税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)

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(1) 制度の概要

 特殊関係株主等と特殊関係内国法人との間にその特殊関係株主等がその特殊関係内国法人の発行済株式等の80%以上の株式等を間接に有する関係(特定関係)がある場合において、外国関係法人のうち、特定外国関係法人又は対象外国関係法人に該当するものの適用対象金額のうち特殊関係株主等である内国法人の有する特定外国関係法人又は対象外国関係法人の直接及び間接保有に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案した金額(課税対象金額)に相当する金額は、その特殊関係株主等である内国法人の収益の額とみなして各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する(措法66の9の2①)。

 また、特殊関係株主等である内国法人に係る部分対象外国関係法人(外国金融関係法人を除く。)が特定所得の金額を有する場合には、部分課税対象金額に相当する額も合算の対象となり(措法66の9の2⑥)、特殊関係株主等である内国法人に係る部分対象外国関係法人(外国金融関係法人に限る。)が特定所得の金額を有する場合には、金融関係法人部分課税対象金額に相当する額も合算の対象となる(措法66の9の2⑧)。

備考

「コーポレート・インバージョン」とは、内国法人が外国法人の子会社となる形態を生じさせる組織再編成等の一連の行為をいう。

(2) 用語の意義

 特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人の課税の特例に関する用語の意義は以下のとおりである。

  • (1) 特殊関係株主等
      特定株主等に該当する者並びにこれらの者と特殊の関係のある個人及び法人をいう(措法66の9の2①)。
  • (2) 特定株主等
      特定関係が生ずることとなる直前における特定内国法人の株式等を有する個人及び法人をいう(措法66の9の2②一)。
  • (3) 特定内国法人
      特定関係が生ずることとなる直前に5人以下の株主グループ(株主の5人以下及びこれらと特殊の関係のある個人及び法人)によって発行済株式等の総数又は総額の80%以上を保有される内国法人をいう(措法66の9の2②一)。
  • (4) 特殊関係内国法人
      特定内国法人又は合併、分割、事業の譲渡その他の事由により特定内国法人の資産及び負債のおおむね全部の移転を受けた内国法人をいう(措法66の9の2②二、措令39の20の3④)。
  • (5) 特定関係
      特殊関係株主等と特殊関係内国法人との間に特殊関係株主等の特殊関係内国法人に係る間接保有株式等保有割合が80%以上である関係がある場合におけるその関係をいう(措法66の9の2①)。
      この間接保有株式等保有割合とは、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれイ又はロの割合(イ及びロのいずれにも該当する場合には、イ及びロの合計割合)とされている(措令39の20の2④)。
    • ① 特殊関係内国法人の株主等である外国法人(特殊関係株主等に該当するものを除く。)の発行済株式等の80%以上が特殊関係株主等によって保有されている場合……その株主等である外国法人の有する特殊関係内国法人の株式数が特殊関係内国法人の発行済株式等のうちに占める割合(株主等である外国法人が二以上ある場合には、二以上の株主等である外国法人につきそれぞれ計算した割合の合計割合)
    • ② 特殊関係内国法人の株主等である法人(特殊関係株主等に該当するものを除く。)と特殊関係株主等との間にこれらの者と株式等の保有を通じて連鎖関係にある一又は二以上の法人(株主等である法人が内国法人であり、かつ、その一又は二以上の法人の全てが内国法人である場合のその一又は二以上の内国法人及び特殊関係株主等に該当する法人を除く。以下「出資関連法人」という。)が介在している場合(出資関連法人及び当該株主等である法人がそれぞれその発行済株式等の80%以上の数又は金額の株式等を特殊関係株主等又は出資関連法人(その発行済株式等の80%以上が特殊関係株主等又は他の出資関連法人によって保有されているものに限る。)によって保有されている場合に限る。)……株主等である法人の有する特殊関係内国法人の株式数が特殊関係内国法人の発行済株式等のうちに占める割合(株主等である法人が二以上ある場合には、二以上の株主等である法人につきそれぞれ計算した割合の合計割合)
  • (6) 特定外国関係法人 次の外国関係法人をいう(措法66の9の2②三)。
    • ① 次のいずれにも該当しない外国関係法人
      • イ 主たる事業を行うために必要な事務所等の固定施設を有している外国関係法人
      • ロ 本店所在地において事業の管理等を自ら行っている外国関係法人
      • ハ 外国子法人の株式等の保有を主たる事業とする外国関係法人で、その収入金額のうちに占める当該株式等に係る剰余金の配当等の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの
      • ニ 特定子法人の株式等の保有を主たる事業とする外国関係法人で、その本店所在地国を同じくする管理支配法人によってその事業の管理、支配及び運営が行われていること、当該管理支配法人がその本店所在地国で行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること、その収入金額のうちに占める当該株式等に係る剰余金の配当等の額及び当該株式等の譲渡に係る対価の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの
      • ホ その本店所在地国にある不動産の保有、その本店所在地国における石油その他の天然資源の探鉱、開発若しくは採取又はその本店所在地国の社会資本の整備に関する事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしている外国関係法人で、その本店所在地国を同じくする管理支配法人によってその事業の管理、支配及び運営が行われていること等の一定の要件に該当するもの
    • ② 総資産額に対する特定所得金額の割合が30%を超える外国関係法人(総資産額に対する有価証券、貸付金等の金額の割合が50%を超える外国関係法人に限る。)
    • ③ 次のいずれにも該当する外国関係会社
      • イ 各事業年度の非関連者等収入保険料の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が10%未満であること
      • ロ 各事業年度の非関連者等支払再保険料合計額の関連者等収入保険料の合計額に対する割合が50%未満であること
    • ④ 租税に関する情報交換への取組みが不十分な国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係法人
  • (7) 対象外国関係法人 次のいずれかに該当しない外国関係法人をいう(措法66の9の2②四)。
    • ① 株式等の保有、工業所有権等の提供又は船舶等の貸付けを主たる事業とするものでないこと
    • ② 本店所在地国において、事務所等の固定施設を有し、かつ、本店所在地国において事業の管理等を自ら行っていること
    • ③ 次の主たる事業の区分に応じて、それぞれ次の場合に該当すること
      • イ 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業…事業を特殊関係内国法人以外の者との間で行っている場合
      • ロ イの事業以外の事業…その事業を本店所在地国において行っている場合
  • (8) 部分対象外国関係法人
      上記「対象外国関係法人」の①~③の全てに該当する外国関係法人をいう(措法66の9の2②七)。
  • (9) 外国金融関係法人
      本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業又は保険業を行う部分対象外国関係法人でその本店所在地国において役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの等をいう(措法66の9の2②八)。
  • (10) 部分課税対象金額又は金融関係法人部分課税対象金額
      部分適用対象金額又は金融関係法人部分適用対象金額のうち、特殊関係株主等である内国法人の有する部分対象外国関係法人の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとして株式等の請求権の内容を勘案して計算した金額をいう(措法66の9の2⑥⑧)。

