普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合には、その該当日の前日をもって解散したものとみなし、該当日に設立されたものみなして一定の制度を適用する。
また、解散したものとみなして適用をすることができない制度については、個別に規定が整備されている。
(1) 解散したものとして取り扱う制度
普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合には、該当日の前日に、当該普通法人又は協同組合等が解散したものとみなして、次のⅰからⅴまでの制度を適用する。
また、次のⅵからⅹまでの制度についても、これらに準じて課税関係を清算する取扱いとなっている(法10の3①、令14の11①)。
- ⅰ 欠損金の繰戻しによる還付(法80④)
該当日の前日前1年以内に終了した事業年度又は該当日の前日の属する事業年度において生じた欠損金について、繰戻し還付の規定の適用を受けることができる。 - ⅱ 連結欠損金の繰戻しによる還付(法81の31④)
上記ⅰと同様。 - ⅲ 国庫補助金等に係る特別勘定の金額の取崩し(令81)
該当日の前日において、その有している特別勘定の金額の全額を取り崩し、益金の額に算入する。 - ⅳ 保険差益等に係る特別勘定の金額の取崩し(令90)
上記ⅲと同様。 - ⅴ 連結納税を適用する場合の上記ⅲ又はⅳの規定(法81の3①)
上記ⅲ又はⅳと同様。 - ⅵ 貸倒引当金
該当日の前日の属する事業年度については、貸倒引当金勘定への繰入れを認めない(法52⑫)。 - ⅶ 繰り延べたデリバティブ取引等の決済損益額の計上時期等
ヘッジ対象資産等の決済等が行われていないときにおいても、繰り延べた決済損益額は、該当日の前日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する(令121の5①)。 - ⅷ リース譲渡に係る収益及び費用の額
延払基準の方法により繰り延べられていた収益の額及び費用の額の全額を、該当日の前日の属する事業年度の益金の額及び損金の額に算入する(令125③)。 - ⅸ 一括償却資産の損金算入
該当日の前日の属する事業年度において、一括償却資産の金額の残額を損金の額に算入する(令133の2⑤)。 - ⅹ 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入
該当日の前日の属する事業年度において、繰延消費税額等の残額を損金の額に算入する(令139の4⑩)。
令和4年4月1日以後の左記「法10の3①、令14の11①」は「法10①、令14の7①」となり、連結法人に係る規定は削除される。
欠損金の繰戻しによる還付の制度は、租税特別措置法において、中小企業者等以外の法人につきその適用が停止されているが、解散の場合、災害の場合には適用される(措法66の12①)。
(2) 設立したものとして取り扱う制度
普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなった場合には、該当日に公益法人等が設立されたものとみなして、次の規定を適用する(法10の3②、令14の11②)。
- ⅰ 青色欠損金及び災害損失金の繰越控除並びに会社更正等による債務免除等があった場合欠損金の損金算入(法57①、58①、59)
該当日の属する事業年度前の各事業年度から該当日の属する事業年度以後の事業年度への欠損金等の繰越しの適用はできない。 - ⅱ 欠損金の繰戻しによる還付(法80)
該当日の属する事業年度以後の事業年度から該当日の属する事業年度前の事業年度への欠損金の繰戻しはできない。 - ⅲ 受取配当の益金不算入制度における株式等に係る負債の利子の額(令22)
負債の利子の額の按分計算について、該当日の属する事業年度については、当該事業年度のみで計算する。
また、該当日の属する事業年度以後の事業年度においては、基準年度実績による簡便法は適用できない。 - ⅳ 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金制度における貸倒引当金勘定への繰入限度額(令96⑧)
貸倒実績率の計算について、該当日の属する事業年度は当該事業年度の実績により計算し、翌事業年度以後は該当日の属する事業年度以後の事業年度のみ合算する。
令和4年4月1日以後の左記「法10の3②、令14の11②」は「法10②、令14の7②」と、「法57①、58①、59」は「法57①、59」と、それぞれなる。
令和4年4月1日以後は、左記ⅲの記述は削除される。
(3) 適格合併の場合
普通法人又は協同組合等が、当該普通法人又は協同組合等を被合併法人とし、公益法人等を合併法人とする適格合併を行った場合には、適格合併に該当しない合併とみなして、それぞれの制度を適用する(法10の3⑤、令14の11③)。
令和4年4月1日以後の左記「法10の3⑤、令14の11③」は「法10⑤、令14の7③」となる。