相続財産のうち、次のものには相続税を課税しないこととしている(法12①)。
- (1) 皇位とともに皇嗣が受けた物
- (2) 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
- (3) 公益事業用財産
公益を目的とする事業を行う者が、相続又は遺贈により取得した財産でその事業の用に供することが確実なものについては、これを非課税としている。
公益事業を行う者は、①宗教、慈善又は学術の研究若しくはその普及の事業を行う者、②学校教育又は学校教育に類する教育の事業を行う者、③育英事業を行う者、④①から③までの者以外で、専ら公益の事業を行うものをいう。
また、相続人又は受遺者が相続又は遺贈により取得した財産を、相続税の申告期限までに、国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人等若しくは認定特定非営利活動法人に贈与した場合の贈与財産や一定の特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭についても、非課税としている(措法70①③⑩)。 - (4) 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
精神若しくは身体に障害のある者(以下「心身障害者」という。)又はその者を扶養する者が、条例の規定により地方公共団体が心身障害者に関して実施する共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利 - (5) 相続人の受け取った保険金の合計額のうち次に掲げる金額に相当する部分
- ① 全ての相続人の受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した保険金の非課税限度額以下である場合は、各相続人の受け取った保険金の全額
〈算式〉
保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数 - ② 全ての相続人の受け取った保険金の合計額が保険金の非課税限度額を超える場合は、次の算式により算出した金額
〈算式〉
各相続人の非課税金額=保険金の非課税限度額×(その相続人の受け取った保険金の合計額/全ての相続人の受け取った保険金の合計額)
- (6) 相続人の受け取った死亡退職金の合計額のうち次に掲げる金額に相当する部分
- ① 全ての相続人の受け取った死亡退職金の合計額が次の算式によって計算した退職手当金等の非課税限度額以下である場合は、各相続人の受け取った死亡退職金の全額
〈算式〉
退職手当金等の非課税限度額=500万円×法定相続人の数 - ② 全ての相続人の受け取った死亡退職金の合計額が退職手当金等の非課税限度額を超える場合は、次の算式により算出した金額
〈算式〉
各相続人の非課税金額=退職手当金等の非課税限度額×(その相続人の受け取った死亡退職金の合計額/すべての相続人の受け取った死亡退職金の合計額)
「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石、おたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件を含む(基通12-1)。
公益事業を行う者が個人であるときは、特別関係者に特別の利益を与えないこと、また、人格のない社団又は財団であるときには、その社団又は財団の役員その他の機関の構成、その選任方法などについて、その事業の運営が特定の者の意思によってなされていないことなどの条件がある(令2)。
公益事業を行う者がその財産を取得した日から2年以内に、現実にその公益事業の用に供していないときには課税価格に算入される(法12②)。
非課税の適用がある共済制度は、地方公共団体の条例において心身障害者を扶養する者を加入者とし、その加入者が地方公共団体に掛金を納付し、地方公共団体が心身障害者の扶養のための給付金を定期に支給することを定めている制度で、所令第20条第2項各号に掲げる要件を備えているものに限られる(令2の2)。
法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとした場合に法定相続人となるべき者の数によるが、被相続人の養子がいる場合には、後述するように一定の養子の数は含まないこととされている(819頁参照)。
死亡退職金の非課税額の計算方法は、保険金の場合と同様である。
法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとした場合に法定相続人となるべき者の数によるが、被相続人の養子がいる場合には、後述するように一定の養子の数は含まないこととされている(819頁参照)。