10 信託財産(法9の2~9の6、令1の2~1の12)
- (1) 信託課税の原則
- ① 信託の効力が生じた場合
適正な対価を負担せずに信託の受益者等となる者がある場合には、その信託の効力が生じた時において、その信託の受益者等となる者は、その信託に関する権利をその信託の委託者から遺贈により取得したものとみなされる。 - ② 受益者等の存する信託について、新たに信託の受益者等が存するに至った場合
適正な対価を負担せずに新たに信託の受益者等となる者は、その受益者等が存するに至った時において、その信託に関する権利をその信託の受益者等であった者から遺贈により取得したものとみなされる。 - ③ 受益者等の存する信託について、一部の受益者等が存しなくなった場合
適正な対価を負担せずに既に信託の受益者等である者がその信託に関する権利について新たに利益を受けることとなった場合は、その信託の一部の受益者等が存しなくなった時において、その利益を受ける受益者等である者は、その利益をその信託の一部の受益者等であった者から遺贈により取得したものとみなされる。 - ④ 受益者等の存する信託が終了した場合
適正な対価を負担せずにその信託の残余財産の給付を受けるべき者となった場合は、その信託の残余財産の給付を受けるべき者となった時において、その信託の残余財産の給付を受けるべき者は、その信託の残余財産をその信託の受益者等から遺贈により取得したものとみなされる。
- (2) 信託課税の特例
- ① 受益者連続型信託
受益者連続型信託に関する権利を受益者が適正な対価を負担せずに取得した場合において、以下のとおり課税される。 - イ 最初の受益者は、委託者から遺贈により取得したものとみなされる。
- ロ 次の受益者は、最初の受益者から遺贈により取得したものとみなされる。
- ハ 次の受益者以後の受益者についても、ロと同様の課税。
- ② 受益者等が存しない信託等についての相続税・贈与税の課税
- イ 受益者等の存しない信託の効力が生ずる場合において、その信託の受益者等となる者がその信託の委託者の親族等であるときは、その信託の効力が生ずる時において、その信託の受託者は、その委託者からその信託に関する権利を遺贈により取得したものとみなされる。
- ロ 受益者等の存する信託について、その信託の受益者等が存しないこととなった場合において、その受益者等の次に受益者等となる者がその信託の効力が生じた時の委託者又はその次に受益者等となる者の前の受益者等の親族等であるときは、受益者等が存しないこととなった場合に該当することとなった時において、その信託の受託者は、その次に受益者等となる者の前の受益者等からその信託に関する権利を遺贈により取得したものとみなされる。
信託に関する権利又は利益を贈与又は遺贈により取得したものとみなされた場合において、当該信託に関する権利又は利益を取得した者は、その信託に係る信託財産に属する資産及び負債を取得又は承継したものとみなされ、相続税法の規定が適用される(法9の2⑥)。
なお、法人税法に規定する集団投資信託、法人課税信託及び退職年金等信託については、受益者等が信託財産を所有しているとは言えないことから、上記の対象外とされる(法9の6⑥)。