個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合において、その財産のうちに、その相続の開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。)の用又は居住の用に供されていた宅地等(特例対象宅地等)があるときは、その相続又は遺贈により財産を取得した者の特例対象宅地等又はその一部でこの特例の適用を受けるものとして選択をしたもの(選択特例対象宅地等)については、限度面積要件を満たす場合に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、通常の方法によって評価した金額に、次に掲げる小規模宅地等の区分に応じてそれぞれ次に掲げる割合を乗じて計算した金額とすることとされている(措法69の4①)。
- (1) 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 20%
- (2) 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 50%
左の事業に準ずるものとして政令で定めるものとは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいう(措令40の2①)。
この特例は、相続税の申告書の提出期限までに相続人間で分割されていない特例対象宅地には適用されない(措法69の4④本文)。
ただし、当初申告の時点においては未分割であったため、特例を適用しないで申告をしていた場合において、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内(3年以内にその特例対象宅地等が分割されなかったことにつきやむを得ない事情がある場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、分割できることとなった日の翌日から4か月以内)に分割されたときは、遺産分割により相続税額が当初に申告した相続税額より減少することとなったときには、本特例の適用があることとされており、この場合には更正の請求の特例がある(措法69の4④ただし書、⑤)。
限度面積要件
上記の「限度面積要件」は、次の区分に応じ、それぞれ次に定める要件とされている(措法69の4②)。
- ① 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等である場合……その選択特例対象宅地等の面積が400㎡以下であること
- ② 選択特例対象宅地等が特定居住用宅地等である場合……その選択特例対象宅地等の面積が330㎡以下であること
- ③ 選択特例対象宅地等が貸付事業用宅地等である場合……次のイ、ロ及びハの面積の合計が200㎡以下であること
- イ 選択特例対象宅地等である特定事業用等宅地等の面積の合計×(200/400)
- ロ 選択特例対象宅地等である特定居住用宅地等の面積の合計×(200/330)
- ハ 選択特例対象宅地等である貸付事業用宅地等の面積の合計
なお、上記(1)の80%減額の対象となる小規模宅地等の用語の定義は次のように規定されている(措法69の4③)。
- (1) 特定事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び事業に準ずるものを除く。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす親族(その相続人を含む。)が相続又は遺贈により取得したもの(相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等(一定の規模以上の事業の用に供されていたものを除く。)を除き、その親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限る。)
- ① 相続開始時から相続税の申告期限までに被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その事業を営んでいること
- ② 被相続人の生計を一にしていた親族が相続開始時から相続税の申告期限(その親族が申告期限前に死亡した場合にはその死亡の日。以下同じ。)まで引き続きその宅地等を有し、かつ、申告期限まで引き続き自己の事業の用に供していること
- (2) 特定居住用宅地等 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、配偶者又は次に掲げる要件のいずれかを満たす親族が相続又は遺贈により取得したもの(配偶者又はその親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限る。)
- ① 被相続人と一棟の建物に同居していた者が相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その建物に居住していること
- ② その親族が次の要件の全てを満たす者であること(被相続人の配偶者又は①の要件を満たす相続人がいない場合に限る。)
- イ 相続開始前3年以内に国内にある自己、自己の配偶者、自己の三親等内の親族又は自己と特別の関係がある法人が所有する家屋(相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。
- ロ その被相続人の相続開始時にその親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
- ハ 相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
- ③ 被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること
- (3) 特定同族会社事業用宅地等 被相続人等(被相続人の親族その他その被相続人と特別の関係がある者を含む。)が主宰する法人(被相続人等が株式等の半数超を所有する法人)の事業(不動産貸付業、駐車場業等及び事業に準ずるものを除く。)の用に供されていた宅地等で、その宅地等を取得した親族(申告期限においてその法人の役員(清算人を除く。)である者に限る。)が、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されているもの(その親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限る。)
- (4) 貸付事業用宅地等 被相続人等の貸付事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業をいう。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす親族が相続又は遺贈により取得したもの(その親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限る。)
- ① 相続開始時から相続税の申告期限までに被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その貸付事業の用に供していること
- ② 被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供していること
被相続人等が居住の用に供する宅地等が二以上ある場合には、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られる(措令40の2⑪)。
左の株式等には、議決権に制限のある株式等は含まれない(措令40の2⑰)。
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、貸付事業用宅地等から除かれる。