贈与により取得した次の財産に対して課税される(法21の2)。
1 贈与により取得した財産
みなし贈与財産
2 贈与により取得したとみなされる財産(法4~9の5)
- (1) 保険料又は掛金を負担しないで生命保険契約又は損害保険契約(偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限る。)の保険金を取得した場合(生命共済等の共済金も含まれる。)
- (2) 掛金又は保険料を負担しないで定期金給付契約に関する権利を取得した場合
- (3) 著しく低い価額で財産の譲渡があった場合
著しく低い価額の対価によって財産の譲渡が行われた場合は、時価と対価との差額について贈与があったものとみなされる。
ただし、この低額譲渡が、債務を弁済することが困難な人に対してその人の扶養義務者から行われたものである場合には、贈与を受けたものとはみなされない。 - (4) 債務の免除、引受け等があった場合
対価を支払わないで又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けたときは、その債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額を贈与により取得したものとみなされる。しかし、債務者が資力を喪失して債務を弁済することができないために免除がなされたとき又はその人の扶養義務者によって債務の引受け若しくは弁済がなされたときは贈与を受けたものとみなされない。 - (5) その他実質的に財産を他人のものにする場合
例えば次のものがある(法9、基通9-2、9-3、9-4)。 - ① 新株の引受権を子供名義で引き受けさせる場合
- ② 親と子で同族会社を設立し、親は財産を非常に低く評価して現物出資し、子供は現金出資する等の方法で会社にそれだけ含みをつくる場合など、親の財産を子供のものとする場合
なお、原則として、次の場合にも贈与として取り扱われる(基通9-9)。 - (イ) 不動産、株式等の名義変更があった場合において対価の授受が行われていないとき。
- (ロ) 他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得したとき。
- (6) 信託契約によって受益権を取得した場合
- ① 信託課税の原則
前掲802頁参照 - ② 信託課税の特例
- イ 受益者連続型信託
前掲803頁参照 - ロ 受益者等が存しない信託等についての相続税・贈与税の課税
前掲803頁参照 - ハ 受益者等が存しない信託について、受益者等が存することとなった時における贈与税の課税
受益者等が存しない信託について、その信託の契約締結時等において存しない者がその信託の受益者等となる場合において、その信託の受益者等となる者がその信託の契約締結時等における委託者の親族等であるときは、その存しない者がその信託の受益者等となる時において、その信託の受益者等なる者は、その信託に関する権利を個人から贈与により取得したものとみなされる。
相続開始の年に被相続人からの贈与により取得した財産の価額は、相続税が課税されるから、贈与税の対象とならない(法21の2④)。しかし、その被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合の贈与税の課税価格は、暦年課税の適用を受けるもの又は相続時精算課税の適用を受けるもののいずれであるかに応じて、それぞれ次に掲げるとおりとなる(基通21の2-3)。
- (1) 暦年課税
贈与により取得した財産について贈与税の課税価格に算入される。 - (2) 相続時精算課税
贈与により取得した財産の価額は、贈与税の課税価格に算入されるが、贈与税の申告書の提出を要しない。この場合、当該財産の価額について贈与税の更正又は決定は行わない。
(注) 相続開始の年において当該相続に係る被相続人からの贈与により財産を取得した者で当該贈与を受けた年より前の年に当該被相続人からの贈与により取得した財産について相続時精算課税選択届出書を提出していないものが、当該財産について相続時精算課税の適用を受けるためには、相続時精算課税選択届出書を提出しなければならないのであるから留意する。
左の(4)及び(5)において著しく低い価額かどうかは、個々の取引について取引の事情、取引当事者間の関係等を総合勘案し、実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかにより判定するが、土地又は家屋の取引においては、その取引における対価の額がその取引に係る土地又は家屋の取得価額を下回る場合には、その土地又は家屋の価額が下落したことなど合理的な理由があると認められるときを除き、著しく低い価額に当たるものとされる(平成元年3月29日直評5、直資2-204)。
離婚等に伴う財産の分与による財産の取得は贈与とされないが、その分与額が過当と認められる場合又は贈与税、相続税のほ脱を図ると認められる場合は贈与により取得した財産となる(基通9-8)。
左の(5)(イ)(ロ)の場合において、その取得が贈与の意思に基づくものでなく、他のやむを得ない一定の理由に基づいて行われた場合又は過誤等に基づき、又は軽率にされた場合には、原則として贈与税の申告又は更正決定前に名義を改めたときに限り、贈与がなかったものとして取り扱われる(昭39直審22通達)。
法人からの受贈財産は、一時所得として所得税が課される(所基通34-1(5))。
(3)については、その財産を取得してから2年以内に、現実にその公益事業の用に供しないときには非課税とはならない(法21の3②)。
(3)及び(5)については相続税の非課税財産の欄(804頁)参照。