法人税法上、信託については課税方法ごとに次のように区分される。
1 受益者等課税信託
次の2から5までのいずれにも該当しない信託をいう。受益者等課税信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、法人税法の規定を適用する(いわゆるパススルー課税)。また、信託の変更をする権限を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)は、受益者とみなされる(法12①②)。
備考
「信託の変更をする権限」からは、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り信託の変更をすることができる権限を除き、他の者との合意により信託の変更をすることができる権限を含む。また、停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者は、「信託財産の給付を受けることとされている者」に該当する(令15①~③)。
受益者等が二以上ある場合には、受益者等課税信託の信託財産に属する資産及び負債の全部をそれぞれの受益者がその有する権利の内容に応じて有するものとし、当該信託財産に帰せられる収益及び費用の全部がそれぞれの受益者にその有する権利の内容に応じて帰せられる(令15④)。
集団投資信託及び法人課税信託以外の信託の受益者である法人の信託による損失の額のうちその法人の信託財産の帳簿価額を基礎として計算した金額を超える部分の金額(一定の場合には、信託による損失の額の全額)は、損金の額に算入しない(措法67の12、68の105の2)。
2 集団投資信託
合同運用信託、証券投資信託等一定の投資信託及び特定受益証券発行信託をいう(法2二十九)。
法人が受託者となる集団投資信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用は、その法人の各事業年度の所得の金額及び各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、当該法人の資産及び負債並びに収益及び費用でないものとみなして、法人税法の規定を適用することとされる(法12③)。つまり、受託者段階では課税されず、受益者に信託収益が分配された段階で課税される。
備考
課税関係については、退職年金等信託及び特定公益信託等においても同様とされる。
合同運用信託の範囲について、委託者が実質的に多数でない信託は除外される(令14の2)。
集団投資信託の併合又は分割が行われた場合の受益者の課税関係については、法61の2⑮⑯参照。
〔特定受益証券発行信託〕
特定受益証券発行信託とは、信託法第185条第3項に規定する受益証券発行信託のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの(合同運用信託及び法人課税信託を除く。)をいう(法2二十九ハ)。
備考
承認受託者とは、信託事務の実施につき一定の要件に該当するものであることについて税務署長の承認を受けた法人とされる(令14の4①②)。承認受託者の承認を受けようとする法人は、一定の事項を記載した申請書を、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(令14の4③)。
承認受託者の承認を受けた法人は、その法人の各事業年度終了の日の翌日以後2月を経過する日までに、その法人が受託者である特定受益証券発行信託の各計算期間の貸借対照表その他の書類を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(令14の4⑨)。
3 法人課税信託
特定受益証券発行信託以外の受益証券発行信託、受益者等の存しない信託、法人が委託者となる一定の信託、集団投資信託に該当するもの以外の投資信託及び特定目的信託をいい、退職年金等信託及び特定公益信託は除かれる(法2二十九の二)。受託者段階で受託者の固有資産に帰属する所得とは区分して法人税が課税される。
備考
法人課税信託の詳細については
4 退職年金等信託
確定給付年金資産管理運用契約、確定給付年金基金資産運用契約、確定拠出年金資産管理契約、勤労者財産形成給付契約若しくは勤労者財産形成基金給付契約、国民年金基金若しくは国民年金基金連合会の締結した国民年金法第128条第3項若しくは第137条の15第4項に規定する契約又は厚生年金基金契約等に係る信託をいう(法12④一、令15⑤)。
5 特定公益信託等
特定公益信託及び社債、株式等の振替に関する法律第2条第11項に規定する加入者保護信託をいう(法12④二)。