評価減ができるのは、次の資産の区分に応じ、それぞれに述べる場合に該当したことによりその資産の価額が帳簿価額を下回ることになったとき(物損等の事実)及び更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実(法的整理の事実)が生じた場合に限られる。(法33②)。
- (1) 棚卸資産(令68①一)
- ① 災害により著しく損傷したこと
- ② 著しく陳腐化したこと――これに該当するのは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうから、例えば商品について次のような事実が生じた場合をいう(基通9-1-4)。
- (ア) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照して明らかであること
- (イ) その商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、その商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと
- ③ その他①又は②に準ずる特別な事実のある場合――これに該当するのは、例えば、破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになった場合をいう(基通9-1-5)。
- (2) 有価証券(令68①二)
- ① 取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、取扱有価証券、その他価格公表有価証券及びこれらの有価証券以外の一定の有価証券(企業支配株式を除く。)については、その価額が著しく低下したこと
- ② ①以外の有価証券及び企業支配株式に該当するものについて、その有価証券を発行する法人の資産の状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと――これに該当するのは、次のような事実がある場合をいう(基通9-1-9)。
- (ア) 取得後相当期間を経過した後その発行法人について、特別清算開始の命令があったこと、破産手続開始の決定があったこと、再生手続開始の決定があったこと、更生手続開始の決定があったこと
- (イ) 有価証券の1口又は1株当たりの現在価額が、1口又は1株当たりの従前の価額(取得時の価額)の50%以下に低下していること
- ③ その他②に準ずる特別の事実があった場合
- (3) 固定資産(令68①三)
- ① 災害により著しく損傷したこと
- ② その固定資産が1年以上にわたり遊休状態にあること
- ③ その固定資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
- ④ その固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
- ⑤ その他①から④までに準ずる特別の事実がある場合――この特別の事実がある場合とは、具体的には次の事実をいう。
- (ア) 固定資産についてやむを得ない事情によりその取得の時から1年以上使用しないため、その価額が低下したこと(基通9-1-16)
- (イ) 土地を賃貸し権利金その他の一時金を収受して長期間その土地を使用させるためその土地の価額が帳簿価額を下回ったこと(その価額が50%以上低下した場合には、令第138条により損金算入ができる(基通9-1-18))
- (4) 繰延資産(令68①四)
- ① 繰延資産のうち他の者の有する固定資産を利用するために支出したものについては、その支出対象となった固定資産について災害、1年以上にわたる遊休、用途変更又は立地条件の変化があったこと(前述の固定資産の①から④までの場合)
- ② その他①に準ずる特別の事実がある場合
金銭債権は物損等の事実及び法的整理の事実が生じた場合であっても、評価損の対象とはならない(法的整理の事実が生じた場合において金銭債権の帳簿価額を損金経理により減額したときは、貸倒引当金勘定への繰入額として取り扱う。)(基通9-1-3の2)。
法的整理の事実には、例えば、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより、同法の評定が行われることが該当する(基通9-1-3の3)。
棚卸資産の価額が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは評価減をすることはできない(基通9-1-6)。
評価減に代えて、補修用部品在庫調整勘定(基通9-1-6の2)又は単行本在庫調整勘定(基通9-1-6の8)を設定することができる。
有価証券の価額が著しく低下したことというのは、その有価証券のその事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額の50%以下となり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいう(基通9-1-7)。
上記は、非上場の有価証券及び企業支配株式にも準用される(基通9-1-11)。
上場有価証券等の価額については、基通9-1-8参照。
取得が2回以上にわたっている場合、増減資があった場合については、基通9-1-9(注)参照。
外国有価証券の発行法人の資産状態の判定については、基通9-1-10参照。
増資払込み後における株式の評価減は、原則として認められないが、相当期間経過後はその限りでない(基通9-1-12)。
評価減の制約を受ける固定資産には減価償却資産のほか、土地、借地権、書画骨とう、電話加入権等も含まれる。
固定資産の価額の低下が次のような事実に基づく場合には、評価損の計上は認められない(基通9-1-17)。
- (1) 過度の使用又は修理の不十分等により著しく損耗していること
- (2) 償却を行わなかったため償却不足額が生じていること
- (3) 取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと
- (4) 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること
上記については、耐用年数の短縮(495頁)が認められる場合がある。
減価償却資産の時価については、基通9-1-19参照。