備考

内国法人が特定内国法人に該当するかどうかの判定については特定関係の発生の基因となる事実が生ずる直前の現況によるものとされ、その後に特殊関係株主等と特殊関係内国法人との間に当該特定関係があるかどうかの判定及び外国法人が外国関係法人に該当するかどうかの判定については特殊関係内国法人の各事業年度終了の時の現況による(措令39の20の9①)。

外国子法人とは、外国関係法人と本店所在地国が同じ外国法人で、その外国関係法人が有するその外国法人の株式の保有割合が25%以上であるなど一定の要件を満たす外国法人をいう。

特定子法人とは、特殊関係株主等である内国法人に係る他の外国関係法人で、部分対象外国関係法人に該当するなど一定の要件を満たす外国関係法人をいう。

管理支配法人とは、特殊関係株主等である内国法人に係る他の外国関係法人(部分対象外国関係法人に該当するものに限る。)で、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの等をいう。

非関連者等収入保険料とは、関連者(外国関係法人の特殊関係内国法人、特殊関係株主等その他これらの者に準ずる者をいう。)以外の者から収入する一定の収入保険料をいう。

非関連者等支払再保険料合計額とは、関連者以外の者に支払う再保険料の合計額を、収入保険料の合計額に対する非関連者等収入保険料以外の収入保険料の合計額の割合で按分した金額をいう。

(3) 合算対象となる外国法人の範囲

 合算課税の対象となる外国法人は、外国関係法人のうち特定外国関係法人、対象外国関係法人又は部分対象外国関係法人に該当するものとされている(措法66の9の2①⑥)。

(注) 外国関係法人とは、特殊関係株主等と特殊関係内国法人との間に特定関係がある場合に特殊関係株主等と特殊関係内国法人の間に介在する外国法人及びこれらの外国法人によって発行済株式等の50%超を直接又は間接に保有される外国法人をいう(措法66の9の2①、措令39の20の2⑤)。

(4) 課税対象所得の計算

 特殊関係株主等に係る外国関係法人が平成19年10月1日以後に開始する各事業年度において有する適用対象金額のうち、課税対象金額に相当する金額は、特殊関係株主等である内国法人の収益の額とみなして、特定外国関係法人又は対象外国関係法人の各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む特殊関係株主等である内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する(措法66の9の2①)。

