その課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び当該課税仕入れ等の税額の控除に係る請求書等(金地金等の課税仕入れについては、その課税仕入れの相手方の本人確認書類(住民票の写し等)を含む。)の保存があることが適用要件とされており、これらの保存のない課税仕入れ又は課税貨物に係る税額については、税額控除の適用がない(法30⑦本文⑩)。
ただし、災害その他やむを得ない事情によって、保存をすることができなかったことを事業者において証明した場合は、この限りでない(法30⑦但書)とされているほか、請求書等の保存に関しては、以下のような特例措置が講じられている。
- (1) 課税仕入れに係る支払対価の合計額が3万円未満である場合には、請求書等の保存は要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみで足りる(法30⑦、令49①一)。
なお、3万円未満かどうかの判定は、1回の取引の課税仕入れに係る税込金額により判定するのであり、1商品ごとの税込金額等で判定するものではない(基通11-6-2)。 - (2) 課税仕入れに係る支払対価の合計額が3万円以上で請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合において、法定事項が記載された帳簿に当該やむを得ない理由及び相手方の住所又は所在地を記載しているときは、適用要件を満たしているものとして取り扱われる(法30⑦、令49①二)。
なお、この場合の「やむを得ない理由」とは、次の場合が該当する(基通11-6-3)。 - イ 自動販売機を利用して課税仕入れを行った場合
- ロ 入場券、乗車券、搭乗券等のように課税仕入れに係る証明書類が資産の譲渡等を受ける時に資産の譲渡等を行う者により回収されることとなっている場合
- ハ 課税仕入れを行った者が課税仕入れの相手方に請求書等の交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
- ニ 課税仕入れを行った場合において、その課税仕入れを行った課税期間の末日までにその支払対価の額が確定していない場合
なお、この場合には、その後支払対価の額が確定した時に課税仕入れの相手方から請求書等の交付を受け保存するものとする。 - ホ その他、これらに準ずる理由により請求書等の交付を受けられなかった場合
また、請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合においても、その相手方の住所が明らかな場合には、国税庁長官の指定により、その相手方の住所又は所在地の記載を省略することができることとされているが(令49①二)、その具体的範囲については、以下の事業者が指定されている(基通11-6-4)。 - イ 汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃(料金を含む。)を支払って役務の提供を受けた場合の一般乗合旅客自動車運送事業者又は航空運送事業者
- ロ 郵便役務の提供を受けた場合の当該郵便役務の提供を行った者
- ハ 課税仕入れに該当する出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当(出張旅費等)を支払った場合の当該出張旅費等を受領した使用人等
- ニ 消費税法施行令第49条第2項の規定に該当する課税仕入れを行った場合の当該課税仕入れの相手方
- (3) 特定課税仕入れに係るものである場合には、請求書等の保存は要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみで足りる(法30⑦、令49①三)。
なお、帳簿又は請求書等のいずれかを7年間保存する場合には、その余のいずれかは5年間の保存でよい(法30⑦~⑨、令50①、規15の3)。
課税仕入れに関する記録がない場合のほか、事業者が交際費、機密費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものについても仕入税額控除の適用を受けることができない(基通11-2-23)。
令和5年10月1日以降、次に掲げる課税仕入れについては、その課税仕入れを行った事業者において適格請求書等の保存を要せず、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除ができる(令49)。
- ① 適格請求書の交付義務が免除される一般旅客定期航路事業等の旅客の運送に係る課税仕入れ(3万円未満のものに限る。)
- ② 適格簡易請求書の要件を満たす入場券等が使用の際に回収される課税仕入れ
- ③ 古物営業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける古物等に係る課税仕入れ
- ④ 質屋を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から所有権を取得する質物に係る課税仕入れ
- ⑤ 宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける建物に係る課税仕入れ
- ⑥ 再生資源卸売業等を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から買い受ける再生資源又は再生部品に係る課税仕入れ
- ⑦ その他適格請求書等の交付を受けることが困難な一定の課税仕入れ
(注) 課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合に帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる措置については、廃止する。