税務用語辞典


  • 令和3年度 税制改正対応版※令和3年4月1日現在の法令等によっています。

山林についての相続税の納税猶予及び免除

この解説は最終更新日から1年以上経過しており、現行法令に準拠していない可能性があります。

税務研究会お試し

 特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(立木又は土地をいう。以下同じ。)を有していた被相続人から相続又は遺贈により特例施業対象山林の取得をした林業経営相続人が、その相続に係る相続税の期限内申告書の提出により納付すべき相続税額のうち、特例山林に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その相続税の申告書の提出期限までにその納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、その林業経営相続人の死亡の日まで、その納税を猶予する(措法70の6の6①)。

 なお、林業経営相続人は、相続税の申告期限の翌日から猶予税額の全部の期限が確定する日までの間に経営報告基準日が存する場合には、届出期限(経営報告基準日の翌日から5月を経過する日をいう。)までに、継続届出書を税務署長に提出しなければならない(措法70の6の6⑪、措令40の7の6⑯、措規23の8の6○25○26)。

 また、当該相続に係る相続税の申告書の提出期限までに、共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない山林は、この特例の適用を受けることができない(措法70の6の6⑧)。

備考

「経営報告基準日」とは、①施業整備期間(原則として最初に認定を受けた森林経営計画の始期から10年間)にあっては、当初認定起算日から1年を経過するごとの日をいい、②施業整備期間の末日の翌日以後は、その翌日から3年を経過するごとの日をいう(措法70の6の6②七)。

特定森林経営計画の範囲

 市町村長等の認定を受けた森林法第11条第1項に規定する森林経営計画で、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(措法70の6の6②二)。

  • ① 対象とする山林が同一の者により一体として整備することを相当とするものであること
  • ② 森林経営計画に森林法第11条第3項に規定する事項が記載されていること
  • ③ ①及び②に掲げるもののほか、その森林経営計画の内容が同一の者による効率的な山林の経営を実現するために必要とされる一定の要件を満たしていること

林業経営相続人の範囲

 被相続人から相続等によりその被相続人が有していた全ての山林の取得をした個人で、次に掲げる要件の全てを満たす者をいう(措法70の6の6②四)。

  • ① 相続開始の直前において、推定相続人であること
  • ② 相続開始の時から申告期限まで引き続きその山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限る。)の全てを有し、かつ、その特定森林経営計画に従ってその経営を行っていること
  • ③ 特定森林経営計画に従ってその山林の経営を適正かつ確実に行うものと認められる一定の要件を満たしていること(措規23の8の6⑧)

特例施業対象山林の範囲

 被相続人が有していた山林のうちその相続開始の前に特定森林経営計画が定められている区域内に存するものであって、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(措法70の6の6②三)。

  • ① その被相続人又はその被相続人からその有する山林の全部の経営の委託を受けた者によりその相続開始の直前まで引き続きその特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営が行われてきた山林であること
  • ② その特定森林経営計画に記載されている山林のうち作業路網の整備を行う部分が、同一の者により一体として効率的な施業を行うことができるものとして措置令第40条の7の6第4項で定める要件を満たしていること

備考

森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存する山林を除く。

特例山林の範囲

 特例施業対象山林で相続税の期限内申告書にこの制度の適用を受ける旨の記載があるもので、林業経営相続人が自ら経営を行うものであって、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(措法70の6の6①)。

  • ① その特定森林経営計画において、作業路網の整備を行う山林として記載されているものであること
  • ② 都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在するものでないこと
  • ③ 立木にあっては、相続開始の日からその立木が市町村森林整備計画に定める標準伐期齢に達する日までの期間が林業経営相続人のその相続開始の時における平均余命期間(最高30年)を超える場合における立木であること

