額×被害相当部分の割合
〔例1〕滅失した資産の帳簿価額300万円
取得した保険金額505万円
代替資産の取得価額500万円
滅失により支出した経費5万円
505万円-5万円=500万円(保険金等の額)
500万円-300万円×100%=200万円(保険差益)
200万円×(500万円/500万円)=200万円〔圧縮記帳による損金算入額〕
500万円-200万円=300万円〔代替資産の記帳価額〕
備考
控除する経費は滅失した資産の取壊費、焼け跡の整理費、消防費等が含まれ、類焼者に対する賠償金、けが人への見舞金、被災者への弔慰金等は含まれない(基通10-5-5)。滅失した資産に減価償却超過額がある場合にはその超過額を帳簿価額に加算して計算する。保険金等の差益の計算は、各災害ごとに、かつ資産の種類ごとに計算する。
代替資産の帳簿価額を圧縮限度額を超えて減額したときは、その超過額は、その資産について減価償却費として損金経理をしたものとされる(基通7-5-1(2))。
2 保険金を受け取った年度の翌事業年度以後に代替資産を取得する場合
所有する資産が滅失した場合で、取得指定期間内に保険金等の額の全部又は一部で代替資産を取得する見込みである場合には、保険差益相当額以内の金額を、特別勘定を設ける方法により経理したときは、その金額をその事業年度の損金に算入する(法48①)。
保険差益特別勘定を設けた法人が、取得指定期間内に保険金等で代替資産を取得した場合には、代替資産の取得価額を圧縮記帳して保険差益相当額を損金算入するとともに、その取得に充てた保険金等の額に係る保険差益相当額の特別勘定を取り崩して益金に算入しなければならない(法48②、49①)。
〔例2〕滅失した資産の帳簿価額300万円
取得した保険金額505万円
滅失により支出した経費5万円
被害のあった年度において取得した
代替資産の取得価額300万円
差引保険金の残金200万円
特別勘定として経理できる額
505万円-5万円=500万円(保険金等の額)
500万円-300万円×100%=200万円(保険差益の額)
200万円×(200万円/500万円)=80万円〔特別勘定として経理できる額〕
(注) 翌事業年度に代替資産を200万円で取得した場合は、その帳簿価額は120万円となる(令91)。特別勘定を設けている法人が、代替資産を取得しても圧縮記帳しない場合又は圧縮額以上の帳簿価額をつけたときは、課税されることになる。
備考
取得指定期間とは、保険金等の支払を受ける事業年度終了の日の翌日から2年を経過した日の前日まで(災害等の特別の事情がある場合には延期ができる。)の期間をいう(法48①、令88)。
保険差益の圧縮記帳及び保険差益特別勘定による経理は、申告書に記載しなければ損金算入の規定の適用はない(法47③、48④、49②)。
特別勘定を設けている法人は、代替資産を取得する場合のほか、次の場合に、特別勘定を取り崩さなければならない(令90)。