税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

繰延資産の範囲

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

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 繰延資産の具体的なものは、次のとおりである(令14)。

  • (1) 創立費――法人の設立のために支出した費用(発起人に支払った報酬及び設立登記のために支出した登録免許税を含む。)で、法人の負担に帰すべき次のような費用をいう。
    • ① 定款、株式申込証、設立趣意書、目録見積等の作成費
    • ② 株式募集のための広告費
    • ③ 創立事務所の賃借料
    • ④ 設立事務に使用する使用人の給料、手当等
    • ⑤ 金融機関又は証券会社の取扱手数料
    • ⑥ 創立総会に関する費用その他法人の設立のために要する費用
  • (2) 開業費――開業のための広告宣伝費及び接待費その他法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のため特別に支出した費用をいう。
  • (3) 開発費――新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出した費用をいう。
  • (4) 株式交付費――株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出した費用をいう。
  • (5) 社債等発行費――社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。
  • (6) 自己の便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用――これに該当する例としては、次のような費用がある(基通8-1-3)。
    • ① 自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物(以下公共的施設という。)の設置等のために要する費用(自己の利用する公共的施設につきその設置等を国等が行う場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金を含む。)又は自己の有する道路その他の施設又は工作物を国等に提供した場合におけるその施設又は工作物の価額に相当する金額
    • ② 国等の行う公共的施設の設置等により著しく利益を受ける場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金(土地所有者又は借地権を有する法人が土地の価格の上昇に基因して納付するものを除く。)
    • ③ 鉄道業を営む法人の行う鉄道の建設に当たり支出するその施設に連絡する地下道等の建設に要する費用の一部の負担金
  • (7) 自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用――これに該当する例としては、所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金がある(基通8-1-4)。
  • (8) 資産の賃借又は使用のために支出する権利金、立退料その他の費用――次のような費用はこれに該当する(基通8-1-5)。
    • ① 建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用
    • ② 電子計算機その他機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用
  • (9) 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用――これに該当する例としては、ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用がある(基通8-1-6)。
  • (10) 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用――これに該当する例としては、その特約店等に対し自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産(展示用モデルハウスのように見本としての性格を併せて有するものを含む。)を贈与した場合(その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合又はその贈与した資産の改良等に充てるために金銭等を贈与した場合を含む。)又は著しく低い対価で譲渡した場合におけるその資産の取得価額又はその資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額に相当する費用がある(基通8-1-8)。
  • (11) (6)から(10)までのほか、自己が便益を受けるために支出する費用――次のものが該当する。

備考

繰延資産につき償却費として損金経理した金額がある場合には、その償却限度額その他償却費の計算に関する明細書を申告書に添付しなければならない(令67①)。この場合、繰延資産の種類ごとに区分し、その区分ごとの合計額を記載したものによりすることができるが、その場合には、その明細書を保存しなければならない(令67②)。

(1)の支出費用の負担が定款等で定められていなくとも、その費用は創立費に該当するものとされている(基通8-1-1)。

国、地方公共団体、商店街等の行う街路の簡易舗装、街灯、がんぎ等の簡易な施設で主として一般公衆の便益に供されるもののために充てられる負担金は、これを繰延資産としないでその負担金を支出する日の属する事業年度の損金の額に算入することができる(基通8-1-13)。

鉄道業又は軌道業を営む法人を除く。

左の共同的施設の相当部分が貸室に供される等協会等の本来の用以外の用に供されているときは、その部分に対応する負担金は、協会等に対する寄附金となる(基通8-1-4)。

仲介手数料は損金とすることができる。

ノウハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合又は頭金の支払により一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、その頭金のうち使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に相当する部分の金額は、前払費用として処理することができる(基通8-1-6)。

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