繰延資産の償却額として所得の計算上損金に算入されるのは、償却費として損金経理した額のうち償却限度額に達するまでの金額である(法32①)。適格分割等により分割承継法人等が繰延資産を引き継ぐ場合には、その資産の期中損金経理額のうち、適格分割等の日の前日を事業年度終了の日とした場合に計算される償却限度額相当額に達するまでの金額は損金の額に算入する(法32②③)。
償却限度額については次のとおりである(令64)。
- (1) 繰延資産のうち①創立費、②開業費、③開発費、④株式交付費及び⑤社債等発行費については、その帳簿価額(すなわち未償却残高)が償却限度額となる。
(注) 評価換え等が行われたことにより繰延資産の帳簿価額が減額された場合には、当該評価換え等が行われた事業年度後(当該評価換え等が期中評価換え等である場合には、当該期中評価換え等が行われた事業年度以後)は、当該繰延資産に係る既償却額には当該帳簿価額が減額された金額を含むものとする。 - (2) (1)以外の繰延資産については、次の算式によって計算した金額が償却限度額となる。
繰延資産の取得価額×(その事業年度の月数/効果の及ぶ期間の月数)=償却限度額
(期中支出の繰延資産については)
繰延資産の取得価額×(支出の日から事業年度終了の日までの月数/効果の及ぶ期間の月数)=償却限度額
(注) 評価換え等が行われたことにより繰延資産の帳簿価額が増減した場合には、当該評価換え等が行われた事業年度後(当該評価換え等が期中評価換え等である場合には、当該期中評価換え等が行われた事業年度以後)は、上記算式の一部を以下のように替えて計算した金額が償却限度額となる。
「繰延資産の取得価額」
→「繰延資産の評価換えの直後の帳簿価額」
「効果の及ぶ期間の月数」
→「未経過期間(効果の及ぶ期間のうち評価換え等が行われた事業年度終了の日後の期間(当該評価換え等が期中評価換え等である場合には、当該期中評価換え等が行われた事業年度開始の日(当該事業年度がその繰延資産となる費用の支出をする日の属する事業年度である場合には同日とし、適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた日の属する事業年度である場合には当該適格組織再編成の日とする。)以後の期間))の月数」 - (3) 少額な繰延資産(その支出した金額が20万円未満のもの)については、その支出の日を含む事業年度においてその全額を損金経理により処理することができる(令134)。ただし、支出した事業年度において全額損金経理しなかった場合には、その後の事業年度においては、通常の方法で償却することになる。
- (4) 繰延資産の償却については、次による。
- ① 固定資産を自己が便益を受ける公共的施設として提供した場合のその提供に係る繰延資産の額は、その固定資産の提供直前の帳簿価額によることができる(基通8-3-1)。
- ② 公共的施設の負担金等の繰延資産となるべき費用を分割して支払うこととしている場合には、たとえその総額が確定しているときであってもその総額を未払金に計上して償却することはできない。ただし、その分割して支払う期間が短期間(おおむね3年以内)である場合には、この限りでない(基通8-3-3)。
- ③ 繰延資産となるべき費用を支出した場合においてその費用が固定資産を利用するためのものであり、かつ、その固定資産の建設等の着手がされていないときは、その固定資産の建設等に着手した時から償却する(基通8-3-5)。
- ④ 繰延資産の償却限度額は、費目の異なるごとに、かつ、償却期間の異なるごとに計算する。ただし、継続して基通8-2-3の表の種類及び細目欄の区分ごとに、かつ、償却期間の異なるごとに繰延資産を区分して償却限度額を計算している場合には、これを認める(基通8-3-7)。
- ⑤ 繰延資産の支出の対象となった固定資産又は契約について滅失又は解約等があった場合には、その滅失又は解約等があった日の属する事業年度においてその繰延資産の未償却残額を損金の額に算入する(基通8-3-6)。
繰延資産に該当する支出費用を償却費以外の科目をもって損金に経理したときも償却したものとして取り扱う(基通8-3-2)。
支出した事業年度で全額を損金にできる。
20万円未満であるかどうかは、原則として、自己の便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置等のための支出費用については一つの設置計画又は改良計画ごとに支出する金額(2回以上分割して支出する場合には、その支出時に見積もられる支出金額の合計額)により、広告宣伝用資産の贈与費用については、1個又は1組ごとの支出費用の額により、その他の支出する費用については、契約ごとの支出額による(基通8-3-8)。
公共的施設又は共同的施設の設置又は改良に係る負担金で繰延資産となるべきものを支出した場合において、その負担金が次のいずれにも該当するときは、負担金として支出した金額は、その支出をした日の属する事業年度の損金に算入することができる(基通8-3-4)。
- (1) 負担金の額が、負担金に係る繰延資産の償却期間以上の期間にわたり分割して徴収されるものであること
- (2) 分割して徴収される負担金の額がおおむね均等額であること
- (3) 負担金の徴収がおおむねその支出に係る施設の工事の着工後に開始されること