納税猶予分の相続税額の計算

 次の(1)に掲げる金額から(2)に掲げる金額を控除した残額が納税猶予分の相続税額となる(措法70の6の6②五)。

  • (1) 林業経営相続人以外の相続人の取得財産は不変とした上で、林業経営相続人が、通常の課税価格による特例山林のみを相続するものとして計算した場合の林業経営相続人の相続税額
  • (2) 林業経営相続人以外の相続人の取得財産は不変とした上で、林業経営相続人が、課税価格を20%に減額した特例山林のみを相続するものとして計算した場合の林業経営相続人の相続税額

納税猶予税額の免除

 この制度の適用を受ける林業経営相続人が死亡した場合には、猶予中相続税額に相当する相続税が免除される。この場合には、その林業経営相続人の相続人は、その死亡した日から同日以後6月を経過する日までに、届出書を税務署長に提出しなければならない(措法70の6の6⑰)。

納税猶予の打ち切り

  • (1) 納税猶予税額の全部確定
     林業経営相続人又は特例山林について次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、それぞれに掲げる日から2月を経過する日が納税猶予の期限となる(措法70の6の6③)。
    • ① 特例山林の経営が適正かつ確実に行われていない場合において、農林水産大臣等から税務署長にその旨の通知があったとき その通知があった日(措法70の6の6③一)
    • ② 林業経営相続人が特例山林の譲渡等があった場合又は特例山林が路網未整備等に該当することとなった場合において、その譲渡等又は路網未整備等があったその特例山林に係る土地の面積が、特例山林の面積の100分の20を超えるとき 農林水産大臣等から税務署長に100分の20を超えることとなった譲渡等又は路網未整備等に係る通知があった日(措法70の6の6③二)
    • ③ 特例山林に係る山林の経営を廃止した場合 その廃止した日(措法70の6の6③三)
    • ④ 林業経営相続人のその年分の山林所得に係る収入金額が零となった場合 その収入金額が零となった年の12月31日(措法70の6の6③四)
    • ⑤ 林業経営相続人がこの特例の適用を受けることをやめる旨を記載した届出書を提出した場合 届出書の提出があった日(措法70の6の6③五)
  • (2) 納税猶予税額の一部確定
     林業経営相続人が特例山林の一部の譲渡等をした場合又は特例山林が路網未整備等に該当することとなった場合には、納税猶予税額のうち、その譲渡等をした特例山林又はその路網未整備等に該当することとなった特例山林の金額に対応する部分の金額に相当する相続税については、農林水産大臣等から税務署長にその譲渡等又は路網未整備等があった旨の通知があった日から2月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の6の6④)。
  • (3) 林業経営相続人が、障害、疾病その他の事由によりその適用を受ける特例山林について、経営を行うことが困難な状態となった場合において、その特例山林の全部の経営を推定相続人に委託をしたときは、経営の委託をした日から2月以内に、経営の委託をした旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときに限り、納税猶予が継続される(措法70の6の6⑥)。

備考

左記のほか、次の場合にも納税猶予が打ち切られる。

  • ① 継続届出書が届出期限までに税務署長に提出されない場合には、2月後
  • ② 税務署長は、次のイ又はロに掲げる場合には、納税猶予の期限を繰り上げることができる(措法70の6の6⑭)。
    • イ 担保について国税通則法第51条第1項の命令に応じない場合
    • ロ 継続届出書に記載された事項と相違する事実が判明した場合

「譲渡等」とは、特例山林の譲渡、贈与若しくは転用をし、若しくは地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは賃借権の設定をした場合をいう(収用交換等による譲渡があった場合を除く。)。

「路網未整備等」とは、作業路網の一部の整備が適正に行われていない場合又は一体的かつ効率的な経営に適さなくなった山林となった場合をいう。

利子税の納付

 この特例の適用を受けた林業経営相続人は、納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、納付する税額を基礎とし、相続税の申告書の提出期限の翌日から納税の猶予期限までの期間に応じ、年3.6%の割合を乗じて計算した金額に相当する利子税を、納付しなければならない(措法70の6の6⑲)。

  • 税務通信

     

    経営財務