 なお、課税対象金額は、適用対象金額に、特定外国関係法人又は対象外国関係法人の各事業年度終了の時における発行済株式等のうちにその特殊関係株主等である内国法人の有する特定外国関係法人又は対象外国関係法人の請求権勘案保有株式等の占める割合を乗じて計算する(措令39の20の2⑦)。

(注) 「請求権勘案保有株式等」とは、特殊関係株主等である内国法人が直接に有する特定外国関係法人又は対象外国関係法人の株式等の数(特定外国関係法人又は対象外国関係法人が請求権の内容が異なる株式等を発行している場合には、特定外国関係法人又は対象外国関係法人の発行済株式等に、その内国法人がその請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合を乗じて計算した数)及び請求権勘案間接保有株式等を合計した数をいう(措令39の20の2⑧一)。

 また、部分課税対象金額及び金融関係法人部分課税対象金額についても左記と同様(措法66の9の2⑥⑧)。

備考

適用対象金額とは、特定外国関係法人又は対象外国関係法人の各事業年度の基準所得金額から一定の欠損金額及び法人所得税の額を控除した残額をいう。

請求権勘案間接保有株式等とは、特殊関係株主等である内国法人と特定外国関係法人又は対象外国関係法人との間に株式等の所有を通じた連鎖関係にある一又は二以上の他の外国法人が介在する場合に、それぞれ全ての段階の持株割合を順次乗じて計算した割合を、特定外国関係法人又は対象外国関係法人の発行済株式等の総数に乗じて計算した数とされている(措令39の20の2⑧二)。

(5) 適用除外

 次の①又は②に掲げる外国関係法人につき、次の①又は②に定める場合に該当する事実があるときは、これらの外国関係法人のその該当する事実年度に係る適用対象金額については、本制度は適用されない(措法66の9の2⑤)。

  • ① 特定外国関係法人 各事業年度の租税負担割合(所得に対して課される租税の額のその所得の金額に対する割合。②において同じ。)が30%以上である場合
  • ② 対象外国関係法人 各事業年度の租税負担割合が20%以上である場合

(6) 外国子会社合算税制の適用の重複排除

 外国法人の株主等である内国法人について、外国子会社合算税制と本制度の双方の適用要件に該当する場合には、外国子会社合算税制の適用が優先される(措法66の9の2⑫)。

(7) 二重課税の調整

  • ① 課税対象金額に係る外国税額の控除
      外国関係法人の課税対象金額について合算課税を行う内国法人は、外国関係法人の所得に対して課された外国法人税のうち課税対象金額又は部分課税対象金額に対応する部分の金額は、内国法人が納付したものとみなして、外国税額控除の適用を受けることができる(措法66の9の3①)。
  • ② 外国関係法人から受ける剰余金の配当等の益金不算入
      特殊関係株主等である内国法人が持株割合25%以上等の要件を満たさない外国法人から受ける剰余金の配当等の額は、特定課税対象金額を限度として益金の額に算入しない(措法66の9の4①)。
  • ③ 外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける剰余金の配当等の額に係る取扱い
      特殊関係株主等である内国法人が外国法人から受ける剰余金の配当等の額(外国子会社配当益金不算入制度(法23の2①)の適用を受けるものに限ります。)のうち特定課税対象金額に達するまでの金額についての益金不算入額の計算については、その剰余金の配当等の額に係る費用相当額の控除をしないで計算する(措法66の9の4②)。なお、その外国法人から受けるその剰余金の配当等の額につきこの③の適用を受ける場合のその剰余金の配当等の額に係る外国源泉税等の額の損金算入については、その③の適用を受ける部分に対応する外国源泉税等の額に限られる(措法66の9の4⑭)。

備考

金融関係法人部分課税対象金額も左記の外国税額控除の対象となる(措法66の9の3①)。

(8) 財務諸表等の添付義務

 特殊関係株主等である内国法人は、確定申告書に特定外国法人の財務諸表等の書類を添付しなければならない(措法66の9の2⑪、措規22の11の2)。

(9) 外国信託に係る合算課税

 特殊関係株主等である内国法人が外国信託(投資信託及び投資法人に関する法律に規定する外国投資信託のうち租税特別措置法第68条の3の3第1項に規定する特定投資信託に類するものをいう。)の受益権を直接又は間接に保有する場合には、その外国信託の受託者を外国法人とみなして、本特例が適用される(措法66の9の2⑬⑭)。

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