1 資産の譲渡等
消費税法上、課税の対象とされる資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる次のものをいう(法2①八、令2)。
- ① 資産の譲渡……売買、交換等資産につきその同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいう(基通5-2-1)。
保証債務を履行するために行う資産の譲渡又は強制換価手続により換価された場合の資産の譲渡は該当するが、棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していた若しくは供すべき資産の廃棄、盗難若しくは滅失又は同業者団体、組合等の通常の業務運営の一環として発行され、その構成員に配付される会報等の発行は該当しない(基通5-2-2、5-2-3、5-2-13)。
なお、事業者が外注先等に対して外注加工に係る原材料を支給する場合において、その支給に係る対価を収受することとしているときは、その原材料の支給は、対価を得て行う資産の譲渡に該当するが、有償支給の場合であっても事業者がその支給に係る原材料を自己の資産として管理しているときは、その原材料の支給は、資産の譲渡に該当しない(基通5-2-16)。 - ② 資産の貸付け……地上権、地役権、特許権等の工業所有権に係る実施権若しくは使用権又は著作物に係る出版権の設定のほか、工業所有権等(工業所有権等の目的になっていないが、生産その他業務に関し繰り返し使用し得るまでに形成された創作を含む。)の使用、提供若しくは伝授又は著作物の複製、上演、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物を利用させる行為等資産を使用させる一切の行為をいう(基通5-4-1、5-4-2)。
事業者が、その有する宿舎、宿泊所、集会所、体育館、食堂その他の施設を、対価を得て役員又は使用人等に利用させる行為は、資産の譲渡等に該当する(基通5-4-4)。 - ③ 役務の提供……土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれる(基通5-5-1)。
「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等が反復、継続、独立して行われることをいい、例えば、個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合は該当しない(基通5-1-1)。
資産とは、取引の対象となる一切の資産をいうから、棚卸資産又は固定資産のような有形資産のほか、権利その他の無形資産が含まれる(基通5-1-3)。
事業者が債務の弁済の担保としてその有する資産を譲渡した場合において、その譲渡につき所得税基本通達33-2又は法人税基本通達2-1-18(譲渡担保に係る資産の移転等)の取扱いの適用を受けているときは、その取扱いの例による(基通5-2-11)。
事業者が行うリース取引が、そのリース取引の目的となる資産の譲渡若しくは貸付け又は金銭の貸付けのいずれに該当するかは、所得税又は法人税の課税所得計算における取扱いの例により判定する(基通5-1-9)。
(付随行為)
資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が含まれるから、例えば、事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる次のようなものが該当する(令2③、基通5-1-7)。
- (1) 職業運動家、作家、映画・演劇等の出演者等で事業者に該当するものが対価を得て行う他の事業者の広告宣伝のための役務の提供
- (2) 職業運動家、作家等で事業者に該当するものが対価を得て行う催物への参加又はラジオ放送若しくはテレビ放送等に係る出演その他これらに類するもののための役務の提供
- (3) 事業の用に供している建物、機械等の売却
- (4) 利子を対価とする事業資金の預入れ
- (5) 事業の遂行のための取引先又は使用人に対する利子を対価とする金銭等の貸付け
- (6) 新聞販売店における折込広告
- (7) 浴場業、飲食業等における広告の掲示
個人事業者の行う次に掲げるような資産の譲渡は、事業のために行うものであっても、「その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡」には含まれない(基通5-1-8)。
- (1) 事業用資金の取得のために行う家事用資産の譲渡
- (2) 事業用資産の仕入代金に係る債務又は事業用に借り入れた資金の代物弁済として行われる家事用資産の譲渡
(無償譲渡)
無償による資産の譲渡等は、課税の対象から除外されているが、代物弁済、負担付き贈与、法人課税信託等の委託者がその有する資産の信託をした場合における当該資産の移転、現物出資、受信料を徴して行われる送信、個人事業者の棚卸資産又はそれ以外の資産で事業用のものの家事のための消費又は使用及び法人のその所有資産のその役員に対する贈与等は、対価を得て行われた資産の譲渡等とされる(法2①八、4⑤、令2①)。
また、土地収用法等の法律の規定に基づき所有権その他の権利を収用され、その権利の消滅に係る補償金を取得した場合は、対価を得て資産の譲渡を行ったものとされる(令2②)。
事業者が、自己の広告宣伝又は試験研究等のために商品、原材料等の資産を消費し、又は使用した場合のその消費又は使用は、資産の譲渡に該当しない(基通5-2-12)。
(対価を得て行われた資産の譲渡等)
対価を得て行われる資産の譲渡等とは、資産の譲渡等に対して反対給付を受けることをいう(基通5-1-2)が、次のものは対価には該当しないとされる。
