税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

土地譲渡益に対する特別課税 一般の土地等の特別課税

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

税務研究会お試し

〈制度の概要〉

 法人が平成4年1月1日以後において土地の譲渡等をした場合には、その譲渡等(短期所有土地等の特別課税制度の適用があるものを除く。)に係る譲渡利益金額(譲渡収入から、取得価額及びその譲渡のために直接又は間接に要した経費の額を控除した金額)の合計額に対し、通常の法人税とは別に5%の税率による追加課税が行われる(措法62の3)。

 ただし、法人が平成10年1月1日から令和5年3月31日までの間にした土地の譲渡等については適用しない(措法62の3⑮)。

〈特例の対象となる譲渡又は資産〉

 課税の対象は、土地の譲渡等(短期所有土地等の特別課税制度の適用があるものを除く。)であり、土地の譲渡等とは、次のものをいう(措法62の3①②一、措令38の4①②)。

  • (1) 土地等の譲渡……国内の土地等(土地及び土地の上に存する権利)の譲渡(適格現物出資又は適格現物分配による移転を除く。)
     (注) 短期所有土地等の特別課税制度のように「他の者から取得した」ものに限定されていない。
  • (2) 合併等……合併(適格合併を除く。)又は分割(適格分割を除く。)による土地等の移転
  • (3) 賃借権の設定等……地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で、具体的には法人税法施行令第138条第1項(借地権の設定等により地価が著しく低下する場合の土地等の帳簿価額の一部の損金算入)の規定に該当する場合におけるその行為
  • (4) 仲介行為……土地等の売買又は交換の代理又は媒介に関し報酬を受ける行為で宅地建物取引業法の仲介報酬限度を超える報酬を受ける行為
  • (5) 株式等の譲渡……その有する資産が主として土地等である法人の発行する株式(投資口を含む。)又は出資の譲渡(適格現物出資、適格現物分配又は適格株式分配による移転を除き、合併(適格合併を除く。)又は分割(適格分割を除く。)による移転を含む。)で土地等の譲渡に類するもの
     (注) 短期所有土地等の特別課税において適用除外になるものについても、この制度において適用除外とならない限り課税されることに留意する必要がある。

<特別課税の適用除外>

 なお、棚卸資産に該当する土地等の譲渡については、一定の要件のもとに原則として適用除外とされている(措法62の3③、措令38の4⑨⑩)。

 また、法人が平成4年1月1日から令和4年12月31日までの間に土地等(棚卸資産に該当するものを除く。)の譲渡をした場合において、その土地等の譲渡が次に掲げるものに該当するとき(証明がされたものに限る。)は、この特別課税の適用除外とされる(措法62の3④⑤)。

  • 1 優良住宅地等のための譲渡(措法62の3④、措令38の4⑪~○32)。
      「優良住宅地等のための譲渡」は、個人に適用される優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2)の対象となる「優良住宅地等のための譲渡」と同様である。
  • 2 確定優良住宅地等予定地のための譲渡(措法62の3⑤、措令38の4○33~○36)
      土地等の譲渡で、その譲渡が一定の確定優良住宅地等予定地のためのもの

〈所得金額及び法人税額の計算〉

 特別課税による税額は、次により求める。

  譲渡利益金額の合計額×5%

(一) 譲渡利益金額の計算は、次による。

 土地の譲渡等に係る譲渡利益金額は、土地の譲渡等による収益の額から収益に係る原価の額及び土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額を控除した金額をいい、その概要は次のとおりである。

① 収益の額及び原価の額(措法62の3②、措令38の4③⑤)

譲渡等の収益の額譲渡等の原価の額
(1) 土地等の譲渡をした場合譲渡の時の時価(譲渡の日前3年以内の借地権の設定等で法人税法施行令第138条の規定に該当しないものを行い権利金等を収受している場合にはこれを加算する。)土地等の譲渡直前の帳簿価額(負債利子が算入されている場合には、それを除く。以下同じ。)
(2) 合併等をした場合合併等の時における土地等の価額合併等直前の帳簿価額
(3) 賃借権の設定等の場合賃借権の設定等の対価の額賃借権の設定等直前の土地等の帳簿価額×法人税法施行令第138条による損金算入割合
(4) 土地等の譲渡に準ずる仲介行為の場合仲介取引額(仲介した土地等の売買代金又は交換の時の時価をいう。)+受けた報酬の額仲介取引額
(5) 土地譲渡類似の株式等の譲渡をした場合株式若しくは出資又は受益権の譲渡の時の時価株式若しくは出資又は受益権の譲渡直前の帳簿価額

② 直接又は間接に要した経費の額の計算(措令38の4⑥~⑧)

(注) 適格組織再編成による土地等の移転があった場合には、土地等の取得日を引き継ぐ(措令38の4○39)。

  • (イ) 概算値による計算(原則)
    • (ⅰ) 負債利子…帳簿価額の累計額×6%
    • (ⅱ) 販売費及び一般管理費…帳簿価額の累計額×4%
       この「帳簿価額の累計額」は、次により求める。
      譲渡等をした資産の帳簿価額の累計額={譲渡等をした土地等・株式等の各期末又は譲渡等直前の帳簿価額×(その事業年度の保有期間の月数/12)}をその保有期間を通じて合計した金額
  • (ロ) 実績値による計算
      その土地等の譲渡前10年間分に限り(それ以前は概算値のみ)、法人がその事業年度においてした土地の譲渡等のすべてについて実際に支出したこれらの経費の額のうちその土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算して、法人税申告書に記載した場合には、(イ)の概算値に代えて、その合理的に計算した実績値によることが認められている。

③ 譲渡利益金額の減算及び加算

  • (ⅰ) 土地等の譲渡に係る圧縮記帳又は特別勘定の損金算入額や所得控除額は、譲渡利益金額から控除する。
  • (ⅱ) 特別勘定繰入額の損金算入額について(ⅰ)の減算を受けた場合において、その特別勘定につき指定期間経過等により益金に算入されたときは、その益金算入額は、その益金算入年度の譲渡利益金額に加算する(措法62の3⑩)。

(二) 他の制度との調整等

  • ① 同族会社の留保金課税に際しては、留保した金額から控除する法人税額には、この特別課税による税額が含まれる(措法62の3⑫)。
  • ② 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除等の各種の法人税額の特別控除の控除限度額の計算の基礎となる当期の法人税額(調整前法人税額)には、この特別課税による税額は含まれない(措法42の4⑧二ハ(令和4年4月1日以後は、措法42の4⑲二ハ))。
  • ③ 前年実績の2分の1相当額を中間納付する中間申告の場合には、前年の法人税額及び地方法人税額にこの特別課税による税額は含まれない。
  • ④ 仮決算をした場合の中間申告については、中間納付額にこの特別課税による税額が含まれる。
  • ⑤ 欠損金の繰戻し還付を行う場合の還付所得事業年度の法人税額及び地方法人税額には、この特別課税による税額は含まれない。
  • ⑥ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の場合及び仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の還付の場合の更正のあった事業年度開始の日前1年以内の事業年度の法人税額及び地方法人税額には、この特別課税による税額は含めない。

  • 税務通信

     

    経営財務