- ① 保険金又は共済金(これらに準ずるものを含む。)(基通5-2-4)
- ② 損害賠償金(基通5-2-5)
- ③ 容器保証金等(基通5-2-6)
- ④ 建物賃貸借契約の解除等に伴う立退料(基通5-2-7)
- ⑤ 剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配(基通5-2-8)
- ⑥ 自己株式(基通5-2-9)
- ⑦ 寄附金、祝金、見舞金等(基通5-2-14)
- ⑧ 事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項(定義)に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金(基通5-2-15)
- ⑨ 保証金、権利金、敷金又は更改料(更新料を含む。)のうち賃貸借契約の終了等に伴って返還することとされているもの(基通5-4-3)
- ⑩ 公有水面埋立法の規定に基づく公有水面の埋立てによる漁業権又は入漁権の消滅若しくはこれらの価値の減少に伴う対価補償金(基通5-2-10)
これに対し、同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等及びその構成員となる者から受ける入会金並びに公共施設の負担金、賦課金等については、役務の提供との間に明白な対価関係があるかどうかによって、対価に該当するかどうかを判定する(基通5-5-3、5-5-4、5-5-6)。なお、その判定が困難な会費等につき、受取る側が資産の譲渡等に係る対価に該当しないものとし、かつ、支払う側がその支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、その旨を構成員に通知することを条件に、その方法によることができる。
また、賞金又は賞品等については、その給付とその賞金等の対象となる役務の提供との間の関連性の程度により個々に判定するが、例えば次のいずれの要件をも満たす場合の賞金等は、対価に該当する(基通5-5-8)。
- (1) 受賞者が、その受賞に係る役務の提供を業とする者であること
- (2) 賞金等の給付が予定されている催物等に参加し、その結果として賞金等の給付を受けるものであること
損害賠償金のうち、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められる場合には、資産の譲渡等の対価に該当する(基通5-2-5)。
びん・缶又は収納ケース等(以下「容器等」という。)が返却されないことにより返還しないこととなつた保証金等の取扱いについては、次による(基通5-2-6)。
- (1) 当事者間においてその容器等の譲渡の対価として処理することとしている場合 資産の譲渡等の対価に該当する。
- (2) 当事者間において損害賠償金として処理することとしている場合 その損害賠償金は資産の譲渡等の対価に該当しない。
建物の賃借人たる地位を賃貸人以外の第三者に譲渡し、その対価として立退料等を収受した場合については、立退料等と称して収受したとしてもこれらは建物賃借権の譲渡に係る対価として受領されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当する(基通5-2-7)。
ゴルフクラブ、宿泊施設その他レジャー施設の利用又は一定の割引率で商品等を販売するなど会員に対する役務の提供を目的とする事業者が会員等の資格を付与することと引換えに収受する入会金(返還しないものに限る。)は、資産の譲渡等の対価に該当する(基通5-5-5)。
2 特定仕入れ
消費税法上、課税の対象とされる特定仕入れとは、事業者が事業として他の者から受けた次に掲げる資産の譲渡等(以下「特定資産の譲渡等」という。)をいう(法2①八の二~八の五、4①、令2の2)。
- ① 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供(資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供をいう。以下同じ。)のうち、その電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又はその役務の提供に係る取引条件等からその役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるもの(以下「事業者向け電気通信利用役務の提供」という。)
- ② 資産の譲渡等のうち、国外事業者が他の事業者に対して行う演劇等の役務の提供(不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除く。以下「特定役務の提供」という。)
「国外事業者」とは、非居住者である個人事業者及び外国法人をいう(法2①四の二)。
3 資産の譲渡等の場所
資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。)が次の場所で行われた場合は、国内取引となる(法4③、令6)。
- ① 資産の譲渡又は貸付け 資産の所在場所。ただし、次の資産については、イからカによる。
- イ 船舶 船舶の登録をした機関の所在地(居住者が行う日本船舶以外の貸付け又は非居住者が行う日本船舶の譲渡若しくは貸付けにあっては、その譲渡又は貸付けを行う者の住所又は事務所等の所在地とし、船舶の登録を受けていない船舶にあっては、その譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地。)
- ロ 航空機 航空機の登録をした機関の所在地(登録を受けていない航空機にあっては、その譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地)
- ハ 鉱業権、租鉱権、採石権等、樹木採取権 鉱区、租鉱区、採石場、樹木採取区の所在地
- ニ 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権又は育成者権(これらの権利を利用する権利を含む。) これらの権利の登録をした機関の所在地(同一の権利について二以上の国において登録をしている場合には、これらの権利の譲渡又は貸付けを行う者の住所地)
- ホ 公共施設等運営権 公共施設等の所在地
- ヘ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又はノウハウ等 著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地
- ト 営業権、漁業権、入漁権 これらの権利に係る事業を行う者の住所地
- チ 有価証券(券面のない有価証券等及びゴルフ場利用株式等を除く。) 有価証券が所在していた場所
- リ 登録国債 登録国債の登録機関の所在地
- ヌ 振替機関又はこれに類する外国の機関が取り扱う有価証券等(登録国債等及びゴルフ場利用券等を除く。)その有価証券等を取り扱う振替機関又はこれに類する外国の機関の所在地
- ル 有価証券に表示されるべき権利(有価証券が発行されていないものに限り、登録国債を除く。)、株主又は投資主となる権利その他法人の出資者となる権利及び合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資持分これらの権利又は持分に係る法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地
- ヲ 貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権 債権者の譲渡に係る事務所等の所在地
- ワ ゴルフ場利用株式等 ゴルフ場その他の施設の所在地
- カ イからワまで以外の資産でその資産の所在していた場所が明らかでないもの その資産の譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地
- ② 役務の提供(③を除く。) 役務の提供が行われた場所。ただし、次の役務については、イからヘによる。
- イ 国際運輸 出発地若しくは発送地又は到着地
- ロ 国際通信 発信地又は受信地
- ハ 国際郵便・信書便 差出地又は配達地
- ニ 保険 保険会社の事務所等の所在地
- ホ 専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査、企画、立案、助言、設計、監督又は検査に係る役務の提供で生産設備等の建設又は製造に関するもの 生産設備等の建設又は製造に必要な資材の大部分が調達される場所
- ヘ イからホまで以外のもので国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他役務の提供が行われた場所が明らかでないもの 役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地
- ③ 電気通信利用役務の提供 その電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地
- ④ 利子を対価とする金銭の貸付け 貸付けを行う者の貸付けに係る事務所等の所在地
事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡した場合には、その経理処理のいかんを問わず、その譲渡は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に該当しない(基通5-7-1)。
国内の事業者が、国内の他の事業者に対し、対価を得て国外に所在するものとされる資産を譲渡又は貸付けた場合には、その譲渡又は貸付けは国外において行われたこととなり、消費税の課税の対象とはならない(基通5-7-10)。
事業者が対価を得て行う国内及び国外にわたって行われる旅客若しくは貨物の輸送、通信又は郵便若しくは信書便については、国内を出発地若しくは発送地、発信地又は差出地とするもの及び国内を到着地、受信地又は配達地とするものの全てが国内において行われた課税資産の譲渡等に該当し、法第7条第1項第3号(国際輸送等に係る輸出免税等)等の規定の適用を受けることになる(基通5-7-13)。
「居所」とは、現在まで引き続いて1年以上居住する場所をいう(法4③三)。
4 特定仕入れの場所
特定仕入れが国内において行われたかどうかの判定は、その特定仕入れを行った事業者が、その特定仕入れとして他の者から受けた役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供)について、上記3②又は③に定める場所が国内にあるかどうかによる(法4④)。ただし、国外事業者が恒久的施設で行う特定仕入れ(他の者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものに限る。以下この4において同じ。)のうち、国内において行う資産の譲渡等に要するものは、国内で行われたものとし、事業者(国外事業者を除く。)が国外事業所等で行う特定仕入れのうち、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものは、国内以外の地域で行われたものとされる。